恋とストーカーとゲーム理論と その3

ゲームの回数が有限回であれば「裏切り」つまり、相手を傷つける戦略を取るほうが有利だと言う話を書きました。ということは逆に、ゲームを終わらせる手段を持っているほうがゲームの主導権を握ります。
「キモい戦略」のキモがなにかというと、相手にキモいことを伝える=大ダメージを与えることで、相手にこれ以上ゲームを続けさせる意思を失わせるところなのです。
 
例えば
【好き(+10)】 × 【他人(±0)】 = 0点
だった関係を、
【好き(+10)】 × 【キモい(−10)】 = −100点
にしてしまうのが「キモい戦略」。0点が−100点になってはたまりません。「キモい」とは、「あなたとはゲームを続けたくない」という宣告です。相手との関係を断ち切ることで、両者の関係において圧倒的に有利に立つことが主眼になっていることが分かると思います。
 
ところが、ここには落とし穴が二つありました。
一つ目には、勝負に勝っても勝ったプレイヤーは何も手にしていないこと。相手にダメージを与えたという、負の利得しかここには存在しません。
ふたつ目には、勝負に勝つことの意味が、もはや失われていること。人間関係に勝利するとは、その後の関係においてもアドバンテージを得ることにあります。そもそも関係を断ち切ってしまっては本末転倒ですよね。戦争に勝つことの目的は相手の国土を焦土にするためではなく、植民地にして継続的に利益を上げるためでした。
 
しかしながら、落とし穴があると分かっていながらこの戦略を取らなければならない理由があるのです。それは、この戦略を取っていれば少なくとも負けることが無いからです。何も失うことはありません。相手を焦土にしてしまえば、もはや反撃されることもないのです。
 
今の日本を覆う病理のようなものが、少し見えてきたのではないでしょうか。何も奪われたくない。失いたくない。国民全体がそんな恐怖に襲われているために、一見不合理な「キモい戦略」がはびこっているのです。
 
 
一方、バブルはなやかなりし頃の「アッシー君」や「メッシー君」の関係は、希望を持たせるだけ「キモい戦略」よりも優れている戦略だったといえるかもしれません。つまり、
 
【好き(+10)】 × 【下僕www(+2)】 = +20点
 
こういう関係を気づくことで、継続的に利得を得ることが出来ます。ある意味でWin-Winの関係が築けていますね(笑)
 
そういえば今は「しっぺ返し戦略」より優れた戦略があります。その名も「主人と奴隷戦略」!!。
 

各チームは、複数の戦略、複数のプレイヤーを送り込むことができる。サウサンプトン大学チームは、60のプログラムを用意した。ジェニングズ教授の説明によると、それらはすべて、ある1つの戦略を少しずつ変化させたもので、あらかじめ決めた5から10の選択を行ない、プレイヤーは互いにそれらを認識できるようにプログラムされているという。サウサンプトン大学チームのプレイヤー同士が互いに相手を認識すると、2人はすぐに、「主人と奴隷」の関係になる片方が自分を犠牲にし、他方が繰り返し勝てるようにするのだ。
ゲーム理論と談合 - FIFTH EDITION

 
つまり、「アッシー戦略」は科学的にも優れている戦略だと証明されているのです。互いに利得を得ようなんて、現在から見ると随分気前のいい戦略ですが、バブル期ならではの発想でしょうか。まさに「与えよ、さらば与えられん」ですな〜。
 
 
今日はこれまで。なんだか話がちょっとずつそれているような気もしますが、どうにかしてストーカーが生まれる心理と、ゲーム理論とを結び付けたいと思っています。
 
(続きたい)