時代物は雰囲気が大事

 謎解きとか筋道が弱くても、江戸の市井に住む人の呼吸が感じられることが大事だと思います。そういう意味でこの本は合格! って直木賞候補作にいう言葉じゃないですが。

まんまこと

まんまこと

 文章には独特のクセがあって時々読みにくかったです。主要な登場人物に町名主の子どもが2人出てくるせいもあって、最初のうちはどっちが主人公なのか混乱しながら読み進めました。
 お由有と麻之助の関係はちょっとモヤモヤしたけどラストがいい感じだったのでこれはこれでありなのかな、と。自分に置き換えて考えると難しすぎる問題だし。中島みゆきの『アンテナの町』の歌詞がぐるぐると頭を巡ります。

 はるかに流れる血縁の流れ
 似てない子どもを愛してください

 だっけ。そうなった時に麻之助は今のように幸太を可愛がれただろうか、とか考えるとやはり作者が正解なんだと思います。う〜ん、意外に深い。
 巷説百物語を読んでから時代物も良いかなと思い始めています。次は同じ作者の"しゃばけ"でも読んでみようかな。
 
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