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将棋界がこの先生きのこるには

将棋

将棋連盟のウェブサイトがリニューアルした結果が散々の出来で大騒ぎになっている。その内容としてリンク切れや画像の貼り間違いなど枚挙に暇がないのだが、特に最悪なのが英語版HPだ。

https://pbs.twimg.com/media/CsNHvsNUIAAgD0w.jpg

将棋連盟の英語版HPがツッコミどころしかない - Togetterまとめ

加藤一二三九段をKato,one hundred twenty-oneとか、ふざけているとしか思えない。

なんでこんなひどいことになったかというと、原因はGoogle翻訳に丸投げしたことにある。無料で使える代わりにクオリティは最低で、英語から日本語にするときはとりあえず単語が日本語化されているからなんとか読めるけれど、日本語から英語にする場合は、ほんの短い簡単な文章でさえまず使いものにならない。

それなのになぜ将棋連盟がそんなものを使っているかというと、職員によれば、

「ないよりあった方がいいかな、と」
ワンハンドレッド・トゥエンティ・スリーさんて誰のこと? 将棋連盟Webサイトの英訳がなんか変 (BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース

ということで、意識の低さにはため息しか出ない。この騒動に対して、当の棋士の反応がこれだ。

はあ、騒ぎ立てるのは『民度が低い』と。参ったね。

無理を言っているわけじゃない

そして彼らは二言目にはカネがない、人材がいないからできないとおっしゃる。だが同業他社である日本棋院の英語サイトを見てみよう。

f:id:Red-Comet:20160914222335p:plain

http://www.nihonkiin.or.jp.e.qs.hp.transer.com/player/htm/ki000385.html

上部に「機械翻訳だから100%正確じゃないことに注意してね」と書いてある割に、まったくツッコミを入れるところがない。その理由は機械翻訳を、しっかりとした会社にお金を払ってやらせているからだ。URLに含まれているtranser.comで調べてみると、以下のページに辿り着いた。

多言語のホームページは、日本語のホームページが更新するたびに翻訳するコストやリアルタイム性など多くの課題があります。
WEB-Transer@ホームページなら用途に合った多言語ホームページが低コストで実現できます。
www.crosslanguage.co.jp

  1. 日本語のホームページを取得して自動翻訳をします。
  2. ホームページ管理者は日本語ページだけをメンテナンスするだけでOK。
  3. 36分野1,000万語に加えて、クライアントのホームぺージに適したユーザー辞書を作成することができ翻訳精度が飛躍的に向上します。

おいおい完璧かよ。しかし件の棋士らは「職員の業務とするか、外注(バイト含む)するか。」みたいなところで話をしている。節穴だ。隣に国際化のお手本がいるのに、これから国際化していかなければならない将棋連盟は何を見ているんだろう。囲碁の真似だけは死んでも嫌なのか。捨てちまえそんなプライド。

なぜ自分はこんなに怒っているのか

発端がボンクラーズの伊藤英紀氏のツイート。

史上5人目の中学生棋士誕生の喜びに水を差す性格の悪さは、今に始まったことじゃないのでいいです。それに対して自分はこんな風に反論した。

というもの。将棋界が滅び行く運命にあるのは自明だとしても、現在存在するあらゆる職業が絶滅の危機に瀕しているというのが今の時代であって、のほほんと言われたことだけをやっていたらAIの奴隷になってしまう。

そこでOECDが、これから迎える複雑で未知の世界を生き抜くための能力としてキー・コンピテンシーをあげている。中身を説明すると長くなるのでざっと抜粋すると、

  1. 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力
  2. 多様な集団における人間関係形成能力
  3. 自立的に行動する能力

の大きく3つの能力を育てていくことが必要だとしている。一言で言えば「技術の進歩に取り残されないような知識を身につけ、海外の人とか違う文化・宗教の人が身の回りにどんどんやっていても仲良くして、さらにその中でも自分の文化背景を忘れずに自立する」ってこと。

将棋界でそれを実践している人は、みなさんおなじみの羽生さんです。

適応力 (扶桑社文庫)

適応力 (扶桑社文庫)

一人で海外にとびだしてチェス大会に参加して、自ら英語を話して交流を図る、それはまさにキー・コンピテンシーを身につけた人の行動であって、そしてもちろん羽生さんは将棋界のためを思ってそんなことをしているだろう。

あの人はすでに「心の欲する所に従いて矩を踰えず」の域に達していて、好きでやることがすべて将棋界のためになってしまうので混同しがちだけれど、単に好きでやっているわけがない。ファーイーストにあるジャパンとかいう島国のショーギマスターがチェスに挑戦しに来た、そのことがいずれ現地の人々に与える影響を考えているはずだ。

