直木賞は佐々木譲&白石一文W受賞
ぬあ! どっちも読んでるのに感想を書く前に受賞作が決まってしまった!
というわけでまずは感想を。
廃墟に乞う
北海道を舞台にした短篇集とあって、舞台となる街の風景がわかるために余計面白かった。
休職中の刑事が現場に気を使いつつ事件に首を突っ込むところの微妙な駆け引きがリアリティを感じさせて良かった。ひとつの短編が何日間かで終わってしまうので、解決するまで物語がどんどんと回っていく。
以前直木賞の候補作になった「警官の血」も面白かったけど、上下巻で親子三代の物語というだけあって重すぎるというか後半ダレ気味になっていたんだけど、今作は序盤からどんどんと物語が進んでいくので気持ちよかった。
ほかならぬ人
読み始めて「なんだ不倫小説か」と思ったものの、文章のテンポが良くてすいすい読んでいるうちに物語に飲まれてしまった。恋愛ものなので感想を書くのも恥ずかしいんだけど、人が人を愛するのは理屈を超えたところにあって、”まことの愛”みたいなものを追い求めなければならないという、作者のちょっと古めかしい恋愛観がずっしりときた。誰もが愛し合える最適解は存在するのに、妥協してしまうから不幸な関係を築いてしまう。
普通の恋愛ものにはない哲学的な深みが印象に残った一冊でした。
直木賞受賞作としてみると
個人的には佐々木譲は面白かったけど、直木賞というのには小品すぎてるかなと思った。これまでのキャリアを考えれば受賞も当然なんだけど、それだったら「警官の血」の時にあげてやれよ、と思う。まあ、その時は対抗が「私の男」だったので仕方ないんだけど。
白石一文は他の作品も読んでみたい、と思っていたら@asahicomで、
Q普段は哲学的な作品が多い中、今回は恋愛の色が強いが:白石さん「ある程度小説の枠組みを変えていこうと思っている。その前に、小説らしい小説を書いて、みんなが読んで楽しんでくれる作品を書いてみたいと思った」
http://twitter.com/asahicom/status/7745252898
と答えていたのでびっくり。そうか、恋愛小説家が哲学っぽい作品を書いたのではなく、哲学的な作品を書く人が恋愛ものを書いたのか。納得。
(はてな年間100冊読書クラブ 236/229)