香港旅行2018その12 ~シグナル10~
北京ダックはとても美味しかったが、日本に帰るあてがないという事実は変わらない。言ってみれば現実逃避である。
それでも部屋に戻ってメールチェックすると、ANAから、25時に出発するだった便が8時に遅れる旨の連絡が入っていた。2泊3日の3日めの深夜に帰る予定だったので、当初の予定では普通にホテルをチェックアウトして、九龍駅で飛行機のアーリーチェックインをして荷物を預けてしまい、ゆっくりと夜まで観光するつもりだったのだけど、翌朝8時に出発となるとそうも言っていられない。
そもそも台風が迫っていて観光どころではないし、延泊して次の日の早朝にホテルを出ることにした。
8時出発というからには(緊急時だし)5時か6時に空港に着きたいので、出発は4時位になるだろう。MTRは営業時間外なので無理だけど、幸いバスは深夜も運行しているのでなんとかなりそうだった。
九龍酒店のすぐ横にあるバス停からN-21線に乗ると、深夜でも空港に行くことができる。これでとりあえず帰りの足は大丈夫だ。
というわけで、ホテルのカウンターに行って延泊したい旨を申し出ると、「ここでは受け付けられないからオンラインで予約しろ」とのこと。この割り切り方がちょっとおもしろい。「同じ部屋を使いたいのだが大丈夫か?」と聞くとノープロブレムだという。ちなみにカオルーン・ホテルでは全く日本語が通じない。広東語か広東語混じりの英語しか使ってこないので要注意だ。まあ、観光地なので高校卒業レベルの英語力があれば大丈夫。語学力より度胸が大事。
言われるがままにExpediaで予約を入れて、翌朝チェックアウト&チェックインをしてもらい、普通に同じ部屋に滞在し続けることができた。
シグナル10の悲劇
翌朝はホテルの朝食。
きちんと中華していて美味い。高級ホテルらしく、シェフがその場でオムレツを焼いてくれるのが嬉しい。ただし愛想はめちゃくちゃ悪い。香港人は欧米人には優しいのに、まともに広東語も英語も喋られない日本人には当たりが強い傾向にある。
さて、朝食を食べ終えると何もやることがない。香港にいる時間が一日増えたと言っても台風がこれからやってくるわけだから観光をするわけにもいかない。
外はもう、傘持っていたって出たくないぐらいの大雨。
幸い、尖沙咀の駅は香港には珍しく広い地下通路になっているので、人がほぼいないのをいいことに探検して回ったりした。
最初はコンビニやなんかが開店していて「なんだ余裕じゃん」と思っていた。前の日に北京ダックを食べたビルも、朝が早くてテナントこそ開いていないもののビルの中には自由に入れる状態だった。
みんな北海道好きやなあ。
面白いのは、ビル自体は開いているのにテナントが軒並み閉店していること。ビルの受付の人だけが暇そうにぼんやりしていて、完全に開店休業状態だった。それをいいことに廃墟探検気分でうろうろとあるきまわって楽しんでいた。
その間にも風は強さを増していき、ビルに入った時はこの状態だったものが、
出る頃にはこんな感じに。
何が違うかというと、右下の台風シグナルの数字が違う。
シグナル10は台風警報の中でもトップなやつで、こうなると街中の店という店が、駅ナカのコンビニさえも閉店してしまうのだった。完全にアウトなやつや。
法律で「シグナル10のときは営業禁止!」と縛ったほうが、抜け駆けして従業員を危険な目に遭わせる悪徳な店が出てこないという意味でも良いとは思うんだけど、旅行者にとっては困る。地元民は家に帰ればいいけどね。どうするよ。
ビルの中にはホテルをチェックアウトしたもののどこにも行く先のない旅行者たちが何百人もたむろしていて、さながら被災地のようだった(被災地だ)。うまいことホテルを延泊できて良かった。プライバシーが守られたところで体を伸ばして寝られることの幸せさと言ったら!
