プロ棋士はどう考えているか 〜前編〜
公立はこだて未来大学で開催された公開講座に行ってきました。講師は羽生善治三冠と未来大学の松原教授です。
羽生三冠の棋風は僕にはさっぱり分からないのですが(藤井猛とか谷川浩司の方が好き)、以前見た時に気さくで明るいお兄さん的な印象を受けて以来好きな棋士の一人です。今からちょうど10年前、西武デパートで行われた将棋祭りで見たのが初めてでしたが、雰囲気はその時と全く変わってなくて、終始和気あいあいと、そして公演慣れしているのかよどみなくお話をされていました。
W-ZERO3の機能を駆使してメモしてきたので、とりあえず箇条書きに内容を記してみます。手書きメモ機能はこういう時にとても便利。ノートパソコンはキーを叩く音がうるさい(実際いましたけど)ノートと筆記用具を持ち運ぶよりお手軽です。
まずは羽生三冠のお話からです。
どうやって先を読んでいるか
- 一手一手検討すると言うより、良い手にフォーカスを合わせていくイメージ。
- 頭の中で指了図を作ってから盤面をそれに合わせていく。
- 盤面をひっくり返したり脇に立ってみたり、いろんな視点から眺める
- なんだかんだ言っても結局はカン(ここで場内爆笑)
- 他のプロと話をしたが10手先を読むのも無理。相手もプロ。スタートからゴールは決まっているが途中はアドリブ的に決まっていく。まるでコンパスのない航海のようだ。
- 結局はヒラメキです(笑)
- 大事なのはなぜひらめいたのか検討すること。
情報化時代の将棋論
- 以前は新しい戦法があると、みんながそれに飛びついた。応手や対策をみんなで考えた(焼畑農業的?)
- 今はスポット的に新しい形が生まれるので自分でも把握できない。認識力を超えている。
- 新手を創り出す側にとっては厳しい時代。オリジナリティが浪費されている。
- 「創造」の定義が変わったのではないか。一歩でも半歩でも先に行くことが重要?
- 10年前に勉強したことが今では全く役に立たない
- むしろ昔より環境が良くなった成果だと思う。以前は将棋の王道、とか、名人が指す手ではない、などという言葉があった。画期的な新戦法が出にくい環境。今のような手を指したら破門されてもおかしくない(笑)
- 昔の勉強は無駄→知識としてはプラス?→既成概念に捉われる弊害の方が大きい。
- 大山は「見たまま」で指していた。全然読んでなかった(笑)
- 経験の蓄積が力に変わる、量が質へと転換するポイントがあるのではないかと考えている。
今後の将棋界
- 自分も将棋の本を買う。将棋は学問に近い域にある。
- 今の人は環境が良い。才能が埋もれてしまうことがない。高速道路に乗っている
- そのせいで閉塞感・停滞感が生まれないか。誰でもある程度までは強くなれる。そこからが大変。高速道路が渋滞する。自分たちは一般道でふるいにかけられてきた。
- 人とは違ったアプローチが必要。AをしたからBになる、というのではダメ。全く新しい方法を。そこに量から質への変換がポイントになるのではないか
- 将棋には闘争心は不要。チェスや象棋などとは全く違うゲームだと思う。
この後で松原教授と羽生三冠との対談に入ります。