温故知新といえば

海外SFだ。古いどころかむしろ現在でもバリバリ通用するものが多くて驚く。

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫SF)

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫SF)

この作品もその一つ。この前読んだゴーレム 100 (未来の文学)アルフレッド・ベスターの斬新で飛躍した発想にすっかり魅せられたのだが、今作品も驚きの連続だった。何十作品分にもなろうかというアイデアがぎっしり盛り込まれたストーリーは、1950年代に書かれた(!)にも関わらず、全て現在でも輝きを失っていない、どころか、この作品に大きな影響を受けた日本の大作家がいて何重にも驚いた。
その大作家とは石ノ森章太郎。怒りで主人公の顔に文様が浮き上がるのは仮面ライダー、加速装置はサイボーグ009である。これがどこかの999氏ならば顔を真っ赤にして怒鳴り込むことだろうが、この場合はむしろベスターの昇華し切れなかったアイデアを石ノ森氏が完成させた、と見るのが正しいだろう。
 
読後に思ったのは作者に悪いが自分の脳のイメージ力の凄さだった。これが映画だったら古さも感じただろうしテクノロジーによる表現力不足もあったろう。小説というジャンルがある意味卑怯なのは、いくらでも足りないものを脳内補完できることだ。それだけイメージを沸き起こさせる力が作家の腕の見せ所なのだが、これだけ技術が進歩してもマンガが普及しても小説が今でも(しかも若年層に)読まれているのは、どんなメディアよりも頭の中の映像の方が優れている証拠なのだろう。
 
60/100