第138回直木賞まとめ

今回の直木賞候補の中の、個人的な順位はこんな感じです。
 

順位 作品名
1位 私の男
2位 警官の血
3位 悪果
4位 約束の地で
5位 ベーコン
6位 敵影

 
全体を通して暗く重厚なテーマのものが多かった中で、やはり『私の男』が作品の凄みという点で一歩ぬきんでていると感じました。形にならない予感のようなものが、読み進めるたびに心の中で重く膨らんでいく感じがたまらなく良かったです。
 
2位は最後残念だけど『警官の血』。公安や警務部といった、警察の裏側の部分を扱っているのが良く、特に二代目が学生運動をスパイするために北大に乗り込むあたりは、自分も在学中にそれ系の集会にいったこともあって、かなりワクワクして読みました。
これだけの長さがありつつ飽きさせずに読ませる力量はすばらしいと思います。
 
3位は『悪果』。『警官の血』の三代目と驚くぐらいかぶっていて驚きました。エンターテイメント性としてはこちらが上だと思うのですが、結末のあっけなさにおいてもこちらの方が上で、優劣はつけづらいけど総合評価として3位となりました。
どちらにしろ2位3位の二人の方は今回が初読でしたが、どちらもこの作者の本を掘り下げて読んでみたいと思わされました。
 
4位は『約束の地で』。こちらもなぜか『私の男』と激かぶりです。そのおかげで割を食ったのもありますが、登場人物たちがみな頭が悪いせいで薄っぺらく感じてしまいました。物語自体は面白いんだけど、ご都合主義が鼻につく感じ、といえばいいでしょうか。
 
 
いつも適当に興味のある本を乱読しているばかりなので、たまに賞レース物を集中して読むと、世相を反映している様子が見て取れるので良いですね。