外に出る用事があったので夕飯は外で食べようという話になったのですが、どちらともなく
「五島軒にしよう」
と言い出したのには笑いました。たぶん原因はこの前の失敗カレーですね(^_^;)
土曜日の18時頃に到着したのであいにくの満員、ですが、五島軒はしっかりとした待合室があってさらには展示室を兼ねたお土産屋さんもあるので、むしろ多少待ったほうが良いぐらいのものです。
しばらくぶりに行ったら、メニュー(の冊子)が高級感のあるものに変わっており、写真が無くなっていました。料理の名前だけの方が確かにカッコイイかもしれないけれど、写真で見ないとどんなものが出てくるのかわかりにくいんじゃないのかなあ。特に、外国人観光客はまず間違いなく日本語なんて読めないのだから、写真があるだけで安心感がぜんぜん違うのに。英語や中国語のメニューはあるのだろうか、なんてことを心配してみたり。
一応フレンチレストランなのでカレーだけでなくコースメニューもあるのですが、我々はもっぱらオトクなセットメニューを注文しています。
たぶん一番人気は「明治の洋食&カレーセット」でしょう。以前のメニューに書いてあった「お急ぎの方にオススメ」の文字は消えていましたが、一度にどーんと出てくるので確かに早いです。一品ずつ持ってくるのを頼むと混んでいる時に放置されがちなんですよね。五島軒名物のカレーはもちろん、フライ各種にビーフシチューまでついてくる”大人のお子様ランチ”的な全部盛り。初めて五島軒に行く人は必食でしょう。
一方、自分がよく注文するのは「”伝承の味”ロシア料理セット(なぜかホームページに記載がない)」。カレーならともかく、ロシア料理なんてなかなかよそじゃあ食べられませんからね。
そもそも五島軒とは
五島列島出身の武士、宗近治は維新の志士で、近藤勇ら新撰組とともに戦いました。箱館戦争で旧幕府軍が敗れると残党狩りから逃れてハリストス正教会に匿われ、ロシア料理とパンの焼き方を学んだそうです。その後彼は”五島英吉”という偽名を名乗って五島軒のシェフとして活躍するわけですが、なんだか大河ドラマになりそうな壮大な歴史がありますね。
それにしても、五島列島出身で英国風料理を作るから五島英吉とは、安直というかなんというか。いかにも偽名だし、当時の人も「あいつ、本当は旧幕府軍の残党なんじゃね?」とうすうす気づいていたのかもしれません(^_^;)
なんで縁もゆかりもないロシア正教会に入り込めたかというのが謎ですが、実はこの宗近治、元は長崎奉行所の通辞官、つまり長崎にやってくる外国人と交渉を行う人だったんですね。なので数か国語を話すことはもちろん、もしかしたらロシア語だって堪能だったのかもしれません。
旧幕府軍には意外と知識人が多くて、その代表格には蝦夷共和国初代総裁の榎本武揚が挙げられます。彼はイギリス留学をして咸臨丸を買ってくる(そして旧幕府軍のために持ってくる)スーパーエリートで、反乱軍の首領にもかかわらず助命されて新政府でも活躍するのでした。そういえば九州で宗氏といえば、対馬を領地にしていた大名です。宗近治も名家出身のエリートだったわけだし、もしも歴史の歯車が少し違っていたのなら彼もまた新政府で外交官になっていたりして、そして五島軒というレストランも存在しなかったかもしれませんねえ。
閑話休題。ロシア料理セットはボルシチとピロシキ(1日20食限定)に始まり、ビーフストロガノフとビーツのサラダへと続きます。
ビーフシチューとどう違うねん、と言われがちなビーフストロガノフですが、食べ比べてみると結構な違いがあります。ビーフシチューではビーフはシチューに旨味分を滲出させるための存在なのに対して、ビーフストロガノフではビーフが主役。しっかりと味付けされて、まるでステーキを煮込んだかのような存在感があります。
サラダの主役は真っ赤なビーツ。ボルシチも真っ赤だし、ソ連の国旗が赤いのはビーツの赤かもしれないなあ。
それにしても、サラダをフォークで食べるなんて馬鹿げた行為だとは思いませんか? 葉っぱに刺さらないっての。
そして締めはもちろんロシアンティー!
そしてロシア風ケーキのクワードです。
![]() 【函館・五島軒】クワード18cm |
ジャムは紅茶に混ぜないで、舐めながら飲むのが正解と知りつつも、このイチゴジャムが甘いのなんの。
ジャムを混ぜる地方もあるとか、ロシアでも混ぜる人もいるとか、紅茶にジャムを入れないのは紅茶の温度が下がるのを嫌うからだとか、いろんな説がありますが、
ここはカチューシャ隊長よろしくスプーンを舐め舐めしながら飲むとよろしいんじゃないでしょうか。
カレーセットもロシア料理セットも、どちらも税込み2,500円ぐらいで食べられるお食事としては非常に満足度が高いです。ウナギを食べるのに匹敵する美味しさ。
なんだかんだで四半期に一度は食べに行っているんじゃないかな。仮に外食一回1,000円だとしたら、一回パスしてここに来たいぐらい。調度品を含めた雰囲気もとても良いですしね。接客がファミレスレベルなので予約コースの8,000円とか10,000円とかを頼む気にはなれませんが、プチ贅沢ぐらいの感覚で来るなら完璧です。函館市内なら10,000円も出すと、革命的に美味しい店があるからなあ。
五島軒のカレーは函館土産の定番ですが、送る一方で自分で食べたことがないという。レトルトでもおなじくらい美味しいのかな。

- 出版社/メーカー: 五島軒
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去年から始めたというスイーツが結構きちんと美味しかったのでオススメ。
![]() 【函館・五島軒Bouquet series】ブランデーケーキ(コニャック) |
食感はフワフワでブランデーたっぷりで大人の夜のおやつという感じ。このシリーズは9種類もあるので全部食べてみたくなりました。新名物として流行りそうです。