後味がいい
電車通勤のおかげで人間らしい生活ができる。朝夕の通勤でとりあえず本は読めるから。
アサッテの人
行方不明になった叔父のことを小説に書いてみた、という私小説ふうな構成が徐々に効いてくる。あくまで伝聞でしか伝わらない”アサッテ”な叔父の実像は最後までモヤモヤとしたままで終わってしまった。そういうところがむしろ、人間の実像というか、自分が生きていて、自分の内面ではいろいろ思うところがあったとしてもそれが他人に伝わるのは畢竟この程度なのかもしれないという諦めのようなものが感じられた。
全体的に良かったんだけど、叔父が”アサッテ”に行ってしまった理由は結局のところ現実とアサッテをつなぎ止める鎖であった奥さんの死である、と解釈してしまっていいのだろうか。多分それでいいんだろうけど、そんな簡単な理由で片づけてしまっていいのかという遠慮もあって、解釈が難しい。こういうところが芥川賞なんだなと勝手に納得することにした。
(はてな年間100冊読書クラブ 199/229)