NO MAN'S SKY 2

洞窟の内部に足を踏み入れると、おあつらえ向きに鉱物の結晶がニョキニョキと洞窟の内部に向かって突き出していた。

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オレはさっそくマルチツールの照準を鉄の柱に向けてトリガーを引いた。放たれたビームが結晶を焼き溶かし、不純物を取り除いて純粋な鉄分だけを抽出してバックパックへと流しこんだ。

こいつはオレのようなプロの山師にとっては無くてはならない便利な道具だ。金やプラチナなんかは大量の土の中にほんの数グラムだけ含まれているわけで、そんなものを人の手でふるいにかけて行ったら何年かかるかわからない。そこをこのマルチツールを使えばビーム一閃で小山のひとつぐらいは溶かしてしまって、そこから金だけを抽出したりすることだってできる。恒星から惑星、小惑星を渡り歩いては希少な鉱物資源を探し、その情報を売ったり買ったりするのがオレの仕事だ。

洞窟を抜ける途中でプルトニウムの鉱床を見つけることが出来たのはラッキーだった。これでエンジンに火を入れられる。重金属が存在するぐらい世代が若い惑星で助かった。超新星爆発を経ていていない若い星系だったら立ち往生していたかもしれない。

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洞窟を抜けたオレの目に飛び込んできたのは、酸で真っ赤に焼けた大地と、周りの大地が風化して残されたのであろう硬い酸化合物の奇妙なアーチだった。植生を見るに、あまり大型の生物はいそうにない。こんな環境なら進化の度合いも低いことだろう。

スキャナは東の方向にヘリジウムが大量に存在していることを示している。宇宙での航行に必要なパルスエンジンを修理するために大量に必要になってくる。ちょっと遠いが他にも亜鉛だのタミウム9だの、必要になる元素はまだまだたくさんある。途中で拾っていければいいだろう。そう思ってヘリジウムの鉱山まで一直線ではなく、ジグザグに寄り道をしながら進んでいたのだが、そんなオレの目の前に奇妙な物体が姿を現した。

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「こいつぁ、とてつもねえ拾いものをしちまったみたいだな」

誰に聞かせるでもなくそうつぶやいた。洞窟の中に突き出された結晶の柱や、風化で残された岩などとは一切違う人工的なフォルム。まさかこの星には文明が存在するのか。だったら助かる。いや、そうでもないか。ハイパードライブ通信を使っていないということは、銀河連邦とまったく接触がない、異なるテクノロジーを持った連中だということになる。仮にヒューマノイドだとしても、満足に意思疎通さえできるかどうか分からない。

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建造物の足元までやってくると、それが住居や宇宙船ではなく、岩の塊で作られた何らかのモニュメントであることが分かってきた。岩の内部から漏れ出る青い光は、単なる電飾とも思えない。何か未知のテクノロジーでも使われていたら面白いぞ。そう思って近寄って見上げると足元に影が走り、見上げると上空をよたよたと飛ぶ生き物が見えた。ほとんど墜落するようにして遺跡のてっぺんに激突した生き物は耳障りな声でビービーと鳴いている。やがてそいつは遺跡の足元にいるオレの存在に気がついて、目を真っ赤にして頭をぐるぐると回しながら、効いたこともないような言語でオレに話しかけてきた。

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何を言われているのか全くわからない。だが、オレに何かして欲しいと思っていることは確かなようだ。懇願するような手つきをし、骨の折れた羽を指し示す。そいつの体は遺跡が発する青白い光に包まれているように見えた。

(これか?)

オレはマルチツールをホルスターから抜いて、右手に持って構えた。

(そうだ、それだ)

翼の生えた生き物が、そう言ったような気がした。