11年ぶりの新刊! 小市民シリーズ最新作「巴里マカロンの謎」を読んだ

札幌出張の時に紀伊国屋書店に寄ってしまったせいで、ついつい目についた「巴里マカロンの謎」をパラパラとめくってしまったのが運の尽き。

冒頭に、小鳩くんを誘ってマカロンを食べに行く小佐内さんが電車の中で、楽しみにしすぎて無意識に足をぶらぶらさせている描写が可愛すぎてつい買ってしまったのだった。

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

これだからリアル本屋は強い。

米澤穂信といえば氷菓でお馴染みだけど自分はこちらの小市民シリーズの方が好みだったので嬉しいんだけど、なにぶん前の刊から11年もたってしまっているので話が全くわからない。
それでもキャラクターだけは覚えているのだから人間の脳というのは不思議だ。

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記事を書いているということは確実に昔読んで(しかも絶賛して)いるにも関わらず、どんな事件があったかは全く覚えていない。これは読み直さないとだなあ。

巴里マカロンの謎

ミステリとしては少し小物だけど、この小物感もまた、作品全体を通じての重要な仕掛けに繋がっていくから面白い。起承転結の起。

紐育チーズケーキの謎

ゆきちゃん先輩(小佐内さん)の頭の回転の異常な鋭さに慄いたり、決め台詞が最高だったり、凍りつくようなラストだったりと、小佐内さんの魅力が詰まった一作。本当に彼女は何者なのだ……。

伯林あげぱんの謎

一つだけマスタードが入っているはずの揚げパンを全員で食べたのに、誰も自分が食べたなんて言い出さない、そんなどうでもいいような事件が廻りに巡って人間関係を浮き彫りにしていくところに米澤穂信の黒い魅力があるのだと思う。
読者的には中盤くらいで誰が真犯人なのか掴めてしまうのだけど、まだ犯人が誰なのかわからずに四苦八苦している登場人物たちを見るのがまた最高に面白かった。

花府シュークリームの謎

短編集の最後を締め括るのにふさわしい大団円。
悪意と、悪意を向けられた時に人はどうするか/どうすべきかという問い。
そして最後を締めくくるフィナーレは、ほんと、この下りを読むためだけにでも春季限定から秋季限定まで既刊を全部読み直して欲しいとさえ思える最高のシーンだった。


ずっとシリーズの最終巻になるであろう「冬期限定」が出るのを待ちわびていたけれど、こーゆー短編集が出てしまうのなら、タイムスケジュールの開いた部分を全部埋めるまで待つ所存ではある。
それにしてもどうしてここまで間を置いてからの続編なんだろうね。まさかアニメ化とか実写化が裏で進んでいたり?
しかし、うーん、氷菓と比べて色々と地味だからなあ。リアル寄りだから仕方ないけれど、動画で見て面白くなるのか、というのは読みながら思っていた。
まあ、アニメ化されたら見ますけどね。既刊も全巻買い直しますけどね。