惑星とは何か

「軌道周辺で、圧倒的に支配的な天体」
 この定義をゲンミツにあてはめようとすると、我らが地球までもが惑星としての地位を危うくしてしまうというのが昨日までの話。ということで、主星と衛星の関係を洗いなおしてみることにしてみましょう。前回は直径比だったので今回は質量の面から考えてみます。
 

惑星 惑星の質量(E+23kg) 最大の衛星 衛星の質量(E+23kg) 質量比
水星 3.302 - -
金星 48.69 - -
地球 59.742 0.7349 81.29
火星 6.4191 フォボス (1.08E+16)*1 約5,900万
(セレス) 0.009445 - -
木星 18,990 ガニメデ 1.482 12,813
土星 5,688 タイタン 1.345 4,228
天王星 868.6 タイタニア 0.03526 24,634
海王星 1,024 トリトン 0.1345 7,613
冥王星 0.129 カロン 0.019 6.789
2003UB313 0.15? - -

 
 質量比で見比べても1位が冥王星、2位が地球であることは変わりません。ほかの天体と比べてもこの2つが圧倒的に質量比が1に近いといえるでしょう。ところが、この僅かな差の中に「圧倒的な」違いを含んでいるのです。
 それは、2つの星の重心がどこに存在するかということ。質量比をもとに計算すると、月の公転半径が38.4万キロなので、地球-月系の重心は地球の中心から4.671キロの地点にあることになります。地球の直径が12,756キロですから、重心は地球の内部に存在することがわかりました。
 それでは冥王星-カロン系ではどうでしょうか。カロンの公転半径は19,405キロなので、重心は冥王星の中心から2,491キロのところにあります。冥王星の直径が2,302キロですので、地表からはるか1,000キロ以上上空に重心があるというこになります。つまり、冥王星-カロン系はカロン冥王星の周りを回っているというよりも、むしろお互いがお互いの周りを回っている二重星であることが導き出せたわけなのです。
 ということで「軌道周辺で、圧倒的に支配的な天体」を定義するために「二重星になるほど衛星から影響を受けていないこと」という条件が入ることで、地球を惑星の範囲内にとどめておけることになると思います。
 
 それではセレスや2003UB313についてはどうか、ということですが、これらは衛星を持っていないためこの条件だと定義できません。
 実は、この「軌道周辺で、圧倒的に支配的な天体」という言葉を字義通り受け止めるとすると、たとえば「海王星冥王星は軌道が交差しているからダメなんじゃないの?」ってことで全て丸く収まるわけでして。2003UB313冥王星と軌道が交差しているし、セレスは小惑星帯にあるため、同程度のサイズの小惑星と多く軌道を交えていることが予想出来ます。
 それでもこの1つだけではやはり地球-月系において不安が残りますし、質量比や直径比が何倍あると圧倒的なのか、その数字の根拠となるものはなにか、ということがひっかかるのです。そこで今回のような詭弁を弄してみたわけでした。
 数字が恣意的に決められるのであれば惑星の条件はもっと単純に「質量が1E+23以上のもの」とするだけで十分です。でもその数字に納得できるだけの理由がないと理論として不十分なわけで。なぜ地球-月系は良くて他はダメなのか。結局は地球-月系がいかに特異的な存在なのかということに尽きるのでしょう。もっと明確に「惑星・矮星小惑星・彗星」の区別をつける方法があると一番なんですが。
 
 今回は昔読んだアイザック・アシモフのノンフィクションの内容を思い出しながら書いていたので、懐かしい気持ちになりました。そういえば自分は地学部だったこともあったんだった。まにまに。科学エッセイシリーズはもう一度買いなおしてみてもいいかもしれないな。

*1:月の600万分の1。これはもう衛星じゃなくてただの岩なんじゃないかと思う大きさです