はじめてのヨーロッパ 〜ガウディとダリを訪ねて〜 Part8

アムステルダムは今にも雨が振りそうなお天気。曇天模様がよく似合う薄汚れた街。雰囲気がどこかサイバーパンクだ。

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ホテルは駅横のHotel Ibis Amsterdam Centreにしていた。とりあえず荷物を置きに行くと、場所がいいからかフロントはものすごい賑わっていた。飛び込みのお客さんも多いらしく、ひっきりなしに「当ホテルは午前10時以降予約のないお客様の宿泊はお断りしています」的な説明をしていた。
部屋は超ビジネスライクで、浴槽がないどころか床がプールみたいなコンクリート打ちっぱなしだったり冷蔵庫がなかったりするけれど、清潔で明るい雰囲気なうえ、Wi-Fiも使えるので必要十分。キーがなければ客室エリアに入れないのでセキュリティ的にも安心。
アムスは駅から一歩外に出ただけでも「これは!?」と思う胡散臭い雰囲気だったので、しっかりしているところに決めていて安心した。持ち物もバルセロナの時よりもしっかりめに準備をして外に出る。
 

自転車の要塞


ホテル前の自転車の要塞に唖然。ここだけでなく、街中どこに行っても自転車が置いてあった。アムステルダムには何千台、いや何億台の自転車があるのだろう。これが全部使われているのか不思議に思う。世界各地にあるバミューダトライアングル的な自転車の墓場からアムステルダムに送り込まれてきているのかもしれない。
一回全部捨ててしまったほうがいいと思うんだけど、すごくボロボロの、それこそ第二次世界大戦の頃に偵察兵が使っていたような古式ゆかしい自転車に、颯爽と乗り込んでどこかへ駆け抜けていく人もいる。でも一回全部捨てたほうがいいと思う。
 

混沌的交通


午後に到着してあまり時間がないので、無理をせず街をブラブラ歩いて物色しようということにした。
運河めぐりは時間がかかりすぎるのでパスして、おなじく街なかを見て歩ける路面電車に乗ってみる。中央駅前の青い建物で24時間乗り放題チケットを買った(歩いて帰れる範囲しか行かないので、もっと安いのでも良かった)。
路面電車は系統がたくさんあって、どれに乗ればどこに行くのかしっかり確認しなければならない。道路上を網の目のように軌道が走っている。そこを何事もないように歩行者が歩いて行く。警笛を鳴らして人並みをかき分けながら電車は進む。駅前は電車だけでなくバスの停留所もあって、十数台のバスが出たり入ったりしている。まさにカオス!
歩道と歩道の間を路面電車が進んだりするので、当然車は通れない、と思いきや通りにくいだけで、やはり人を避け避け進んでいる。通りにくいのが嫌な多数派の人は自転車を使う。人と人の間をびゅん!と通り抜ける。この街では前後左右に目がついていなければ無事に過ごせない。
 

アムステルダムの真実


路面電車は3両連結の中央に車掌さんがいて、そこから乗り込んで一日乗車券をピっと機械に当てるシステム。車内は混沌な世界とは切り離されて平和で、ちょっとほっとする。中世風の通りをゆっくりと眺めながら目的地へと進む。
と、何か違和感。中世風ということはバルセロナモデルニスモに比べてずっと古いはずなのに、なぜかやたらと新しく見える。そしてなんだか傾いているような建物もある? なんだろう。なにか変だぞ。その疑問は斜めから建物を見た時に解決した。
「書き割りだ!」
そう、アムステルダムの中世風の街並みは、普通のビルにそれっぽい壁を貼り付けて完成していたのだった。ガーン(*´Д`)
そうか、この街は、街全体がひとつのアミューズメントなのか。すげーや。ディズニーランドみたいだ(行ったことないけど)。

(もちろん本物の古い建物もある)
 

猫の博物館


電車を降りて向かった先は「猫の博物館」。民家を改造した展示スペースに、オーナーが世界各国で集めた猫グッズが集められているという、聞くからにこじんまりとした雰囲気で、案の定見つけられずにGoogleMapを使ってようやくたどりついた。
半地下の薄暗い受付を通って中に入ると、思ったよりもお客さんがいて、展示物もそこそこ面白かった。シャ・ノワールのポスターとか、中国の、陶器で作られた猫のおもちゃとか。落書きコーナーにドラえもんの絵を書いてきたけど、向こうの人に通じるだろうか。
 

ファンタジーショップキメラ

Fantasyshop Chimera | the first and most famous fantasy shop in the world
観光都市だけあっておみやげ屋さんは多い。風車やチューリップに、男の子と女の子がキスしている陶器の置物なんかが並んでいて、そうだよな〜、一般的にオランダのイメージってこ〜ゆ〜のだよな〜。絶対サイバーパンクな方じゃないよなあとしみじみする。
何か所か入ったけれど、ファンタジーグッズを売っているお店が面白かった。ファンタジーショップキメラという名前で、店内は森の中のようにディスプレイされ、所狭しとフィギュアやルーンストーンのような魔法のアイテムが並んでいる。結構高価なドラゴンのフィギュアなんかがバンバン売れていて驚いた。むしろヨーロッパが本場だと実感。
二階はアジアンショップだったのだが、店の中にいるのがほとんどアジア人だったのが面白かった(僕らを含めて)。
客「私達北京から来たのよ」
店主「奇遇だね! 僕も北京出身なんだよ!」
とか会話している。地元で買えw
 

