押井守絶賛! 実写版攻殻機動隊を見てきました
今回は夜は短し歩けよ乙女を見るためにわざわざ札幌まで足を伸ばしてきたので、せっかくだから到着した土曜日にまず乙女を見て、翌日はハリウッドで実写化された「攻殻機動隊」を見るという強行軍を執り行うことにしました。文化力が低い地方に住むのは悲しいですね(^_^;)
原作の士郎正宗版は愛読書だし、
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押井守版「GHOST IN THE SHELL」も大好きなんですが、
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それ以降の作品は言ってみれば原作がゴーストダビングを繰り返したように劣化が進んでしまって、TV版の「スタンド・アローン・コンプレックス」もシーズン1はまだいいとしてシーズン2ではgdgdになってしまったし、ARISEなんかはいわずもがなですよね。
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S.A.Cで良かったのはタチコマ。
というわけで今回の実写版も期待値はゼロで、乙女のついでにまあ見てやるか、ぐらいの気持ちで見に行ったわけです。
期待値ゼロで実写版攻殻機動隊を観に行った結果www
期待値通りでした。本当にありがとうございます。
と一言で終わってしまうのもアレなのでダメだと思った点を色々と。
まず結論として「新しい知見がない」これに尽きます。なんにもない。新しいところが一つもない。むしろ古くなっていると言ってもいい。20年前に(20年前に!)公開された「GHOST IN THE SHELL」と比べて未来の技術や表現が遅れているというところに唖然とします。いま「ブレードランナー」の焼き直しをするの!?と言いたい。
例えば街の至る所に現れる巨大なホログラム広告にしても、なんの必然性も哲学も感じられないんですよ。「未来っていえばこーゆーのですよね」ぐらいの安易さ。すべてが過去の作品の良いところ、印象深かったシーンを引用して組み直しただけで、表現したい主張みたいなものが一切感じられないんですよね。過去の映像作品を強化学習したAIに作らせたのかってぐらい新鮮味がない。
原作の良いところ、ゴリゴリとしたところをふるいにかけて取り除いて、近未来アクションとしてしか攻殻機動隊を捉えていないというのが丸わかりのひどい映画でした。
ヒューマンドラマに成り下がった実写版
ネタバレもクソもないので最後まで言ってしまうとオチも最悪でした。原作では宿敵である人形使い、その正体はAIの中に目覚めたゴーストなんですが、素子はそれと融合する道を選びます。人形使いは素子という因子を手に入れてそのミームを生み出し、素子はネットワークと融合して生まれ変わる。そこには「我々はどこに行くのか」という哲学があるんですよね。人間が機械と融合し、ネットワークで結びつき、そんな時代に我々人類は人類のままでいられるのかという問いと示唆がある。
ところが実写版では「そーゆー小難しいことはオラわがんね」とばかりに全カット。少佐の正体は桃井かおりの娘で、家出して無法地帯で暮らしていたところを警察に捕まって、ハイテク企業が彼女の脳だけを取り出して全身義体のテストモデルにされたあげく(素子の前に98人が失敗して廃棄されている)、家族はテロ組織に殺されたという偽の記憶を埋め込まれたということになっているんですが、
何だその矛盾だらけの設定は
と唖然とせざるを得ない。
唖然としているとラストシーンでクゼ・ヒデオが素子に「一緒に来い」と言うわけですが、それもただ一緒にいたいからというのが理由で、素子が断った理由も「産みの母親(桃井かおり)にもう一度会いに行くため」なんですよ。ひえー。終わってる。
断られたクゼ・ヒデオは「じゃあオレがそっちに行くわ」と言って白目を剥くんですけど、融合したからといって何かが変わるわけじゃないですからね。言っただけ。ほんと、融合の時にキスシーンをやらなかっただけでも神に感謝ですわ。
とにかく全編に渡って底が浅く、たぶん監督も脚本家も原作を理解できていないんじゃないかな。もしかしたら見もしないでイメージボード的なところからそれっぽい部分をすくい上げて再構成しただけとか、その程度で作っているんじゃないかと思いました。
何も知らない人が見るにはいいんじゃないか
でもまあ、映像はよくできているし、ビートたけしがチョーカッコイイし、何を見るでもなく映画館に来て、たまたま席が空いていたから攻殻機動隊の「こ」の字も知らないけどなんかアクション映画なんでしょ? ぐらいの感じで見る人には向いているかもしれません。
そういう観点から評価するならば乙女よりも攻殻の方が断然ハードルは低いですね。バリアフリーかってぐらい低い。100億人が見られるように作っている。で、ご存知の通り誰でも見られるように作ると誰も楽しめない作品になってしまうんですよね。
でも多分、そもそも実写版攻殻機動隊は誰かが楽しめるようにと思って作られた作品ではないんですよねきっと。日本のアニメを実写化しようという企画があって、仕事してそれを受けて終わらせた。それだけの話なんですよ。乙女の湯浅監督のような情熱も何もない。
押井守が大絶賛
そりゃ押井守も絶賛しますよね。
映画の表現力は絶対にアニメにはかなわない
という持論がハリウッドによって完全に証明されたわけですから。超豪華キャストを起用したって所詮は学芸会みたいなもの。ジャニーズが番組の中でやるパロディのドラマみたいなものになってしまっていた。
スカーレット・ヨハンソンも頑張っていたんですが、草薙素子と比べると寸胴でどっしりとしていて肉肉しくて、それはもちろん桃井かおりと並ぶとスタイルはいいんですが、どう見ても人間で。それはちょっと悲しい。
メインキャストに黒人を入れるルールによってねじ込まれた女がどう見ても空気だったり、全年齢向けにするために人が死ぬシーンをはっきりと写せなかったり、表現上の制約だけは強く感じました(^_^;)
原作ファンにはオススメはしないけれど
筆者が『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観たのは、記者会見やワールドプレミアが開催された3月16日の夜20時。22時くらい前に観終わって、23時くらいに帰宅してすぐに押井監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を観ました。なんというか、衝動が抑えられなかったんです。
これは間違いないです。自分は早くオリジナルの攻殻機動隊が見たい気持ちでいっぱいになりました。「そろそろ見直す時期かな」と思っている人が、気分を高めてGHOST IN THE SHELLを見直す分にはオススメだと思います(^_^;)