万能ではなかった55℃低温調理
65℃での低温殺菌後に55℃で12時間という超長時間低温調理によるローストポークの成功に気を良くして、本家本元のローストビーフにも挑戦してみた。
まあ、ローストビーフは失敗する余地が無いので、新たな肉にも挑戦。牛もも肉がグラム198円なのに対して牛バラ肉は115円。同じオージービーフなのにこの違いはなんだ!
牛バラ肉は不当に安い
実はこのバラ肉というやつは低温調理における鬼門なのだった。以前、牛バラ肉でもローストビーフが作れるだろうと挑戦してみたのだが、筋が残ってアブラまみれで、とても食べられないようなシロモノになってしまった。
そもそも牛バラ肉の塊を使ったレシピというのが少なくて、代表的な牛バラ肉料理といえば牛丼ぐらい。たぶん肉を薄切りにして筋の硬さを和らげるとともに、長時間煮込んでゼラチン化していくのだろう。肉は幾分パサつくが、玉ねぎの酵素で柔らかくしつつ、濃い味付けのたっぷりとした煮汁でごまかしていこうという、そんな作戦なのかもしれない。
とはいえ、そこで諦めていては真空調理器の名折れ。肉なんて所詮はタンパク質の塊であって、科学的アプローチに不可能は無いはずなのだ。
Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)
- 作者: Jeff Potter,水原文
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というわけで、ローストポークで大成功したところである55℃24時間低温調理に処してみたわけであるのだが。
ローストビーフ
塩コショウをつけて、風味付けのためにバターに浸して低温調理でだいたい18時間後。
うん。完璧な色。
スキレットで焼き目をつけて切り分けていく。これはもう100%ローストビーフ。しっかりと火がとおっていても、しっとりとしていてパサツキがないのでいくらでも薄く切れる。牛の味がして美味い。
牛バラはビーフカレーに
こちらは牛バラ肉。カレー粉をまぶしてバターにつけて、同じように18時間。
だが写真を見ると分かる通り、筋がたっぷりと残っている。
こうなることは半ば予定しており、カレー味をつけていたのはカレーの具にするためだったのである。だが、通常どおりカレーを作るように煮込んだところで筋は筋、ゴリゴリと硬いところが残って、残念な結果になってしまった。
調べてみると、コラーゲンが変性する温度というのは56℃以上とのこと。なんたるミス。55℃では何十時間と低温調理したところで、トロトロには煮こまれないのだった。
次はもっと温度を上げて、アクチンが変性するギリギリのところを攻めてみよう。