京都 細見美術館 琳派・若冲と雅の世界

道立函館美術館で開催されていた、『琳派/若冲と雅の世界』展に行ってきました。
ものすごく日本画が好きというわけじゃないんだけど、伊藤若冲という人は一時期はてなダイアリーのテーマにも使っていたことがあって、興味を持っていたのでした。

鶏の絵が素敵。
 
残念ながら展覧会の内容は若冲オンリーというわけではなかったんですが、”琳派”と呼ばれる尾形光琳の弟子の作品にもすごく心ひかれるものがあって楽しかったです。眼に見えている風景を大胆にデフォルメして、細部を刈り取ることで注目すべき部分を引き立たせるという手法がいかにも日本画という感じ。
特に良かったのが酒井抱一。展覧会のテーマとはちょっと違うけど、『青面金剛像』が素晴らしかったです。

四隅に配置された明王のユーモラスな表情といい、四肢に蛇や龍を巻きつけた金剛の鬼気迫る表情といい、見るべき点が多すぎてしばらくこの絵の前から立ち去ることが出来ませんでした。
 
日本画的な凄さでいえば、この酒井抱一の弟子の田中抱ニが描いた『垣に秋草図屏風』がイチオシ。草花の柔らかい姿と、垣の直角・直線を合わせたミスマッチ具合が良かったです。
屏風なのでかなりの大作なんですが、いろんな秋草を描いた中でも左端の、菊とほおずきが主役だと思いました。白い菊が全部こっちを向いているのが花火のようである意味で超現実的、デフォルメの極致とも言える姿が楽しい。ほおずきは曲線を描いて屏風の端に伸びていて、無限に続くかのような雰囲気を醸し出しています。
 
自分が楽しみにしていた若冲の作品は少なかったのですが、それでも『雪中雄鶏図』と『鶏図押絵貼屏風』は期待通りの作品でした。屏風に描かれた鶏の迫力と言ったら! 身長が20mある怪獣を描いているかのような錯覚さえおぼえました。鶏の生得的な雄々しさと、にもかかわらず人間に害することがないという滑稽さ、その両極さを見事に表していました。
一方、若冲の息子と言われている若演の『遊鶏図押絵貼屏風』では鶏のユーモラスさに重点が置かれていて、こうの史代の『コッコさん』を彷彿とさせるマンガタッチな姿に思わず頬がゆるみます。
 
残りは展覧会のテーマで言えばおまけのような感じなのですが、仏教美術の凄さには触れずにいられません。田中親美の『平家納経』は、お経の一つひとつが華麗な金文字で彩られていて、表装具はもとより本文も金箔銀箔がこれでもかというほどまぶされていて、見ているだけでご利益がありそうなシロモノでした。このぐらい神秘的であればお経を読むことでどんな奇蹟だって起こせそうな気がしてきます。
ていうか仏経は面白いよ。人々の苦しみを救う六観音の中に千手観音がいて、その千手観音の部下の二十八部衆の中に帝釈天がいて、その帝釈天の使いがさっきの青面金剛で、とか面白くないはずがない。設定厨の極みです。
 
そんなこんなで雅なものに触れて楽しんでいるうちにテンションが上がってしまい、こんなものを買ってしまいました。

篆刻なんて買っても使い道は特に無いんですが、9mmというサイズが丁度良くてついつい。一点物だから通帳印とか実印にしても良さげではあるけれど、無難に職場の回覧文書に押すハンコにしようかなあ。