スカイ・クロラ

非常にちぐはぐな印象。原作は未読なのですが、森博嗣がこんなぎくしゃくとした物語を書くのだろうかと、映画の中盤までは困惑しっぱなしでした。シーンは細切れで、登場人物たちはひたすらタバコを飲むばかり。展開にスピード感が無く、なんだこりゃ、という印象でした。
終盤、物語が収束して伏線がバッサバサと処理されていくあたりから面白くなるのですが、それも本当に一瞬だけ。見終わった後に後味の悪さが残る、非常にグロテスクな映画でした。
 
見終わってからしばらく考えて結論が出たのですが、このつまらなさは、映画が原作のダイジェスト版だったからではないかと思いました。
良いシーンはすごく良いのです。たとえば空戦シーンは、空気の質感まで伝わってくるようで、現実世界を、現実より現実っぽく表現する技術に素直に感動しました。AR(Augmented Reality)とは違った意味でこれは拡張現実であるな、と。そういう意味でWikipediaにあった、

原作者の森には3年以上前からオファーがあり映像化は困難だと考えていたが、飛行機が綺麗な空を飛び回る映像だけでも観たいという思いから映画化が決定した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/スカイクロラ

という森博嗣の思いは叶えられたと思います。
ですが、肝心のストーリーは全然繋がっていません。『イノセンス』や『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』の場合は良い意味で換骨奪胎、アイデアの背骨だけを使ったほぼオリジナルのストーリーだったので良かったのですが、今回のように原作の内容を残したまま映画化するのは難しいのでしょう。監督が原作を読んで「これは面白いぞ」と思った部分だけを映像化して繋いだだけだと思うと、このしっくりこない感覚に説明がつきます。
 
そういう意味でこの作品は既読者向けかな、と。原作を読んで面白いと思った人が「このシーンがこんな風に再現できているんだ!」と感動するための映画のようです。

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

原作を読まないとこの映画が良かったのかどうなのか分からない。急いで読もう。
 

補足・その他の感想

  • 今公式サイトを見て超がっかり。このネタバレはひどい。これを見てから映画観ようって思う人がいるの?
  • ゲームか。結局やり直せるのか。本人以外にしか、やり直す意味がないというのは悲しいけれど。
  • 空戦シーンはもっと多くても良いのでは? 予算的な都合ではないかと勘繰ってしまう。函南のエースパイロットとしての評価が、最初に2機落とすシーンでしか説明されないのは弱い。
  • 希望の無いエンディングは悪くない、けど、最初から最後まで鬱展開なのには疲れた。軽いシーンもどこか悲壮感が漂って、気を抜く暇が無い。
  • 函南と草薙以外のメンバーは子供に見えない。
  • 声優に俳優を使うのはヤメレ。発声方法が違うせいで、話し始めと話し終わりの声が消えてしまう(『草薙水素です』→『ぅさなぎすいとえs』)。
  • 無駄に犬出しすぎ。自分が押尾であるというアイデンティティに甘えていないか。
  • 押井だけに、ジンロウってまさか人狼のことか!?と思ってしまった。ごめん。
  • キルドレの謎が明らかになるのが遅すぎるため、グロテスクな印象がぬぐいされなかった。インパクトを狙うにしても逆効果だと思う。
  • ポニョが詰め込み過ぎなら、スカイ・クロラはスカスカ過ぎ。もっと内容を!
  • ゲームは面白いだろうなぁ。多分買う。