「将棋指しなんだから、いい将棋を指せばいいんでしょ」と言って将棋バカになってしまったら伊藤氏の言うとおり、AIに潰されて終わるだろう。危機感を持って多様性に立ち向かっていけるのか、それが今後の将棋界の課題であると同時に、『天才』藤井聡太四段ならばそこに気づいて斜陽のこの将棋界を牽引していけるだろう、自分はそう思った*1

自分に対する伊藤氏の答えはだからピントを外していて、10億人が使えるC言語をやっていたから食っていけるかというのははなはだしく疑問だし、1000人未満しかいない将棋指しはそれだけで稀有な才能とも言えるし、例えば今後ロボットがほとんどすべての仕事を肩代わりして人間の労働がほんの僅かになった時に、娯楽として一躍脚光を浴びるかもしれない。可能性は無限大で、だけど「可能性を掴むための努力」を惜しんでいたらダメだと、そういうことを言いたかった。

その辺りの気持ちに心残りがあったのでブログにまとめようかと思ったんだけど後日の伊藤氏のブログを読んで、

まあやはり元のツイートが「不都合な真実」だったんでしょうね。
ネット炎上の記録: A級リーグ指し手1号

自分のリプライはクソリプ認定されてないようなのでいいとして、炎上したことに対してこんな風に一方的に勝利宣言してまとめてしまう人に何を言ったって非生産的だな、と思って書くのをやめたのだった。

そしてその矢先に起こったのが今日の騒動なのでやるせない。

確かに伊藤さんのいうことにも一理あるよね(ため息

将棋界がこの先生きのこるには

まず将棋界の現状として、

  1. 将棋人口が減っている→日本の人口も減っていく→今後も厳しい
  2. 最大のスポンサーである新聞社が厳しい→日本の景気が上向くとは思えない→今後も厳しい

というのは誰しもが持っている認識だろう。じゃあどうするかといえば、答えは『多様性』しかない。日本の外に飛び出してファンをプレイヤーを集めていかなければ確実に死んでしまう。

shinyakojima-blog.blogspot.jp

こちらは日本のチェスプレイヤー、小島慎也氏のブログ。今年行われたチェス・オリンピアードの模様を紹介している。2年に一度行われ、今回は180の国と地域が参加したとのこと。対する将棋連盟は二年に一回、竜王戦の第一局を海外で対局するぐらい*2。これが世界レベルの趣味と日本で閉じている趣味の差なので、あと10年、20年かけてチェスに追いついていかなければいけないんだよなあ、と、考えていたところに今回の「ないよりあった方がいいかな、と」ですよ。もう脱力しちゃってね。

グローバル化? はいはい」みたいな、「やりゃあいいんでしょ、やりゃあ」みたいな、「タダなんでこんなものです」みたいな。

翻訳とかめんどくさいしやりたくないし、できるだけサボりたいという意志がありありと透けて見える。「囲碁はそんなことやってんの。まあ、うちはうちだから」みたいな。

それが地味にショックで、伊藤氏が言うように将棋界腐ってるよなと実は心の底で思っていつつもそこまでひどくはないだろうと高をくくっていて、いざその腐臭を直に嗅がされて現状を目の当たりにしてしまったのがキツかった。

かろうじて意識が高そうな窪田七段でさえも「批判する奴らはPCも使えないガキだから民度が低い」などと言うし、他の棋士はほぼだんまりだし、ああもう救いがないな、と、思ってしまってね……。

「有志で翻訳しようぜ!」とか「Google翻訳を改善しよう!」とか甘やかしたら意味が無いんだよなあ。その場限りでなんとかなる話じゃない。棋士たちの意識を変えていかないとならない。だから今回炎上してヤフーニュースのトップに乗ったのはいいことだったんだろうな。さすがに何かするだろう。火を消さなきゃならないのは面倒くさい、余計なことしやがってと思っているかもしれないけどね。

それにしても、50年後、100年後も将棋が残っていくために何をしたらいいかって、真剣に考えている棋士がどれだけいるのだろうなあ。もっと積極的に世の中に発信していかなきゃダメだよね。



ただしハッシー、お前はダメだw

youtu.be

これはアカンやろwww 大山康晴でもビール瓶を手刀で割るレベルで激怒するわwww

*1:そういえば元祖斜陽氏は何をしているのか、とも思った

*2:ESCみたいなアマの大会は別