二股らぢうむ温泉に行ってきた

先週に丸駒温泉で「雪が残る時期の露天風呂は最高だな」と思ったので、いてもたってもいられずに二週続けて温泉に行ってみることにした。
見市温泉もいいかなと思ったんだけど、まだ行ったことがない二股らぢうむ温泉を目的地とした。

問題は、温泉が函館市内から相当遠く、長万部を過ぎたあたりにあるので片道で2時間半ほどかかること。

そこで体感時間を半分にするため、1時間かけて大沼で昼食をとり、その後もう1.5時間かけて温泉にたどり着くというプランを立てた。

大沼で食べるといえば、一番人気はなんといってもケルンである。


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普段はハンバーグと、ご飯の代わりにハーフドリアを頼むことが多いのだけど、昼ごはんにそれは重すぎると思い、ハンバーグにビーフシチューをかけたシチューハンバーグを選んでみた。

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大きなビーフがごろりとふたつも乗って、ちょっと笑っちゃうぐらい美味しい。わはは。
ケルンのがっちりとした肉質のハンバーグはビーフシチューの濃厚さにも全く負けることはなく、むしろビーフシチューを喰ってやるぐらいの勢いがある。

ビーフシチューにはずっと前から興味があったんだけど、せっかくケルンに来てハンバーグを食べない選択肢はありえないし、困ったなと思っていたらこんなウルトラCがあったとはなあ。

いつもハーフドリアを頼むこと前提にハンバーグを選んでいたのだけど、そこから脱却することで新しい視野が開けたのだ。

しかし、ほぼ最強とも思えたシチューバーグにもひとつ弱点があって、ビーフシチューの量に限りがあるので、遅い時間だと食べられない公算が高いということだ。お昼の時間帯にもかかわらず注文を聞いて一旦厨房に可否を確認しに行っていたので、期待していっても食べられない可能性は高い。そーゆーときはがっかりせず、速やかにハーフドリアを軸に組み立て直すと良いと思う。

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ハーフドリアはご飯がカレーベースなので、クリームの濃厚さをカレーのスパイスがスパッと断ち切って、相互作用で相当食べられる。相方となるハンバーグには和風おろしやトマトソースなどのさっぱりとしたものを選ぶのがベターだ。

閑話休題。食べ終わった段階でミッションを終了してもいいぐらいの満足度だったけど、頑張って二股ラジウム温泉までの旅程を再開する。


長万部まではいつもどおりのコースを延々と進み、そこから黒松内方面に向かって直進し、高速道路の下をくぐってしばらく進んだところから、左折して道道双葉大峰線に入る。

時期的に道路に雪が残っていないのは幸いだったけれど、片側交互通行で見通しのないカーブが続くので、運転にはかなり注意が必要。向こうから佐川急便のトラックがやってきたのには驚いた。

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温泉の入口には、アイドリング禁止の張り紙がしてあるので注意したいところ。

入浴料は1、100円と結構高いけれど、いわゆる温泉銭湯ではないし、こんな秘湯にあるのだからむしろ適正料金だと考えたい。

ちょっと嫌なのが、温泉内に貴重品を預かるロッカーが一切合切存在しないこと。車の中に閉まってくるように言われるのだけど、それにしたって車の鍵は脱衣所に置きっぱなしになるわけだし、最悪は貴重品だけでなく車ごと盗まれるリスクはある。

不特定多数の人が利用するわけだし、ロッカーでなくても鍵のかかる貴重品入れぐらいは置いておいて欲しい。被害が出てないから対策されてないような気がするけども、その一人目にはなりたくないものだ。

温泉に入る

風呂は基本的に混浴となっており、大浴場、プール(水着可)、露天風呂が混浴。その他に女性用の内風呂と露天風呂、男性用の内風呂がある。

石鹸やシャンプーは内風呂以外使用不可。また、真水のお湯が出ない仕様なので、泊まりだと大変かもしれない。女性用では、大きなペットボトルを持ち込んで真水を入れ、それを湯船に漬けることでお湯を確保していたとのこと。生活の知恵だ。

大浴場には普通の浅い浴槽と、120cmの深さの立って入れる浴槽がある。深浴槽は女性用の内風呂にもあるそうだ。ちなみにプールの深さは150cmもある。沈んでしまわないように注意が必要だ。

