気持ちがすっきりする本

 「努力して学ばないようにしている」というキーワードには、さすが慧眼の持ち主だと感服しました。

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

 自ら努力し、自ら選択し、自己の責任において社会の低層へと沈み込んでいく若者というイメージには非常に共感できました。自分のいた田舎の中学校ではそんな"努力して努力を拒む"ような生徒が多かったので、別に最近の話ではないのだろうと思います。昔からそういう流れがあって、この時代になって無視できる人数では無くなったということなのだと思います。
 学生時代家庭教師をしていて、尋常じゃなく物覚えの悪い子がいました。中学2年にしてアルファベットが全然書けないという有様だったのですが、とにかく授業中はやることなすこと全て怠慢で、字を書かせればこれでもかというほどゆっくりと、ミミズがうねったようなのを書くのでした。当時はそれが不思議でならなかったのが、この本を読んで目からウロコがおちる思いをしました。この子は、勉強という嫌なことに対し、10の努力に対して100の苦痛を背負うことで、自分はこれほど苦しんで努力したんだとう達成感を得ていたのでしょう。
 
 自分で選んで下流を目指している若者を、どのようにして上向きに努力をさせるのかというのがこの本の骨子なのですが、そこにはいろいろ突っ込みたい部分もあります。ただ、引っかかりを覚えさせるも含めて内田先生の技術ですので細かい話は無しにします。
 自分の気持ちと合いすぎるので読むのを控えていたのですが、たまに読むとやはりいいですね。気持ちの澱がすっかりと取れた感じになれました。
 
14/100