平成19年度税制改革大綱について

 いまさらながら読んでみました。日本に住んでいる以上こういうのは読んでおいた方がいいかも。日本銀行内閣府はアンテナに追加する価値ありだと思います。
 今回のでかなり問題だと思ったのは、不動産の償却期限の上限(30年)が撤廃されることです。
 どういうかというと、評価額の最低ラインがなくなることでまず、固定資産税の金額が減ります。市町村の税収の約4割は固定資産税。上限撤廃によって固定資産税は5%減少すると見込まれています。その埋め合わせはどうするのか。固定資産税が減少することは地方を殺すことと同義だと思うのですが。
 これを「やったー!税金減ってラッキー!」と思ったら夕張市民と同じ目にあいますよ。痛い目にあってから行政を訴えるとか、意味ないですから。
 

中心部の空洞化が進む

 でももっと大きい問題がこれだと考えます。償却期限が無くなることによって、ただでさえ過疎化が激しい地方都市の中心部は、ほとんどスラム化するのではないかと思うのです。
 なぜ今地方の空洞化が進んでいるかというと、20年30年前に立てられた雑居ビルが残っているからです。テナントも何軒かだけしか残っていない廃ビル寸前の建物。そういう建物は、こんな理由で残っています。
 

  1. それらのビルは消防法・建築基準法に適合していない。ソープランドと同様、既得権益によって現在営業しているものについては特例で認められているが、一度でもシャッターを下してしまったら壊す以外に使い道がない。だから抜本的な改修を行うことができない。
  2. 壊すことを考えて作ってない&経営していないから、建てなおしのための費用も当然ない。使いきっている。
  3. 現在でも赤字にならないなら経営していくことができるが、すべて償却してしまうことが可能になると、”赤字であっても”事実上営業を続けていくことができる。
  4. 中心部は雑居ビルと、虫食いのように点々と駐車場がのこるだけになる。権利関係はばらばらで、広い土地も確保できず、新規参入が拒まれる。
  5. 魅力ゼロの過疎化&スラム化した中心部の出来上がり

 
 発想が全然逆なのだ。ヘルシングの言葉を借りるならば
「倍々ゲームで人間なんぞすぐ絶滅して共倒れだぞ 先の見えんガキめ」
 といったこと。既得権益にしがみついてるけている現状をなんとかしないと、この状況は打破できないのに、それをもっと強化してどうなるのというのだろうか。二重の意味で地方を殺すことになるんじゃないのかと僕は危惧している。
 
 自動車については環境の影響などを言い訳に、13年以上経過したものは増税される。不動産も同様にしなければならないと僕は考える。現実問題として古い建物には(ビル・住居問わず)集客力がない。だからそれを効果的に駆逐していく方策を考えなければならないのだ。
 これをただ単に「貧乏には住むなと言うのか」という矮小なところに集約されてしまうと意味がないんだけど、要は居住地域と商業地域をしっかり分けなければならないということを言いたい。商業地域に商業地域としての価値を持たせるのに、古ぼけた雑居ビルが乱立している状態では無理なんです。実際。それを分かってなくて郊外に大型店舗ができるのを規制したりとか、もうアホかと。本気で将来の地域を考えてないからそういうことができるんだと思う。
 外資(または東京の資本)が入ってくるのがイヤだと言うのであれば、自分たちが儲けれるようなスキームを作った上で誘致すると言う頭を使ってほしい。よそから来ていただくのに山の上のヘンピな場所を用意してそこに押し固めてみたり、それで全然企業がやってこないとか、何を言ってるのか意味が分かりません。
 
 というわけで都市の中心部の活性のためには、

  1. 固定資産税を大幅に上げる
  2. 新規建設分に関しては当初5年にわたってほぼ0にする
  3. 住宅用地の軽減(6分の1)を撤廃。商業用地については現行の70%から現行以下に下げる
  4. 競売中の建物を地方自治体が落札し、更地にする運動を行う

 ということが必要だと思います。メリハリが大事。
 
 地方が死んでも日本政府が財政破綻しても、法人さえ生き残っていればこの"日本という国"が死ぬことはない、多分そういう信念のもとで政治は動いているんだろうと最近感じます。確かにそれも正論で、それが上手く行くならば国債がデフォルトされようが預金が封鎖されようがなんでもないんですが、どうも今のままだと三方一両損で丸く収めようとしているところを誰かが全部かすめ取っていくような、そんな印象をうけるのです。なんか嫌な感じ。
 ま、決定権のない人間が何を行ったところで無意味なんですが、「誰かがやりたいと思ったこと」をやらされるだけの人間になるのはごめんなので、たまにこういう無駄な理論武装をします。いつか「自分がやりたいと思ったこと」を他人にやらせれるようになるかもしれないしね。いつの日か。