旭岳・富良野・二風谷2020 その4 〜湯駒荘〜

旭岳に来たのはロープウェイで山頂に登りたいというのもあったけど実はそれは二の次で、真の目的は湯駒荘に泊まることだった。
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湯駒荘は日本秘湯の会に属する旅館なので、ぜひ一度泊まってみたいと思っていた。
というのも秘湯というのは油断しているとどんどん閉まってしまうのだ。
ニセコの新見本館も鯉川旅館も閉まってしまったし、来れるうちに来ておかないと後悔してしまう。
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しかし湯駒荘は人気が高く、偶然空いていた一室にギリギリで飛び込めたぐらいなので、まだまだ安泰だろう。
早速秘湯に繰り出すと、これがなかなか凄かった。
やはり特筆すべきは”元湯”だろう。
肌にピリピリと感じられるくらいお湯の元気が良くて、嬉しくなってしまった。

お湯の温度は全体的にぬるめで、いつまでも入っていられる感じ。
サウナはないけれどひとつ贅沢を言わせてもらえば、名物の湯駒水を使った水風呂があれば満点だったなあ。

男湯が”ゆこまんの湯”、女湯が”シコロの湯”なのが21時で入れ替わるので、夕飯後にシコロの湯の方にも入ってみた。
シコロの湯の方は四角い浴槽がふたつしかなく、ゆこまんの湯にしかないお湯があるので、両方とも入ったほうがいいだろう。
ただ、シコロの湯は露天風呂のさらに奥に野湯のごとき雰囲気の浴槽があり、大自然に囲まれたような心持ちになれるので良かった。
登山客はみんな夜が早いので、ほとんど貸切状態で楽しめたのも良かった。

別館にある”神々の湯”は、設備は新しいけれど前2者に入ったあとだと普通かな。
朝に入ると露天風呂の方から差し込んだ朝日が、間口が狭くて細長い浴室を鮮やかに照らし出して、それはそれで気持ちよかった。
というか、こっちを作るときにサウナも作っとけよな、とは思った(あと湯駒水を使った水風呂も←しつこい)。


さて、ひとっ風呂浴びていよいよお目当ての夕食である。
相当レベルが高いと聞いていたので期待していたのだけど、それを上回る逸品が並んでいて唸った。
メロン半玉を器に使ったビシソワーズ。
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これが感動するくらいに美味しい。
メロンの上品な甘さとスープの塩味が口の中でまじりあって、なんともいえないハーモニーを醸し出す。
生ハムメロンとか生ハムマンゴーとか、桃のハンバーガーとかフルーツの風味を使った料理はどれも好きなんだけど、これはちょっと異次元レベルに美味しかった。

料理のレベルが全般的に高く、いや、レストランのフルコースに比べると「多人数に効率よく提供する」ためのデザインではあるのだけど、その中でも究極に最善を尽くしていると感じた。
マグロは刺身の質自体もいいのだけど、そこに使う燻製醤油の荒ぶる風味が鮮烈だった(おみやげに買った)。
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じゃがいものコロッケなんか袋に入ってレンジでチンした既製品なんだけど、インカのめざめの甘みと道産バターの風味が強烈で「くそっ! 出来合いなのにこんなに美味いなんて」と悔し涙を流しながら味わった。
〆に出てくるとうもろこしの炊き込みご飯は、おかずなしに1合食べられそうなくらい破壊力があった。
ちょっとヤバかったのは、口直しに出てきた、湯駒水を使った水ゼリー。
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コレ自体食べても全くの無なんだけど、ここに黒蜜を垂らすと「黒蜜を究極に味わうための舞台」と化す。
これはもう味のビッグバンだね。

この上のクラスになると牡蠣の塩釜焼きがついてきたり、豚肉のしゃぶしゃぶが牛肉になったりするみたいだけど、標準プランで十分やね。

惜しむらくはお酒のメニューが寂しかったところ。
季節の新酒が売り切れていて、仕方なく男山のラベルだけ湯駒荘にした純米酒を選んだけれど、料理のパワーに完全に力負けしていた。



夕飯に引き続いて朝ごはんもかなり良かった。
ラビスタ函館みたいなゴージャス系もいいけれど、温泉旅館は出汁の効いた和風100%の朝ごはんが嬉しい。
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湯豆腐は「これでもか!」と言わんばかりに中まで味が染み染みで、しみじみと美味しい。
お腹の中から温めて一日の活力にしようという気配りなのかもしれない。
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秘湯名湯と言われるところにいくつか泊まってみて、高いお金を出して料理が残念だと本当にがっかりしてしまう。
銀婚湯もひとむかし前に比べるとかなり味が落ちてしまったし、丸駒温泉旅館も作り置きの冷たい料理ばかりで心も覚める心持ちだった。
社長の息子が料理長(兼代表取締役)という味いちもんめみたいなシチュエーションには驚いたけれど(本当にあるんだ)、湯駒荘はしばらく安泰だろう。
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そんな感じで、かなり期待して泊まった湯駒荘だったけれど、全体的に非常に良かった。
ここを旅のハイライトとしていたので、期待通りの結果になってひとあんしん。
5年か10年したらまた泊まってみたいと思わされる旅館だった。