追想五断章/米澤穂信


これまで米澤穂信というと『春季限定いちごタルト事件』のシリーズしか読んだことがなかったので、ラノベではない”普通の”小説の方にも手を出してみた。
作風の違いが凄い。限定シリーズは軽やかだけど骨太なミステリ、というノリだったけど、こちらは全編モノクロという印象。作品の主題も物語の真相も登場人物の行く末にも明るいものというのは何一つ無く、言いしれない悲しみだけを残して物語は終わってしまう。明確に登場人物たちの心象が語られることは無いのだが、読み終わるときには彼らの思い、もしくは決断のようなものが浮かび上がってくるような気持ちになった。
 
古典的かつ本格派で、期待以上に面白かった。これは続けて読もう。
はてな年間100冊読書クラブ 223/229)