勝間和代氏の言ってることが全然分からない

最近デフレ脱却がネットで熱い話題になっていて、自分も経済学をかじった身であるので目を通してみたんだけど、勝間和代氏を代表とするリフレ派のみなさんの言っていることが全然分からない。
リフレ派の人の主張はこういうことらしい。

  1. デフレは非常に悪い
  2. デフレを解消するためにはお金の価値を下げる必要がある
  3. 国債を日銀が買い取って市中にお金を溢れさせる
  4. そうすると相対的にものの値段が上がってインフレになる
  5. 急激なインフレは悪いけど、ある程度のインフレは良いインフレ=リフレ

デフレが悪いのは分かる。でもその解決方法が国債の引受って・・・。この前までゼロ金利政策やってたじゃん。7年間も。それでほとんど効果が無かったのに何を言っているんだろうと感じる。
 

デフレってなにさ

デフレとは簡単に言えば、みんなが
「お金>モノ」
と思っている状態。去年まで100円だったモノが今年は80円になった。では、来年まで待てば60円になるかもしれないから今買わないでお金をとっておこう、と考えている。みんなが買わないと売り手は困るからさらに値段が下がる。
こうなると値段が年々下がっていっても買い手の人は(まだまだ下がるはず)と思い続けて全然モノが売れなくなる。これがデフレスパイラル
 

お金が溢れるとデフレが解消する?

勝間和代氏が言いたいことは多分、「今はお金>モノだけど、どんどんお金を発行してお金の価値を薄めていけばいつかモノ>お金になる」ということなんだと思う。
 
だけどこの前の量的緩和の時は、みんなが「お金>モノ」だと思っているので「金利が0だよー、どんどん借りていいよー」って日銀が言っても誰も借りなかった。それは、借りて買うほど魅力があるものが無かったから。その逆に、好景気のときはどんなに金利が高くてもどんどん借りてモノを買っていたわけで。
 
そこらへんの説明がanti_deflation @ ウィキ - 反デフレ政策FAQ中のFAQでは詳しくない。

Q もう買いたいものが無いのでは?
1. なぜ日本でだけ? 単に日本だけデフレという失政のせいで需要が不足しているだけでしょう。

2. PCやケータイを買い替える時、前より品質や性能やデザインが向上した新製品と向上してない旧製品が同じ値段で売っていたと仮定して、どちらも同じように売れるならあるいは「もう需要が飽和した」すなわち「需要曲線が垂直になった」と言ってもよいかもしれませんね。

1は日本の特殊性を理解してない。たとえば道路にしても、日本ほど道の量が多くなおかつとんでもないド田舎の農道であってもきれいに舗装されている国は無い*1
これまで日本が経済成長を続けてきたのはとにかく必死で国土を整備してきたから。山を崩して谷を埋め、やれ橋をかけろやれトンネルを掘れとやってきた。そのおかげで車は売れ、そのおかげで郊外に家が建ち、そうやって稼いできた結果、もはや開発する余地が無くなってしまっているのが今の日本だ。
よその国にはまだ開発する余地があるから成長が続いていると考えた方がずっと自然。日本以外の国も日本のように戦後ものすご〜く経済成長したんですか?
 
2は全然筋違い。「古い機種」と「新しい機種」が売っていてどっちを買うかの話ではなく、「いま持ってる古い携帯」で十分だと思っているから買い換えないだけ。企業が設備投資をしない=新しいモノを買わないのは、古いけど今持っているもので十分使えるからであり、もっと待てば値下がりすると思っているからということが分かってない。
 

根本的な疑問

というわけで勝間和代氏が言う「国債を買い取ってマネタリーベースを増やせばデフレが解消する」は、まったく説得力がないと思う。お金の量が増えても買うべきものが無いのは同じだから。
社債を買ってもらったからいっぱい従業員を雇って今の3倍の商品を作ろう! → 在庫の山
となっては意味がない。
 
自分が一番恐いのは円をジャブジャブ発行した挙げ句円安になって、国内の資産を軒並み外国に買いたたかれることなんだよな。
そこらへんリフレ派の人たちは、ハイパーインフレを日本国内だけのものに考えているような気がする。国内でリンゴが1個千円になることは無いかもしれないけど、1ドルが1000円になったら同じようなことなんだけどな。
 

じゃあどうするの?

ま、解決法を知ってたら今頃ノーベル経済学賞とかもらってるところなので偉そうなことは言えないけど、やはり「需給ベースを調整する」のような言葉遊びでは経済は動かないと思う。
 
個人的にはたとえば、CO2を25%削減というのはそれほど悪くない話だと思っていた。地球温暖化的じゃなく経済的に。そのためにたくさんお金が動けば経済が活性化するし、それでデフレ脱出には失敗したとしてもとりあえず省エネにはなる。
全部の小中学校にプールを作るとかあらゆる電信柱を無くすとか、経済を活発化するためにとにかく何らかの役に立ちそうなものに公共投資していけば、空港やら青函トンネルを作るよりは後世のためになると思ってきたけど、これらには夢が無いんだよね。
その点C02削減にはちょっと夢があるというか、もしかしたら「日本列島省エネ論」って感じで国民全体が省エネまっしぐらに進む可能性もあって悪くなかったんだけど、今のところちょっと失敗しているようで残念。
 
どちらにしても

  1. お金の量が増えても買うべきものが無い(今あるもので十分間に合っている)
  2. 円の価値が下がって海外投資家に買いたたかれる

の2点の疑問が解決しない以上「リフレ派」の話は信用できないな〜というのが今の感想です。誤解があったら教えてください。
 

*1:http://www.road.or.jp/dl/pdf/stat_2005.pdfを見ると諸外国の舗装率が100%となっているけどこれは統計上の嘘。イギリスもスペインもラリーカーが走れる未舗装路が何100kmもあるけど、それを”道路”として算入してないだけ