読書の秋

土日で三冊も読んでしまった。さすが秋。

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

本人のウェブサイトから作品を知った人第二段*1。トップ絵を羽海野チカが書いていて、気になって読んでいるうちに作家だと分かった。http://blog.mf-davinci.com/mori_log/index.phpも相当面白いので、これを機会にデビュー作から読んでみたのだった。
全体を通じて物語の理系さが良い。SFではなく、理系。微妙なニュアンスの違いなのだが、論理的に合っているのではなく、数学的に合っていることを重視しているといえば伝わるだろうか。荒唐無稽さを排除し、実現可能性を注意深く掘り下げていく作者の姿勢に感動を覚えた。
自分はミステリといえば海外作品しか読んでこなかったし、それもどちらかというとハードボイルドもの*2か、コメディ探偵もの*3を好んで読んできたが、日本の本格ミステリも結構やるものだ、とこの本を読んで思った。食わず嫌いをやめてこれからは読むようにしよう
 
墨攻 (新潮文庫)

墨攻 (新潮文庫)

コミック版は読了済み。革離が城を離れてから随分話が迷走したな、と思っていたら、原作は落城までで終わっていたのだった。これで納得。久保田千太郎の迫力ある画風も良かったが、やはり酒見賢一の淡々とした語り口と、張り詰めた糸をばっさりと切り落とすような結末にはかなわない。脳内イメージの勝ち。
自分は一度作者に騙されたことがあって、読みながら不安だった。『雲のように風のように [DVD]』に感動してた後に、それが完全フィクション、架空の王朝だったと知ってショックを受けたことがあったので、墨子も架空のことだったらどうしようかと恐れおののいていたのだ。読後に調べたら実在した思想家だったらしいので安心。
 
作家の犬 (コロナ・ブックス)

作家の犬 (コロナ・ブックス)

大作家が愛犬の横で目を細めてるのがいい、という評判を聞いて読んでみたが確かにいい。川端康成なんて気難しい顔の印象しかなかったが、犬を抱いて本当に人の良さそうな顔をしているのを見ると心が温まる。犬に癒されている人を見て癒される、というのも迂遠な話ではあるが。
おすすめは黒澤明。世界のクロサワは犬煩悩だったのだなあ。
 
63/100