六月の夜と昼のあわいに

幻想的すぎてついていけない部分もあったけど、短編集だから自分好みのものも入っていて安心。

一番良かったのは『コンパートメントにて』。二組の男女の、生と死が交錯する様の静けさが良い。全体的に文章のリズムが重視されていて読んでいて気持ちが良かった。
『Y字路の事件』も恩田陸らしい作品で良かった。日常が幻想に少しずつ浸食されていくような雰囲気と、ちょっととぼけたような、どこか他人事のような語り口が面白い。
恩田陸の良さは日常にほんの少し、エッセンス程度に幻想を加えたところにあると思う。そういう意味では『酒肆
ローレライ』がギリギリ、『夜を遡る』『窯変・田久保順子』あたりはちょっと加えすぎ、という気がする。特に後半2つは恩田陸ではなく、恒川光太郎あたりが書きそうだし、むしろそっちを読んでみたいのだが。
 
はてな年間100冊読書クラブ 213/229)