こじんまり?
こまけえことは気にすんな!
謎が解けると共に明かされる恐怖。人間の狂気、絶望に追い詰められた末に見いだした逃避にも近い狂気がありありと描き出されている。
ミステリというよりホラーに近いが、元々両方とも似通ったものだ。ただこの本の場合、ホラーの要素を単なる調味料としてではなく、ミステリの、謎の深い部分としっかりと結合されている点が良くできていると思った。
短編集という体裁もあってどの作品も小気味良く、ピリッとした切れ味をもっているのも自分の好みにあっている。前作の『カラスの親指』は後半のラノベ的展開に非常にがっかりした覚えがあるので(だいぶ楽 - 鵜の目鷹の目)期待せずに読み始めたが、予想に反して相当面白かった。
直木賞の選評では、
道尾秀介さんの「鬼の跫音(あしおと)」は「全員が才能を認めるが、ホラーとしては楽な書き方をしている。小ぢんまりとしたところで納得してほしくない」と語った。
と酷評らしいが、こじんまりでこんなに面白いならいいじゃねえかと思うのだった。
(はてな年間100冊読書クラブ 204/229)