謎の侘び寂びボードゲーム『枯山水』で遊んでみた
インディーズから人気に火がついて完売御礼、入手困難にもなった大人気ボードゲーム『枯山水』をようやく(定価で)手に入れることができました。
- 出版社/メーカー: ニューゲームズオーダー
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不思議なゲームだとは聞いていたけれど本当に謎が多い。まずですね、このパッケージが謎すぎます。枯れ果てた坊主と庭がばばーん、と。白黒すぎる…!
説明書には「禅の精神と芸術性をもっとも良く表したプレイヤーが勝利します」などと書かれており混迷の極み。これは本当に面白いのか…? と迷いつつプレイしてみたところ、その言葉に偽りがないことが判明。本当に「良い行いをして美しい庭園を作った方が勝つゲームだったとは。
というわけで以下はプレイレポになります。
2人用ルールを採用しているので、まずは名庭園カードを3枚場に出します。
このカードの表記通りに岩を並べることができるとボーナスポイント。2人用の場合は共通の目標になります。ちなみに岩はこんな感じ。
中にオモリが仕込まれていて、持ち上げるとずっしりとした手応えが。カラーリングも凝っているのでゲームをするたび「今回はどの岩を出そうかな」と迷うこと必至です。
さらに各プレイヤーに、作庭家カードを3枚ずつ配ります。これも2人用ならではのルール。
彼らの持つ特殊能力を活用してゲームを有利に進めよう。
ゲーム開始
まずは相手のターンから。
ターンの前半は、寺院ボードから砂紋カードを引くところから始まります。最初は左上か左下に配置することになっているので、このように配置されました。
ターンの後半は各種行動を選べるのですが、まずは無難に「座禅」を選択。心静かに座禅を組むことで、プレイヤーは『徳』を1ポイントゲットできるのだ!(意味不明
続いてこちらのターン。寺院ボードから砂紋タイルを引きます。
なんか似たようなのを引いてきました。個人的にはこのような縦に繋がる模様は苦手です。庭が完成した時点で砂の模様が綺麗につながっていないとペナルティを受けてしまうルールなので、縦に置くものの制限があるとレイアウトが難しくなってしまうからです。
と対戦相手の方をチラ見。相手はこのカードがあると最初に配置したカードに合わせて、きれいな半円形を作ることができます。こういう時には自分で使わず、他人に「譲渡」してしまうという手があるのです。
「これはこれは重森三玲どの。なかなか良き砂紋を手に入れたようで」
「ご無沙汰しております夢窓疎石どの。しかしこの砂紋、わたくしの庭には使いにくいようで」
「左様でございますか! それならば是非、拙僧めにお譲りいただけませんでしょうか」
「そうおっしゃっていただけるとこちらとしても助かります。どうぞ、お持ちくだされ」
「まことにありがとうございます。この御礼はいつか必ずお返しいたしますゆえ」
という茶番の末に砂紋カードを譲渡。その引き換えに『徳』を2ポイントゲットします。いいことをすると気持ちが良いなあ! 譲渡ではなく、人が自分の庭に置こうとしている砂紋を無理やり強奪することも可能ですが、この場合は徳を2ポイント失ってしまいます。逆に言うと徳さえあれば強奪も可能ということ…!
前半の行動が終わったので、続いて後半の行動。普通に座禅を組んだりしてもいいんですが、ここで作庭家カードを使うことにしました。
「わしが砂紋カードを2枚持ってきてしんぜよう」
引いたカードは両方とも苔です。これは幸先が良い! 苔カードは80枚中26枚しかないうえ、ゲーム終了時には1枚あたり2ポイントとして計算されるなど、かなり重要な役割を持っています。これを自分の庭の左上に並べてターンエンド。
決めろコンビネーション!
プレイ感としては「二人ソリティア」という印象です。だいたいは自分の庭に集中していればOKということで、戦略性に欠けるところはあります。その分争い事が嫌いなタイプの人には向いているかも。
とは言ってもカードや石の枚数には限りがあるため、先手必勝の部分もあります。あれから砂紋をいろいろと配置して、徳を2ポイント貯めたところで勝負に出ました。
徳を限界まで貯めた次のターン、
すべての徳を解き放つことで任意の石を好きな場所に配置できる最終奥義が炸裂。やったぜ\(^o^)/
船石は2人用の場合、場に1つしか用意されないため早い者勝ちで、さらに、下段に配置することで船石ボーナスも獲得できる優れものなのです。ついでにこの位置は名庭園カード『頼久寺』の条件を満たす場所でもあります。これで勝つる!
