きのうの神様


初めて読むのに何故か既読感がある。井上荒野三浦しをんの作風にどこか似ているような気がする。それが悪いわけではなく、女性作家独特のぞわぞわした感じが自分は好きだ。
退屈な日常がふとしたことから一変しそうな雰囲気を見せ、それに対して心の奥底に潜む”もうひとりの私”が騒ぎ立て、だけど結局なにも起こらずに元の日常に戻っていくような物語。これだけ聞くといかにも普通の事柄で小説にするまでもなさそうに思えるのだけど、リアリティという意味ではこちらの方が上だ。
収められている短編では「ノミの愛情」が特に良かった。夫に対する献身的かつサディスティックな愛情にゾクゾクする。
 
はてな年間100冊読書クラブ 216/229)