思い通りに行かないもどかしさ

 タイトルを見て椎名誠ねじのかいてん』へのオマージュかなと思ったのですが、全然違いました(笑)

ねじの回転―FEBRUARY MOMENT

ねじの回転―FEBRUARY MOMENT

 安易に架空戦記ものにもっていかない点が良かった。とはいえ後半スピードダウンしてからは「変わってしまったほうが良かったかも」と思いましたが。一度ずれ始めたシナリオが、どんどん元の歴史から乖離していく取り返しのつかなさが、やはりこの作品の一番のキモだったんだのだと思います。世界がむちゃくちゃになるお膳立てはいっぱい揃っているにもかかわらず事態を収束させようとしたところに無理が出た気がします。
 SFに付き物の小物も充実しているのですが、多少説明不足だったり蛇足だったりするものもあって消化不足。特にHIDSは必然性を感じられないままに殺し技として使われていたのに不満を感じます。
 
 それでもかなり"読ませる"作品だったことは事実。割と厚めだったのに一気に読了してしまいました。説明不足に感じたのも、今のSFだとよくあることなのかもしれないし。『失われた町』にしろ『終末のフール』にしろそうだった。科学的な説得力が無くてもSFは書けるのだが、文章力だけで無理を押していかないといけないせいで綻びがでやすいということなのかもしれません。
 
13/100