部屋に戻ったらカオルーン・ホテルとペニンシュラホテルの間の道に生えていた大木が折れて道を塞いでいた。災害か!
シグナル10が出るとコンビニすらも閉まってしまっていよいよなにもすることがないので、ホテルで豪華な昼食と洒落込むことにした。
昼食は海南鶏飯。いわゆるシンガポールチキンライスとしてよく知られている(らしい。隣の客の受け売り)料理で、チキンスープで炊いた米の上に蒸し鶏が乗っている。
これがめちゃうまでテンションがだいぶ上った。いや、ホテル飯なので単価は高いんだけど、高い分しっかり丁寧に作られている感があって洗練されている。つけダレが三種類あって飽きが来ないし、冬瓜のスープも上品に美味い。昨日も思ったけど高いけど美味い。香港は金がある人向けの観光地なのかもしれない。
当初はペニンシュラでアフタヌーンティーを食べる時に、二人分頼んでもアレなので自分はこれを頼もうと思っていた。だけど昼飯を食べた直後だったのでチョコレートマカロンにしていたという経緯があり、ここで拾うことができてラッキーだった。
この日は中秋節の一週間前だったので、ロビーで月餅が売られていたので買ってみた。そんなに好きじゃないけど、非常食として。
ところがこれがめちゃくちゃ美味しい。カスタード入りでさっくりとしてしつこくなく、風味が奥深くて爽やかですごく良かった。ペニンシュラホテルの(文字通り)影に隠れているけれど、カオルーン・ホテルはなかなか良いぞ。
九龍半島から空港までどう行くか
その後も街を探検したりしていたんだけど、いよいよ風が強くなってきた。街路樹は折れまくりで、本当に明日の朝8時に飛行機が飛ぶのか不安になってきた。
テレビを付けていると字幕には次から次へ、運行停止情報が流れていく。MTRの空港線は地上部分に障害があって運行再開が未定だとかが分かるので、中国語を勉強していて良かったと思う。まあ、理解できたとして状況は変わらないのだけど。
鉄道は駄目でもバスは大丈夫だろう、と思っていたら、バス会社のHPに「乗務員の安全のために運行を停止する」というお知らせが掲載されていた。
え、これ、飛行場までたどり着けないってこと?
やばいやばいやばい。どうする? どうする?
鉄道もバスも駄目。となるとあとは、タクシーだ!
そう決めてホテルのカウンターに行ってタクシーを呼んでくれるように頼むと「いや、おれらタクシー会社の番号知らないし。自分でかけるか外で拾いな(親指で外を指差すジェスチャー)」との回答。アホかー! カオルーン・ホテル、最悪じゃ!!!
仕方がないのでホームページから香港のタクシー会社の電話番号を調べて片っ端から電話をかけてみる。
はろー、あいむいんざ かおるーん・ほてる。あい うぉんと ごーとぅーえあぽーと。
片言の英語で伝えると、一応タクシーを呼び出してくれるものの、運転手が捕まらないから駄目だと言われてしまう始末。
こうなったらネットに頼るしかない! ということでUBERを使ってみると、「ただいまこのエリアではサービスを提供しておりませんと」とのこと。おい! ずいぶんと優良企業だな!
最後の最後に見つけたのが、BLACK LANEという怪しげな会社。
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ダメ元で試してみるとその名の通りブラック企業なのか、台風の中でも駆けつけてくれるとのこと。助かる~。予約したらぴったりと午前4時につけてくれて、まさに地獄に仏だった。
しかし乗り込んでみると道路の状況は結構悪く、倒れた街路樹が何本も道を塞いでいて、どうにか車一台通れるようにずらしてあるのを縫うように通り抜けなければならない状況だった。まだ夜明け前の暗い道で、突然現れる障害物をスイスイと避けてどうにか午前5時には空港に到着。タクシーの運転手にはチップを多めに(100香港ドル)渡しましたとさ。