お湯は一番熱いところでも、普通の温泉の中温ぐらい。もともとの源泉が43度しかないので、特に冬の時期だとぬるめになっている。上流の浴槽ほど温度が高く、最下流にある崖に面した露天風呂は、人肌程度の温度になっていた。

泉質は素晴らしいもので、赤黒く濁ったお湯には油膜と湯の花が浮いていて、見るからに成分が濃厚なことが分かる。ラーメンで言うなら天下一品系だろうか。放射線で肌がビリビリしないかと心配だったが特段そんなこともなく、こってりとして肌によく馴染む。


そして特筆すべきは露天風呂からの眺望だろう。
ぬる燗の温泉に浸かっているうちに身体はお湯と一体化して浴槽のサイズにまで膨張し、渺漠たる心持ちで見るともなくまなこに入ってくる風景は、谷を挟んで向かいに広がる雪に埋もれた山肌だ。午後の西日に照らされて、そこには宿の影が落ちている。日が傾くにつれてその影が伸びて山肌を覆い尽くしていく。
普段は秒針の動きで生きているのが、太陽が傾いていくことが実感できるくらいに時間が間延びする。

そこに従業員のお爺さんが入ってきて、

「カンが出るから危ないよ」

と言ってふたつある露天風呂の浴槽の、熱い方から人を追い出し始めた。

言われるがままにぬるい方へと移ると、崖の下からザザーッと水の流れる激しい音がしはじめた。見ると温泉の成分がこびりついて赤く染まった岩肌に、温泉のお湯が真っ赤な濁流となって流れ落ちていく。15時30分から深い浴槽の掃除が始まるので、お湯の栓を抜いたのであろう。

大浴場からはカーン、カーンと金属を打つ音が響いてきて、10分くらい続いただろうか、やがてゴボリと音がして、鬼の金棒のようなものが浮いてきた。なるほどこれがさっき言ってた「カン」の正体で、お湯が通り抜ける管が詰まってしまうのを防ぐため、毎日これを通して掃除しなければならないのだろう。

そうこうしているうちに小一時間が経過していた。お湯の温度がちょうどいいので、いくらでも入っていられる。なるほどこれは湯治向けだが、のどがすっかり乾いていて、すぐに水を500ccほど飲み干した。

達人になると風呂にペットボトルやらiPodを持ち込んだりしている。飲酒・喫煙は禁止だけれど飲み物を飲む分には構わないのだろう。

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脱衣所に戻ると湯治に来ているお爺さんが二人で話をしていた。

「おたくはいつから来てるの」
「もう6日ぐらいかね」
「じゃあわたしと同じくらいだ。何度目?」
「わたしは初めてなんですよ」
「そうかい。そろそろ痒くなってきたかい」
「痒いというのもあるけど、痛いぐらいだね
 特に足の裏なんて針に刺されたみたいにビリビリしびれるようになってきた」
「それは効いてきている証拠だよ」

なんて話をしていたが、痒いというのはいわゆるホメオパシー好転反応みたいなものだろうか。明らかに入り過ぎに思えるのだがどうか。


二股らぢうむ温泉はその名の通り、温泉の成分にラジウムを含んでおり、放射能がある。といっても別にお湯が緑色に発光しているわけではなく、微量の、自然放射線よりもちょっと多く浴びるくらいのもの。

放射線ホルミシスという考え方があって、微量の放射線はむしろ体に良いのだと言われている。放射線を浴びることによって細胞が活性化するのだとか。

細胞の中のDNAは日々壊れたり修復されたりしていて、その量は1日に10億個と言われている。あまり増やしすぎるとガンになりかねないんだけど、微量な放射線を浴びて壊れる量をちょっとだけ増やすことで、新陳代謝が高まって健康になる、という考え方らしい。

基本的に自分の考え方としては「まあ、そういう考え方もあるべな」ぐらいのもので、薬とも毒とも思わない。いや、むしろ薬でも毒でもないからラジウム温泉というのは良いものなんだろうとさえ思っている。

単に気持ちがいいからするだけのことに、「健康に良いから」という理屈がつくのは得をした気がする。好きで玄米を食べていたら「健康に良いんだよ」と言われたら得をした気分になるだろう。だけど逆に、例えば篠田麻里子と結婚するために好きでもない玄米を無理に食べるようでは、幸せな感じはあまりしないなあ。

www.futamata-onsen.com

でもまあ薬効とは関係なく良い温泉だったので、ここは近いうちに再訪したい。