マイナスの人間関係

雷句誠騒動で知ったけど、『邪宗まんが道』(URL)がとてつもなく面白かった。まんが極道を地で行くような恐ろしくも切ない物語にやみつきになり、一気に読み終えてしまった。
自分の作品を一番評価してくれる人間=編集者が、実はもっとも信頼ができない人間であったことは悲劇だけど、それを悲劇と思わない人間もたくさんいるわけで、編集者の言うとおりにした結果売れっ子になったり使い捨てられたりもするし、だけど商業誌に載せる以上は顧客の要望にあうものを提供しなければ受け入れてもらえないという現実もあって、そういった悲喜こもごもが渾然となっているのはいい感じに人生の縮図だな、と思った。
 
好きなことをやってお金をもらっているんだから不満を言うな、という言い分も分かる。
ここ一、二週間はずっと残業して(しかも残業代無しで)体調も微妙になったけど、今日その成果が上手いカタチに現れたのはすごく嬉しかったし、一気に体調も良くなってしまった。好きな成果を得るための苦労、というのは分かる。
こちらが無償で働いている影で上手い汁を啜っている人もいるかもしれないけど、それでも感謝とか、リスペクトとか、「今日は良く出来たね」とかいうねぎらいさえあれば「次もいいのを作ってやる」という気にもなるのだ。
 
本来はそういうのは"タダ"なはず、スマイル=0円であるはずなんだけど、0円のものを提供するにもプライドが許さない、という編集者の気持ちが雷句誠松永豊和を苦しめたのだろう。
心理学の実験でこんなのがある。
会社で、周りの人が年収500万円なのに、自分だけが300万円しかもらっていないとする。このときに、
(1)自分の年収が100万円上がる
(2)周りの人の年収が200万円下がる
このどちらかが良いかと質問すると、(2)と答える人が多いのだという。自分にはまったく得がないのにも関わらず、だ。
人間は、自分が得をするより周りの人が損をするほうを好む人間なのだ、という結論はとても悲しいが、最近のニュースはどれもこんなのばかりなので、より悲しい。
 
 
松永氏の漫画をAmazonで注文した。読むのが楽しみ。