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SFは死んだのかと言いつつ、やっぱりSFが好きなのです。
- 作者: 田中芳樹,星野之宣
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 文庫
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銀河帝国と自由惑星同盟の戦いが、徐々に良い帝政と悪い民主主義の戦いへと変化していく過程がニクい。この巻で一番良い場面は、イゼルローン要塞駐屯中のヤン・ウェンリーが首都のクーデターを知ったシーンです。
「私に言わせればね・・・・・・」
シェーンコップの目に、奇妙な光がたたえられていた。
「救国軍事会議の道化たちに、いまの権力者たちを一掃させるんです。完全に、徹底的にね。どうせ、その後、奴らはぼろを出して事態を収拾できなくなる。そこへあなたがのりこんで、掃除人どもをおいはらい、民主主義の回復者として権力をにぎるんです。これこそがベターですよ」
二の句がつげず、イゼルローン要塞の若い司令官は部下を見つめた。シェーンコップはいまでは笑っていなかった。
「どうです、形式などどうでもいい。独裁者として民主主義の実践面を守るというのは」
「独裁者ヤン・ウェンリーか。どう考えても柄じゃないね」
自由惑星同盟において最後の切り札と化したヤン・ウェンリーに対し、部下がクーデターを勧めるこの場面に、作者の『良い独裁主義は民主主義に勝る』という意思がこめられているように感じました。
結末は分かっているのにも関わらず、「おいおい、こんなに進んじゃって大丈夫かよ」と心配するくらいの急展開です。次巻以降も楽しみ。
106/200