ゲーム終了
このようにして基本淡々と(笑)ゲームが進んでいき、全てのプレイヤーが15枚の砂紋を庭に敷き詰めた時点でゲーム終了となります。
共通の目標を目指して庭園を作っているので、どちらもよく似た石の配置になります。そのテーマにそって競い合うわけなので、二人用はかなりガチ要素が高いように感じます。
ここからは点数計算。寺院ボードの周囲にあるマス目を使って計算するので、非常に分かりやすくなっています。
砂の基礎点
砂紋カードのうち、砂のカードで作った長方形の面積が得点になります。
重森10点:夢窓5点
苔の基礎点
苔1枚につき2点ゲット。
重森10点:夢窓12点
対称性ボーナス
行が左右対称になっていると5点入るのですが、これは両者とも失敗。
渦ボーナス
半円は1枚あたり1点。真円は1枚あたり2点です。
わたしは円が嫌いなので、たまたま手に入った半円1枚だけで1点ですが、夢窓は真円4マス半円4マスの合計12点をゲット。難易度が高い分、うまく作ると高得点のチャンスになる模様。ぐぬぬ。
ここまでの小計は重森21点:夢窓29点。一気に逆転されてしまった!
砂紋の評価
砂紋が繋がっていないと2ポイントマイナスです。円と苔の配置が難しいのはこれも一因。すべて綺麗に繋がっていればボーナスポイントもゲットできるのですが、今回は両者とも1箇所ずつ繋がっていない部分があってお互いにマイナス2点されました。
2点ぐらいなら減点されてもたいしたことがないんですが、どちらかというと「綺麗に繋がっていないと気持ち悪い」という理由からパーフェクトを目指してしまいます。こーゆーところに性格が出ますねw
石の基礎点
石には色々種類があって、それぞれ配置するための徳ポイントが異なります。ところがこのゲームでは集計時「石1種類につき2点」が計算されることになっており、むやみに安い石を並べても高得点は目指せないようになっています。あくまで美しさ重視…!
重森は立石(小)、横石、立石(大)、船石の4種類で8点。夢窓は立石(小)と横石の2種類で4点です。
石組みの評価
さあここから盛り上がっていきます。
まず桂馬置きボーナス。2×3のマス内に桂馬置きに石を配置すると5点ゲットできるということで、重森は2箇所で10点を獲得。さあ、巻き返しなるか。
続いて斜め置きボーナスですが、これは両者ともなし。
3つ目は蓬莱山ボーナス。奥の行に立石(大)を2つ並べると10点です。狙っていたんですが徳が届かず、惜しくも逃しました。
三尊石ボーナスは立石を小・大・小の順番に並べるというもの。このようなボーナスが多いため、奥側に苔を固めて石を隣接させる作戦が有効になるとともに、必然的に庭の配置も美しくなるという仕組み。
臥石ボーナスは中央の列に臥石があれば3点なのですが、これもお互いに逃しています。
最後に船石ボーナス。これは重森が3点ゲットです。
ここまでの合計点は重森40点:夢窓31点。辛くも再逆転を果たしました。
名庭園
そしてここからがメインイベントならぬ、名庭園イベントです!
名庭園カードに表示されたどおりの石の配置をすれば大量のボーナスをゲットできるのですが、重森は南禅寺のみ達成で+11点。一方の夢窓は南禅寺に加えて頼久寺も達成しているので+23点。最後の最後で重森51点:夢窓54点と僅差で逆転されてしまいました!
徳
最後の最後で物を言うのが『徳』だった! このゲームは徳で始まり徳で終るというのかっ…。
ゲーム最終盤、早めに15マスを埋めてしまった重森はじっと座禅を続けて徳を蓄え、一方の夢窓は最良の砂紋を引くまで廃棄と座禅を繰り返し、その徳の差は、4ポイント!!
「この勝負、重森三玲の勝ちじゃ」
最終スコアは重森55点、夢窓54点と非常に接戦でした。お互いに同じテーマで競い合う以上、ギリギリの勝負にはなると思っていたのですがまさかこれほどとは。もしかしたら、金森宗和がくれた4ポイントのせいで勝利が決まったのか。うーん、面白い。
感想など
プレイ時間はおおよそ30分くらい。計算は複雑ですが、2,3ゲームもやれば感覚がつかめてきます。プレイヤー一人につき1枚、レファレンスが用意されているのも嬉しい工夫。
砂紋を並べる、徳を貯める、石を配置する、が絶妙なジレンマを生んでいて、ソリティアとしてもよくできています。あちらを立てればこちらが立たず、何を優先させるかを考えているうちにゲームの終了が近くなり、「あと1点徳があれば!」と嘆くこと多々。砂紋を15枚並べて終わってしまうのは短すぎるように思えますが、それはそれで俳句的だと思うと納得。
基本的に激しく戦い合うゲームではないので、のんびりと徳を貯め、自分の理想とする庭作りに没頭できるのは結構ハマります。石の色使いもよくできていて、並べること自体が楽しい。
難点としては砂紋を引いて捨てての繰り返しで単調になりがち(悪いストレス)になるところと、バトル要素が少ないので派手さに欠けるところですかね。これはまあ好みだと思います。ただひとつ言えるのは、ゲームで負けると悔しいのが普通だけれど、枯山水の場合はたとえ勝負に負けても良い庭が作れると納得できる、というところでしょうか。
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値段は8,000円強と結構強気ですが、原価を考えると十分納得できる内容になっていました。オススメです。