大河ドラマの題材にして欲しい偉人ナンバーワンは武田信広(自分の中で)

湯ノ岱温泉の素晴らしいお湯を堪能してウニの炊き込みご飯も食べて、天気もいいしあとはまったり史跡巡りでもして過ごそうと思いました。

ここ上ノ国町松前江差という知名度的にはダントツに高い2つの町に挟まれていまいち知名度が低いんですよね。一方は松前城があって桜の名所だし、もう一方は江差追分と、箱館戦争の遺産である開陽丸が残っており、歴史資産が非常に豊富です。

方や上ノ国町はといえば、観光協会のHPを見ても微妙にパッとしない。

観光名所の紹介 歴史的建築物
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勝山館跡

一応ここを代表するのは『勝山館跡』という史跡らしいのですが、あまり聞いたことが無いし、跡というからには今は空き地だよね~、などと思い(中尊寺世界遺産群も荒野ばかりで寂しかった)、ここはパスして江差町のかもめ島でも一周して帰ろうかな、とも思ったのですが、せっかくなのでちょいと足を伸ばしてみることにしました。

そしたらこれが大正解。近年まれに見る知的興奮に恵まれることになりました。

夷王山

最初に勝山館跡に向かったんですが、そのすぐ裏手に小高い丘があったので腹ごなしついでにちょろっと登ってみました。が、足元にはでかい毛虫がうじゃうじゃと。

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昔読んだ学研の「有毒動物のひみつ」によると、このような細かい毛を持つ毛虫には毒を持つものが多く、刺さるとホロホロと崩れて抜くことも困難なので注意するようにと書かれていたような記憶があったのですが、帰宅して調べるとなるほどタケカレハという毒蛾の幼虫とのことでした。

タケカレハ

リンク先注意! 結構キモいです(T_T)

有毒動物のひみつ (学研まんが ひみつシリーズ)

有毒動物のひみつ (学研まんが ひみつシリーズ)

人生で大事なことは学研のひみつシリーズから学んだ。

こいつらを踏んづけてしまわないよう注意しながら登っていくと、頂上には神社があってここから上ノ国町の町並みが一望できます。

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これはなるほど神社になるだろうなあ、と納得。すぐ足元に広がる勝山館からも、同じように見下ろせるはずで、ここに城を作った成立過程がよく分かりました。

勝山館跡ガイダンス施設

ついでに勝山館跡を見ようとも思ったのですが、この日は天気が良すぎて気温も高かったので断念し、すぐ近くにあるガイダンス施設を見学することでお茶を濁すことにしました。

「ガイダンス施設」とはなんとも漠然とした名称ですが、入場料200円を払って一歩中に足を踏み入れると木の良い香りがして、こじんまりとした外見の割にしっかりとした作りになっています。

内部は遺跡の発掘状況を再現した原寸大のジオラマや、200分の1の縮尺で作られた勝山館の復元模型などもあり、入場料の200円の元は全然取れます。

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(結構良く出来てる……)

さらには墓から掘り起こされた少女の遺骨(たぶん実物)をまるごと展示していたりして、かなり見どころ十分。

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個人的には「武田信広」という人物に興味があったので、その来歴をたくさん知ることができて良かったです。

中世蝦夷の歴史について

元々蝦夷地は犯罪者を流刑にするオーストラリアみたいな場所だったんですが、平和になって交易が始まると、広く東北地方を治めていた安東氏が統治するようになりました。

で、安東家にも本家や分家がいろいろあって、京都に近い秋田県側の安東氏が治めていたのが上方だから「上ノ国」、京都から遠い方の青森県側の安東氏が治めていたのを「下ノ国」と呼んでいたそうです。下ノ国は今の函館から北斗市にかけての地域だったのですが、今ではその名前は残っていません。それはなぜか。

一つにはコシャマインの戦いで、アイヌの軍勢によってこのあたりにあった倭人の館が、12のうち10まで攻め落とされ、下ノ国の根城であった茂別館も落とされてしまったというのがまず原因の一つ。

コシャマインの戦いは、ここ上ノ国にいた武田信広によって平定されるのですが、アイヌの乱はその後も続いて下ノ国の方はめちゃくちゃに荒らされてしまったといいます。そのうちに安東氏が弱体化して下ノ国を治める力がなくなり、結果的に上ノ国を治めていた蠣崎家が、そのまま蝦夷を支配するようになったそうです。

ここでいろいろ不思議があるのが、倭人の館を9割まで攻め滅ぼすようなアイヌ人の大軍勢をどうやって打ち破ったかということ。ここで一言でアイヌと言ってしまうのは簡単ですが、このあたりの道南地方は前述したとおり、都で重罪を起こした犯罪者が追放された人が住む土地でした。彼らとアイヌが融合して、毒矢を使い深山を自由に闊歩する武士的な存在になっていたとしたら並の武士では太刀打ち出来ないはず。

個人的には武田信広が元は若狭武田氏の出身というところが気になっていて、若狭というからには陰陽師安倍氏の所領だし、やはり陰陽術を使ったんだろうか、などと考えていました。

映画「陰陽師」

映画「陰陽師」

しかしガイダンス施設で資料をよく読むと色々面白いことが書いてあって、勝山館の裏手の墓地には倭人アイヌも分け隔てなく埋葬してあったり、勝山館の中でもアイヌと同居していたとみられる遺物がたくさん発掘されているとのことでした。つまり、もしかしたら武田信広アイヌの一部と手を組んで戦ったのかもしれません。

その後に道南地方で起こったアイヌの乱も、実は上ノ国支配を強めるために信広が扇動したのでは、などという噂が書かれていたりしてなかなか面白い。息子を朝鮮王朝に使節として派遣するとか、蝦夷の支配を確立するために色々と手を打っていたりして、戦国時代を感じさせます。

無理だと思うけど、いつか大河ドラマにならないかな。武田信広から松前慶広までなんてかなりドラマチックで面白いんだけどね。

いまやっている女城主直虎は、あまり見ていないけど東海地方の片隅でチマチマやってる感があって、二言目にはやれ今川がと言ってばかりで爽快感に欠ける。その点こちらは野望あり謀略ありのスペクタクルで、真田昌幸のような「一国一城の主にオレはなる!」というダイナミックさがあるところがいい。

アイヌが出てくると色々問題が有りげだけど、ここは一つわたくしの案を採用して「武田信広は良いアイヌと手を組んで、流れ者の重罪人の子孫が率いる悪のアイヌを打ち破った」というシナリオでひとつ頑張っていただきたい。あとはやっぱり、陰陽術を使うといいなw