B級1組6回戦 ▲渡辺明竜王−△山崎隆之七段

一手損角換わりからの激しい将棋を制して渡辺竜王が快勝。ただでさえ一気に勝負が決まりそうなところをさらに踏み込んでいく展開で、最初から最後までハラハラしどおしだった。
やはり渡辺竜王の将棋の魅力は”見切り”にある。お互いの玉の固さを見極め、自分が固いと見るや相手の攻めをぎりぎりでいなして相手玉にくらいつく。斬るか斬られるかギリギリの勝負が多い。相手の山崎七段は薄い玉を好むタイプなので渡辺玉も相当に薄いままに攻めることになり、普段よりも緊張感があった。
 

注目のポイント

昼食休憩後のこの一手がポイントだったと思う。

この局面ではどうしても▲5六歩△同銀として▲1一角成を狙いたいところだけど、それだと△4四銀と引かれて良くない。相手の銀がうわずっている隙を残したまま飛車の横効きを防いだ歩が機敏だった。まさに手裏剣。
 
もう一つのポイントは夕食休憩後。

△6七歩成が相当危ないのに、それをほおっておいての強手▲2三飛成! ギリギリで自玉が詰まないことを見極めて極めに出たというところ。*1
 

アウェーだもんね

今日の対局は関西将棋会館だったので、棋譜コメも山崎七段寄りのものが多かった気がする。渡辺勝ちの結論が出ても誰も言及しないようなふしもあったし。これが被害妄想でない理由はテキスト版棋譜。ヘッダに書かれた、

# --- Kifu for Windows (Pro) V6.29 棋譜ファイル ---
盤面回転

の文字が証拠。これを棋譜ソフトに読み込ませると自動的に後手の山崎七段が手前に表示されるので(通常は先手が手前にくる)控室の棋士も含め検討陣も山崎寄りだということが分かります(笑)
渡辺竜王はアウェーでよく頑張りました。
 

昇格が見えてきた・・・?

これで成績は久保棋王に続く2位。その久保棋王も含めて対局しなければならない強敵が残っているうえ、そろそろ本命の竜王戦も始まって忙しくなるしから一筋縄ではいかないけど、今年度は勝率8割オーバーという無敵ぶりをみせつけている。
この調子でガンガン勝って、A級昇格のついでにタイトルの1つや2つ強奪しちゃえばいいね。
 

成長する二人

渡辺明ブログに今年の3月に行われた前節のVS山崎七段戦が掲載されていて、今回の将棋と見比べると面白い。
B級1組順位戦12回戦、山崎七段戦。 - 渡辺明ブログ
渡辺=固い・山崎=薄いというのは同じだけど、半年前に比べて両者ともその傾向がより先鋭化しているように見える。半年のうちに自分たちの特徴を研ぎ澄ましている様子に、トッププロだからこその切磋琢磨があるのだと感じた。

*1:検討陣はこの手で「これは形作りですよ」と言ってたけどそんなに簡単? 竜王のブログには「△7八とや△7七と、はと金が消えるので大した攻めではなく、怖いのは実戦の△8七飛成▲同金△7八銀の筋。」と書いてあるんだけどなあ・・・