かんぽの宿 小樽

今回の宿泊先は小樽にあるかんぽの宿に決めていました。なぜなら安いから!
[公式]北海道 小樽のホテル・温泉 | かんぽの宿 小樽
去年は同じように安いからと「国民宿舎 あわび山荘」に泊まったところ、官営とは思えないサービスの良さで「利益度外視の原価勝負か!」と感動したので、二匹目のどじょうを狙いに行ったのでした。そして大失敗なのでした(^_^;)
 

古き"悪しき"旅館的なサービス

フロントで夕食の時間は「これからだと18:30、19:00、19:30にご用意できますが何時にしますか」と聞かれたので、19時でお願いしますと答えてその時間に向かったところ、なんと座席はレストランの出入口から一歩入った真正面。入ってきた人はみな、我々のテーブルに突き当たる仕組み。混んでて急遽用意したのかもしれないけど、それなら時間を聞く意味がないじゃないかと感じました。これはまだ軽いジャブです。
 
驚いたのが炊き込みご飯。
「これから火をつけると20分後に消えますので、それから5分ほどしたら食べごろです」
25分も待たないとご飯が食べられないってどういうこと!
「いま火をつけてよろしいですか?」
って、じゃあどうしたらいいの、明日食べるの?
それはフロントで聞いておくべきことなんじゃないかなあ。19時って言ったら19時に用意ができているのが普通だと思うんですけど。天ぷらも焼き物も冷え冷えで、あからさまに事前に準備していたことが見え見えでした。刺身には紙がかかっていてべっとりとドリップを吸っている始末。切るぐらい直前にやろうよ。何のための時間指定か、全くわかっていない様子でした。
 

旧共産圏のようなサービス

配膳も適当で、置けばいいと思っている感じで、なかなか凄かったです。ここまで驚く夕食は初めてかも。今時の日本では国営でもこんなにサービス精神が欠けているところはあまりないんじゃないかな。ある意味貴重な体験でした。
例えばお風呂もそう。自分が入る直前に、係員が水質の検査をやって出て行ったけれど、露天風呂にはぷかぷかと垢が浮いています。水質には問題がありませんが何か?ということなのでしょう。とてもなるほどです。もちろん加水&加温&循環濾過ですけど何か問題でも?
 
形つくって魂入れずというのが、かんぽの宿を表す一番のフレーズなのかもしれないと感じました。旧共産圏で「資本主義国家にはホテルというサービスが有るというので我が国でも国民の福祉のために始めてみました」という感覚。温泉地の夕食にはこのようなものを出すらしいから出しました。それ以上でもそれ以下でもない、必要最小限のクオリティが、ここにはあるのです。
 
朝起きた時に「鳥の声がするな」と思ったらそれがエンドレスで繰り返されていて、「朝だから鳥の声の音楽を流すのがサービスである」という発想にも驚かされました。窓を開ければ普通にカッコウが鳴いている、にも関わらず人工の音を流す意味。どこかこう、別の宇宙に紛れ込んだ気分になれます。
第七女子会彷徨」という近未来の日本を扱ったSFマンガで、「美珠市百年保存計画」という言葉が出てきます。すでにセミがいなくなった町で、セミの鳴き声を出すスピーカーを取り付けて「やっぱり夏はセミの声がしなくちゃね」と言う。同じ世界なのに何かがズレている。ズレている側には、ズレているという認識はありません。

第七女子会彷徨 (6) (リュウコミックス)

第七女子会彷徨 (6) (リュウコミックス)

だから多分、不満を言っても通じないと思いました。「マニュアルに書かれている通りのことをやっているのに、何の不満が?」というのが、予想される反応です。
 
従業員一人一人には全くの悪意はありません。その代わり、サービス精神もありません。発揮する意味が無いからでしょう。そこが凄い。簡易保険というガラパゴスの中で純粋培養されたおかげで今も生き残っている、稀有な施設でした。合掌。