プロ棋士はどう考えているか 〜後編〜
写真はW-ZERO3のメモの様子。画面に書き込むと無限に伸びていくので便利です。
羽生三冠の講演の様子は最終回です。今日は最後の質問コーナーについてまとめました。
谷川世代、羽生世代、そして渡辺世代と、ちょうど10年ごとに天才棋士が登場していることをどう思うか
「高速道路と出口渋滞」というお話があったが非常に情報工学的な考え方。それを打破するためにはどうしたらよいか。
- そこに"量から質への転換"がキーになると思う。
- 情報を貯めていったあとでそれが別のものに変わるのではないだろうか。大山さんのように。
- 100%転換があると確信があるわけではないけれどそのことをずっと考えている。
長い棋戦の間、モチベーションをどのように維持しているか
- よくキレます(笑)
- 一番難しいこと。考えるのはむしろ楽。続けるのはムリ。
- キレたい時は他人に迷惑をかけないならキレていいと思いますよ(笑)
将棋を指しているときいろんな視点から見ると言うことだったがどういうことか
- 例えば森内さんと指す時に、森内さんならこれは、というようには考えない。
- 三人の羽生が居る。先手羽生、後手羽生、観戦羽生。
- 自分の手について「森内さんならどう指すかな」と考えることはある。クセや棋風は知り尽くしているので。
名人戦問題についてどう思うか
場内大爆笑。聞いちゃったよwww
- 26日の総会で決まりますので・・・。
- 30年前にも似たようなことがあった。なぜ教訓に出来ないのか(怒)
- 自分にもどうしようもない。何とかしたいとは思うが。
升田幸三の大ファンとのことだが
- 昭和30年代から今の感覚を持っていた人。既成概念に捉われないすごい手が多い。
- 現代に蘇っても一流だろう。将棋の大天才。最も尊敬する棋士。
- 豪放磊落な人柄ばかりが注目されているのは不本意。
最近は棋戦の持ち時間が減っているが影響は
- 対局が多いからしょうがない。月に何回も朝8時から夜12時まで指すのはつらい。
- 減っても影響は無いと思う。増やしたから将棋の質が上がる、というものではない。
- 体力を争ってもしょうがない(笑)
7冠から3冠に減ったが
- 頑張ります(笑)
「認識力の限界」というお話があったがそれは「努力の限界」ということか
- 今まで1000局以上の将棋を指してきたが、全てを覚えているわけではない。
- ただし断片的には、「こういう手筋があったよね」と言われると覚えている。
- 忘れることは悪いことではない。忘れるから覚えられる。いらないから忘れる。
- 若いうちは記憶力や反射神経が優れている。年を取ると衰えるが、盤面を見ただけで判断する大山さんのような人がいる。
- 10年前に勉強したことはもう無意味なことだけど、その結果としてひらめきが生まれているのだと思う。
羽生さんはどんな小学生でしたか
- 普通の小学生でしたよ(笑)
- 八王子は当時イナカだった。走り回って遊んでいた。
- 平日は普通に塾に言ったり遊んだり。週末だけは道場に行っていた。そこだけが違うところ。
ここで時間が8時5分頃となり、講演が終わりました。場内割れんばかりの拍手に送られて羽生三冠が退場。たった一時間半でしたが話の内容が濃くて充実していました。
「10手先も読めない」という発言には衝撃&納得。お互いに将棋を知り尽くしているから、常に手探りで戦うことになる。将棋倶楽部24で13級の私には言えないセリフですw
結局はカンということでしたが、たくさん知識を身につけた結果であるということも言っていました。まずは膨大な努力があって、膨大な知識を得て、それがひらめきに変わっていく。変わるかどうかは人によるってことなのかな。でも努力しないとそこまではたどり着けない。
あと羽生善治といえども今の若い棋士たちのことはうらやましいんですね。「環境がいい」と何度も繰り返していました。でもそのねたましさをこうやって表明できるのはさすが。自分も"新世代"と言われてきた分、若い人のことを認めることがちゃんとできるんだろうな。
一番印象に残ったのは「質から量への転換」というお話でした。カタストロフ理論?複雑系っぽいです。未来大の学生はそこら辺に気づいたかしらん。