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円安FAQ 〜リフレと円安〜

リフレ派の人には円を増発しても円安にならないという人がいるのでまずは,「リフレ政策をとるとなぜ円安になるか」という説明から始めてみよう。
 

モデルケースで考える

A国とB国という国があってお互い貿易をしている。A国は魚をとってB国に輸出しており,B国は穀物を作ってA国に輸出している。あるときA国の首脳が「お金の量を倍にすれば穀物が今の2倍輸入できるんじゃね?」と,自国の通貨を2倍に増やした。「さあ!どんどん買え!」
 

変動相場制の場合

B国側の人とすれば「A国はお金の量が倍に増えたんだから,これまでと同じレートで交換するのは損」と考える*1。その結果A国の通貨はB国の通貨に対して安くなる。「A国はこれで借金がものすごく増えたから,将来A国通貨の価値が下がるかもしれない」と考えても自然で,相対的にはB国通貨が高くなる。
結果,お金が増えたとしても穀物を買うのに今までの2倍のお金が必要となり,今までどおりの量しか買えない。
一方B国の人は,A国の資産価値が半分になったのでA国の資産を買いまくる。魚だけじゃなくて魚を捕る舟も網も魚を加工する工場もB国の人が買う。
A国内は品物が不足してインフレが起こり,B国通貨がA国に流入することで通貨レートも元の基準に戻る。そのときにはA国の資産は根こそぎB国のものになっており,政府にはとんでもない金額の借金が残る。
 
通貨乱発→インフレという勝間和代氏の言い分は分かるけど,その間にスーパー円安が起こることで,A国の資産がB国のものになってしまうことに危機感を抱いているのだが,そのことがリフレ派のみなさんはわかってくれなかった。ここまでの流れが理解できたにもかかわらず。
結果デフレを脱出できたとしても,家も土地も会社も利益を生み出すものが自分の手元になくなってしまったら元の木阿弥だと思うのだが。
 

固定相場制の場合

で,ここまでが昨日まで思ってたこと。
そしたら「勝間和代氏は固定相場制導入も目指している」と聞いて目が飛び出した。確かにドルとペッグすれば,ドル安にならない限り円の価値も下がらないけどさ・・・。もっと問題が大きくなるんじゃね?
同じように固定相場制だった場合のA国とB国について考えてみよう。
 

固定相場制の場合 〜その1〜

B国はどんどん穀物を買われ,穀物の値段が上がってインフレになる(あれ? よその国の方がインフレになってしまったぞ)。穀物の値段が上がったのでA国はお金の量が2倍あっても2倍の穀物は買えなくなり,振り出しに戻る。
A国にはたくさん穀物が輸入され,国内の穀物価格が下がってデフレになる(あれ? お金を増やした国の方がデフレになった)。B国の穀物の値段が上がっていき,振り出しに戻る。お金を倍に増やした分,国の借金は増えた。
 
固定相場制の場合だと円安になることはないけれど,お金の量を倍にすることがモノ余りの状態を生んでしまい,デフレを助長する。そうしないためには経済を閉鎖して国内でモノが足りない状況を作り出す必要があり,グローバル化の逆を進む必要がある。
 
固定相場制の穴はもう一つある。今度は日本のケースで考えてみる。
 

固定相場制の場合 〜その2〜

1ドル=120円でペッグしたとする。日本の利率はゼロ金利だが,アメリカは日本より先にFF金利を引き上げるかもしれない。「日本は経済成長率が2%を超えるまで金利を上げない」と言っているので,円を売ってドルを買う人が続出する。借りた円をドルと交換してアメリカ国債をもてば,ノーリスクで金利を手にすることができるのだから。
結果として増えた円はどんどんドルへと交換されて国内に流通せず,モノが買われないので物価も上がらないことになってしまう。
 
増やした円を国内で流通させるためには日本の金利もアメリカにあわせる必要があるので,量的緩和政策とまったく相性が合わないと思うんだけどどうだろうか。
 

デフレと円安

デフレというのは昨日も書いたけど「お金>モノ」の状態。だからお金の量を増やすことで相対的にお金の価値を下げ,「モノ>お金」を目指すのが勝間氏の言い分。これはよく分かる。
だけど現在の変動相場制・グローバル経済のもとでは,日本の通貨が安くなることで得をするのは日本人よりもむしろ外国人の方で,結果としてデフレを脱却したとしても日本に残されるのは膨大な借金だけ。利益を生み出す資産は全て日本国民のものではなくなってしまう。
リフレ派の人は「それでもいい!」と言ってるんだけど,それは「健康のためなら死んでも良い」というのと同じ理屈だよな。自ら植民地化されることを望むらしい。
 
日本の通貨を下げないためには固定相場制を取り,なおかつブロック経済を取らなければならない。なんだか第2次大戦前を彷彿とさせるね。ぐんぐつ(なぜか変換できない)のおとがきこえる・・・。
 

リフレ派の欺瞞

リフレを起こすことがいかにも簡単なことのように言っているけど,

  1. 経済成長するまで量的緩和
  2. 固定相場制

の導入って鬼のようにハードルが高く,これだけでも信憑性が疑わしい。さらにブロック経済もするわけでしょ・・・?
こんなに何でも変えられるんだったらベーシックインカムを導入する方がずっと楽だ。国内だけの問題で済むし。将来の給付が約束されて貯蓄することの意義を薄まると,自然に「モノ>お金」へと国民の意識が変わるわけで,さらに経済成長に失敗したとしても,支給の一元化によって公的機関のスリム化が図れるという利点がある。
 
無限に量的緩和をつづけるということは即ち倍々ゲーム,ルーレットで赤に賭けて外れたら掛け金を倍にしていけばいつかは勝という理論だ。「もし種銭がつきたらどうなるの?」と聞くと「種銭を自分で作るから大丈夫」という。
国債だけを買うなら利率が0だからそれで問題ないけれど,中長期国債社債,CPに対する利息の支払は膨大に増えていく。しかもインフレに転じる可能性はルーレットのように50%ではない。
考えれば考えるほど,そして知れば知るほどリフレ政策のだめな点ばかりが思いつくなあ・・・。誰か教えて!って言ってもリフレ派の人は身内でたたえ合ってるのが好きらしくて,自分のような愚昧な輩に教えを授ける気持はないのが残念だ。

*1:実需でしか為替レートが動かないというのは妄想