大麻博物館

http://hashmuseum.com/sites/default/files/hashmuseum_logo.png
Hash Marihuana & Hemp Museum
ここからはさらにダークサイドオブオランダ。
オランダでは大麻が合法で、コーヒーショップと呼ばれる店の中では吸っても問題無いとのことだった。大麻は1グラム10ユーロ程度で買えるらしい。店内には巻くための紙が備え付けてあるけれど、紙で巻くのは初心者には難しいので、先に近くの店でパイプを買って持って行くといいそうだ。いきなり大麻そのものを吸うときついので、普通のタバコをブレンドするのがベターだとか。大麻はそれほど中毒性が高くなく、他の麻薬のような劇的な効果も無くて、せいぜい体がポカポカしてリラックスしたり、感覚が間延びして面白い程度なんだとか。なるほど。
うつ病の治療に使われている国もあるので、日本でも合法にすればいいのにと思う。オランダの大麻販売は完全に国の統制下にあって、収益は奨学金(返す必要が無い!)や老人ホーム(誰でも入れる!)のために使われている。こういうところがオランダ的合理主義だなあ。嫌いじゃない。
博物館は展示物も少なく、説明も英語だけであんまり面白いものでも無かった。試飲スペースもやってなかったし。
 

飾り窓

大麻と並んでアムステルダムの二大名物のこちらは、まだ時間が早く、何人かしか立っていなかった。でも冷やかしの客はいるらしく、遠くから女性の罵声が聞こえてきたりしてなかなかスリリング。
料金は1回あたり50ユーロ/15分で、家賃が1日100ユーロ以上だとか。2回まではただ働きになるのか・・・。シビアな世界だ。当然税金もがっぽりとられるわけで、楽な商売ではない。日本に来たほうが儲かるんじゃないだろうかと思ったけど、就労ビザを取れないのか。オランダだとそこら辺気を配ってるような気がする。貴重な収入源だし。
 

拷問博物館

Torture Museum Amsterdam | Discover the painful past
大麻も売春もそうだけど、アムステルダムは小金を落とさせるためのトラップが満載で、こういうこじんまり系の博物館もすごく多い。トランジットでちょびっと滞在する人に、適度な刺激とエンターテイメントを提供して稼ごうという魂胆なのだろう。好感が持てる。
ここは拷問の様子が蝋人形でわかりやすく展示してあって、狭いビルを何階も登らなければならないのが大変だけどなかなか楽しい。みんな「とても痛い!」という顔をしている。おしゃべりの罪で首枷をつけられたご婦人方は「痛いね」「そうだね」とおしゃべりをしている。
出てきたところにあるおみやげ屋さんの胡散臭さがとてもいい。ジョークエログッズ満載で、オランダの牧歌的な雰囲気をパロったものが並んでいて、買わなくても楽しい。むしろ買って帰れない。
 

夕飯は何を食べるべき?

夕飯はオランダ料理を、と思って調べたけれど、オランダには特にオランダらしい食べ物というのは無いようだ!(衝撃)
人種のるつぼだけあって、特定のこれという伝統料理がないのかもしれない。スタムポットは自分で作れるし、ワッフルは夕飯ではないだろう。ニシンを食べたかったけど、残念ながら旬はもっと冬のようだ。植民地だったインドネシアの料理がスポットを浴びていたりするけど、雨が降ってきたので探すのを切り上げて駅に近いところにあるステーキハウスに入った。

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確かこのあたり。ステーキを頼んだら「パンも食べるか?」と聞かれてその通りにしたけれど、付け合せが異常に多いので余計だったか。だけどパンとバターは結構美味しかった。肉はまあまあ。オランダ牛とか聞いたこと無いしね。
 
小雨も降ってきたのでホテルに戻ってフロントで、フルーツの盛り合わせと瓶のハイネケンを買って部屋に入った。しかし部屋には栓抜きがない。
仕方なくフロントに出てカウンターの女の子に身振り手振りで「栓を抜くための道具がないのだ」と伝えると、彼女はにっこり笑ってギュッとひねる動作をした。なるほど!見ると栓にネジが付いている。これはよくできている。だったら最初からスクリューキャップにしておけよとも思うが、フロントの女の子がとても可愛かったので良しとする。
 

アムステルダムの感想


アムステルダムを見ただけでオランダを見た気になってはいけないと思ったけれど、このぐちゃまらな雰囲気は結構好きだ。ゴッホ美術館とかハイネケン・エクスペリエンスとか、見るべきものをは何も見なかった。それでも、特に何を見たわけではないけれど、この雰囲気、いかにもな異国感はとても楽しい。万人向けでは決して無いけれど、わざわざ追加料金で一泊した甲斐は確実にあった。
 
ホテルのWi-FiTwitterや日本のニュースを見ているうちに夜は更けていく。インターネットがあると世界のどこに行っても自然体でいられるような気がする。