カジノ法案は真剣師の夢を見るか
カジノ法案が衆院を通過して、いよいよ国内にカジノが作られることになりそうだ。
個人的にはカジノが作られたからと言ってギャンブル中毒者が増えるとかそういうことは無いだろうと思う。なぜならカジノの定番であるポーカーやブラックジャック、バカラやなんかはかなり頭を使わないと勝てないから。真面目に取り組む職業ギャンブラーは増えるかもしれないけれど、一般のお客さんはそんなに熱中しないんじゃないかな。パチンコやスロットを持ってくるなら別だけど、だったらわざわざカジノなんて作る必要がないわけで。
ギャンブル中毒が心配なのだったらマイナンバーカードを会員証にして「1か月に10万円負けたらその月は入店禁止」などの措置が取ってしまえばいい。というか今すぐにでもパチンコ屋や公営ギャンブルに導入させた方がいいんじゃないか。前年度所得の1/2までしかギャンブルに使えないとか、税金を滞納したらギャンブル不可とか、非常に良いアイデアだと思うのだがどうか。共産党の方々にはぜひご検討いただきたい。
ゲームセンターをカジノ化してほしい
日本のカジノ構想(イメージ) pic.twitter.com/KrYqQIS0vx
— ㍿ 紳士 (@hide_luxe) 2016年12月2日
Twitterでこんな画像が流れていたけど、普通に外人に受けそうで良い案だと思った。そもそも日本に外国のカジノと同じようなものを作ったとして人気が集まるかと考えたら非常に微妙だ。外貨の流入を狙うのならば日本のカジノは日本の伝統のものを揃えたほうがいい。
以前オランダに行った時に空港にあるカジノ、というかゲームセンターに毛が生えたようなところで遊んでみたんだけど、50セント玉を入れて勝てばそのままジャラジャラと50セントが排出された時はかなり興奮した。日本のゲームセンターのメダルゲームも、筐体にうずたかく積まれたメダルが全部100円玉だったらと考えると楽しすぎる。ゲームセンターのカジノ化は子どもの頃の夢だ。UFOキャッチャーで札束を狙ったりしたい。
だけどメダルゲームよりも燃えるのは、やはり対戦ゲームなんじゃないかな。もんじゃ5、じゃなかったストリートファイター5などの格闘ゲームを使って、プレイヤー同士がお金を奪い合うんじゃなくて、観客がどちらに勝つかを賭けてその一部が賞金として勝者に払われるようなシステム。カジノが日本のeスポーツ元年になりそうな気がする。
カジノ法案は真剣師の夢を見るか
だけどそもそも日本の伝統として、プレイヤーにお金を賭ける伝統があるじゃないか、というのが今日の本題。
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そう、真剣師だ。
順位戦の対局表を見るたびに将棋totoがあればいいなと思っていたけど、日本将棋連盟的には将棋は文化だからと、将棋=賭博のイメージを払拭しようとしているので公式に勝敗に賭けたりするのは無理な話だろう。将棋を”打つ”ではなく”指す”にこだわるのも、博打は”打つ”だからだと聞いたことがある。
であればカジノ側は、プロ棋士を目指して夢破れた者たちや在野の強豪アマチュアををスカウトし、将棋連盟に対抗する別の組織を設立するまでだ!
スポットライトで眩く照らし出されるコロシアム! 満員の観客の熱狂を煽り立てるようにDJが吠え立てる!
「赤コーナー、東海の貴公子、薔薇賀咲彦!」
真っ赤なマントをなびかせてオープンカーで登場する美青年が客席の女性たちに向けてウィンクを送ると、嬌声とともに何百本もの薔薇が投げ込まれる!
その刹那、会場の照明が一斉に暗転し、一本のピンスポットが照らし出した先には青白い顔で薄気味悪く笑う男の姿があった!
「青コーナー、冥界からの使者、闇野邪太郎!」
観客からは怒号のようなブーイングの嵐! しかし邪太郎は薄笑いを崩さず、懐から取り出した扇子を広げて平気な顔で扇ぐのみ。黒く染められた扇子には銀色に輝く『邪道』の文字が!
再び照明が戻ったコロシアムの天井に高く掲げられたオーロラビジョンには両者の対戦成績、生涯勝率、そしてオッズが表示された! 薔薇賀が1.6倍、闇野が1.81倍、わずかに人気でリードした薔薇賀は観客席に両手を挙げて期待に応える!
そしていよいよベッティングタイムだ! リアルタイムに更新される掛け金が凄まじい勢いで積み上がっていく! 十万、百万、千万、そして億! レーザー光が空中に描く”ミリオンダラー”の文字! この対局の勝者には掛け金の10%が賞金として与えられる! 一晩で数千万円を稼ぎあげる彼らこそ、21世紀の賞金稼ぎ、『真剣師』なのだ!!!
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口さがない連盟プロからは闇のプロとも揶揄される真剣師であったが、せいぜいサラリーマン程度の収入で、人目に触れぬ薄暗い部屋の中で細々と指し続ける彼ら連盟プロと、年間数億円を稼ぎ、今や国民的スターとなった真剣師たちと比べたら、どちらが光でどちらが闇であろうか。真剣師たちの勝負を取り上げるために新聞社は次々に将棋連盟のタイトル戦のスポンサーを降りていき、連盟プロたちは爪に火を点すような生活を強いられていた。
薔薇賀と闇野の対局が始まった頃、コロシアムの喧騒から遠く離れた地上60階のオフィスから、モニターを通じて静かに勝負の様子を見つめる仮面の男がいた。その男こそ真剣師を将棋界の頂点に押し上げた仕掛け人だ。
今でこそ裏方に徹しているがカジノ設立当初は鬼神の如き強さで将棋ファンの関心を一気にひきつけ、いまの真剣師人気の原動力となった。その実力は連盟プロのトップであるA級棋士とも互角であるとの評判で、正体は元プロ棋士であり、謂れもない汚名によって連盟を追い出されて真剣師になったという噂がまことしやかにささやかれている。もしそれが真実だとしたならば、今や組織への復讐を完全に成し遂げた彼はどのような思いで真剣師たちの戦いを見つめているのだろう。仮面の奥に隠された表情は、うかがい知ることができない。
素性も本名も経歴も、全てがベールで包まれている謎の男。彼は一体何者なのか。彼の真剣師時代のニックネームから、現役を退いた今でも人は彼を「ミスター・ムサシ」と呼んでいる。
(続かない)