現代版ロミオとジュリエット

当人たちは大変なんだけど、傍から見たら微笑ましいのが現代風。

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

そういういみじゃあんまし恩田陸っぽくなかった。ちょっと消化不良。ノスタルジーの魔術師という異名にふさわしい感じではあったけど、どうも物足りない。正直『図書館の海』の中の短編、『ピクニックの準備』で終わっていると感じました。でも一番物足りないのはなにかというと、多分ヒロインがあまりに普通の女の子だったことだと思います。
小夜子にしろ関根夏にしろ、その魅力の源が何かといえば、触れるのが躊躇われるくらい気高いところにあると思うのですよ。美人だっていうのはただそう書けば事足りることだけど、仕草や言葉の端々に現れる知性や品のよさなんかは総簡単には表現できないわけで。そういう幻想的でありつつ現実的な"女神"を描写するのが素晴らしいと思っていましたんですが、彼女らに比べたら"ちょっとだけ特別な"フツーの女の子を描いた今作は少し物足りないし、登場人物の魅力に比べるとちょっと冗長すぎるかな、という気もしなくは無いです。次はもっとガリガリしたのを読もう。
 
40/100
 
しかし最近プログラムを考えるのが楽しくて全然本が読めてないな〜。このペースなら100冊は大丈夫だと思うけど・・・、読みたい本はいっぱいあるのに読む時間を取れないのはつらいです。
 
そういえば本屋大賞2007の本をほとんど読み終わりました*1
自分ランキングはこんな感じです。

順位 本屋大賞 自分ランキング
1位 一瞬の風になれ 終末のフール
2位 夜は短し歩けよ乙女 鴨川ホルモー
3位 風が強く吹いている 夜は短し歩けよ乙女
4位 終末のフール 風が強く吹いている
5位 図書館戦争 失われた町
6位 鴨川ホルモー 図書館戦争
7位 ミーナの行進 ミーナの行進
8位 陰日向に咲く 一瞬の風になれ
9位 失われた町
10位 名もなき毒

迷ったけどこの中では『終末のフール』が1位。伊坂幸太郎を知るきっかけになっただけではなく、この本で読書の面白さを再発見させられたから。何度読んでもどの短編も静かに心に染み入ってきます。
2位と3位も猛烈に悩むけど、僅差で万城目学に軍配を上げたい。物語自体は荒削りだったけど、情景描写がたまらなく良かった。祇園祭や神社での儀式などは京都の街並みが目に浮かぶようで、しかもそれだけじゃなくてそこに生きている登場人物たちの息遣いまでが聞こえてくるかのような臨場感もあって、そういう点ではアクの強い登場人物がはちゃめちゃを繰り返す『夜は短し歩けよ乙女』よりも一歩先をいっているように感じられました。
三浦しをんはBLだから4位(笑)って訳じゃないけど、あれだけの登場人物を個性豊かに、しかも1冊の本に纏め上げる実力も素晴らしかったです。キャラクターへの作者からの愛を感じますねwww 陸上なんて全然好きじゃないけど、そんな自分でも投影できるようにしているのは芸が細かい。最後の方なんて読み終えるのがもったいなくなって、ページをゆっくりめくってたくらい感情移入できました。
ネット上で賛否両論が激しい『失われた町』は5位。個人的にはすごく好き。町の消失という現象だけにとどまらない世界観が素晴らしかった。澪引き、西域、居留地、独特の言葉の使い方は椎名誠のSFに近いものがあるけれど、底辺を流れるしっとりとした悲しみの空気は三崎亜記独特のものだと思います。受け入れなければならない悲しさの表現は、女性作家のほうが一枚上手だと感じる今日この頃です。
 
6位は図書館戦争。面白いけど完全に相手が悪い。☆4つ半。
7位にミーナの更新。☆3つ。今度『博士の愛した数式』を読もう。
8位一瞬の風になれ。☆2つ。長い。これが1位とは。でも『夜のピクニック』を読んだ時も冗長だと思ったし、意外と本屋大賞を取る本はこういう傾向にあるのかも*2
 
次の目標は直木賞ノミネート作品読破。がんばろ〜!

*1:劇団ひとり宮部みゆきは読まない

*2:夜ピクは2005年の大賞