怖い本、三連発

怖い本が続くなぁ。
 

秋の牢獄

秋の牢獄

おなじみの作風、日常のすぐ裏に潜んでいる異世界が恐ろしくも心地いい。さっと読めながらも心の中に何かを残していくような、そんな読後感を覚えました。
 
やはり短編集はいいですね。この順番だったからより楽しめる、という工夫が隠されています。
タイトルともなっている『秋の牢獄』は、えっ、今更こんなモチーフですか、と思うようなベタな出だしから始まって、意表のつくラストへそっと落ち着くあたりが素晴らしい。このあたりで自分のうちに、恒川的空気を受け入れる体勢ができてしまっている。
続く『神家没落』は、『風の古道』に通じる裏世界もので、いかにも恒川作品らしいと感じました。
しかし自分が一番面白いと思ったのは、最後の『幻は夜に成長する』でした。この作品を読ませるためにこの本があったのだな、と思わせる一編です。主人公の無力感、自分が無力であることを認識できないくらいの無力なさまが胸を打ちました。そこからの幻を成長させていくさまが圧巻です。
 
不条理だけど、従わざるを得ない絶対的なルールが存在するところが、恒川作品の怖さの原点なのだろうか、と思わされる一作でした。
 
 
95/100
 
 
隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)

 
怖い! ひどい! 鬼畜! の三拍子揃ったヒド本です(笑)
なにが一番ひどいって、一番良識人であるところの主人公も、その他の鬼畜キャラと変わらないぐらい悪人なこと。テメー最後だけいい格好してんじゃねぇよ、って感じで鬱になれます。最初はもっと『IT』的な展開になるかなと思わせるようなさわやかな出だしだったので、そのブチ壊し具合に感銘を受けました。
 
好き、の反対は嫌いじゃなくて無関心。というのがよく分かります。自分に被害が及ばない範囲でしか手助けできない、しかもそれが10歳かそこらの少年というところが絶望感を上乗せしているのではないかと感じました。
 
 
96/100
 
 
三冊目は岸田今日子の『もうひとりのわたし』
これは絶版本なのでリンクは無し。抑圧された性、開放された性、そのふたつの"わたし"の間で揺れる、実存する"私"の物語。鏡写しのように正反対の2人がいて、その片方が失われたとき、という結末が、きわめて女性的で恐ろしくも面白い。
ムーミンの声の女優、という印象しかなかったので、こんな佳作を書く人だとは思いもよりませんでした。女優さんと言うのはもっと、ほんにゃらか〜としたイメージがあったのですが(失礼)。演者であり創作者であるというのは、一体どのような心理状況なんでしょうか。非常に気になります。
 
 
97/100
 
100冊まで残り3冊! 手元にはもういっぱい本が控えています。どこから読もう。わくわく。