丸一日電気がないだけで本当に大変だった

北海道地震で直接の被害はなかったものの、停電で大変な目にあったのでメモ。たった丸一日程度でも本当に大変だった。

9月6日 午前3時

突然鳴り響いた緊急地震速報のアラームに起こされる。目覚めてまずはメガネをかけて、立ち上がろうとしてもまだ寝ぼけてうまく体が動かず、「どうせ遠くてたいしたことないだろう」などと思いながらベッドに腰掛けたあたりで大きな揺れがやってきた。

かなり強い縦揺れがやってきて、続いて大きな横揺れがぐらぐらと長く続いて、水槽の水がビシャビシャと床に溢れた。水槽は重さがあるのでそう簡単に台から落ちたりしないけれど、上部を蓋でぴったりふさぐようにしないと地震のときに大変なことがわかった。外掛けや上部ろ過は工夫しないといけない。

停電してしまったのでスマホNHK災害情報のアプリでテレビを流しつつ床を拭いて、その間に「断水するかもしれないから風呂に水をためておかないと」と思い立った。水道は無事だったので水をためはじめたら、我々が慌てているのに合わせてテンションが高まった猫が風呂に飛び込んでびしょ濡れになった猫が走り回って水浸しになったりもした。猫め……。

それから冷水で頭を洗って、ヒゲを剃って作業着に着替えたところで案の定、職場から呼び出しのLINEが入ったので、妻にまだ暗いうちにコンビニで水と食料なんかを買うよう頼んで家を出た。

出かけるときにモバイルバッテリーを持っていったのが本当に生命線になった。これがなければピンチは乗り切れなかっただろう。

札幌に旅行に行ったときにアダプタを忘れて、ACアダプタ兼モバイルバッテリーを買ったのが役に立った。もっと容量が多いほうが良かったんだろうけど、いままで何回か買ったモバイルバッテリーはすぐに壊れて使えなくなっていたので、壊れても惜しくない安物のほうが精神衛生上良い。

9月6日 午前5時

夜明け間もない街は信号も街灯もすべてが消えた死の町のようになっていたけれど、意外とすれ違う車の数は多く、そして信号がなくても(ないおかげで)譲り合って走行しているのがちょっとおもしろかった。マナーが悪いことに定評がある函館のドライバーに、始めて譲り合いの精神が芽生えた瞬間だったかもしれない(復電とともにそれは枯れ果てたけれど)。

職場に到着したものの、非常用電源の灯りしかなくパソコンも使えないのでどうしようもない感が強かった。とりあえず緊急招集がかかっていない他の部局の倉庫に勝手に忍び込んでラジオやら延長コードなどを盗み出したりした。

困ったのが外との連絡手段がないことで、固定電話は電源がなければ動かないし、携帯電話もソフトバンクは全然使えない状態だった。

auソフトバンクがやられたようだな…」
ドコモ「フフフ、ヤツは三大キャリアの中でも最弱…」

災害用のPHSも圏外になってしまって、そのまま窓から投げ捨ててやろうかと思った。再び倉庫を漁っていたら停電対応の電話機を何台か見つけたので、とりあえず代表電話をそれに置き換えた。

こっち側で受ける手段があっても相手側にかける手段がなければどうしようもないので、電話が鳴らない状況はそのまま。ただ、携帯電話同士で通話するよりも、携帯から固定電話にかけたほうが接続が強かったので、結果色々と捗った。

9月6日 午前9時

やることがなくなってきたのでツイッターで情報収集。経産省が「数時間以内に復旧のメドを発表するよう北電に指示」というニュースを見て「数時間以内に復旧するってよ」と判断する人が多くて驚いた。日本語……。

断水デマは結構多くて「水道局の知り合いから聞いた。函館で断水が起こる!」と断言していた地元のものかきがいたりした。まあ、配水池だってポンプで水を上げているわけだから、非常用電源の重油が無くなったら止まるだろうし、水を貯めておいた方がいいのは確かだからまあいいんだけど、居もしない「水道局の知り合い」をでっち上げるのはどうかね。人として。

それにしても、頼みの綱の北電のホームページが504だったのには参った。なんとかならんのか。

あと、紙巻きでなくてプルームテックにしてしまうと停電のときに軽く困ることに気がついた。まあ、モバイルバッテリーで充電できるからなんとかなるんだけど。

9月6日 午後12時

机の前でぼんやりしたりしているうちに昼になり、近くのファミマまで買い出しに行くと意外と商品は数多く残っており、とりあえずどん兵衛の鴨出汁そばを買って水でふやかして食べた。20分も浸すといい感じにふやけるし、蕎麦ならまあ常温でも食えないことはないのでお湯がないときにオススメ。

食べ終わった頃に出動命令が出たので、おやつとペットボトルを持って現場に移動。

自家発電機を動かしていると周りの住民が次々にやってきて「携帯電話を充電させてくれませんか」と頼んでくるんだけど、電気を使いすぎると燃料の消費が増えるし、精密機械を壊してしまうかもしれないし、続々とやってきてきりがないので断るしかなかった。だけど自分の携帯は充電しているので、電工ドラムをダンボールで隠したりもした。ごめんね。非常時なので。

うっかりすると忘れてしまうんだけどここは観光地なので、日本人のみならず海外からの旅行者もたくさん来ており、欧米の人相手にはカタコトどころか英単語をひたすら並べて対処できるにしても、台湾人に対してはそれも難しかったりするので、自分の中国語検定準4級の資格が輝いた。「にんしーやおばんまんま」とか言っていれば、なんというか、母国語が分かる人がいるだけで人は笑顔になるものだなあ、と思った。その気持ちはわかる。自分も海外で日本語を聞くと温かい気持ちになるからなあ。落ち着いたら中国語の応対マニュアルを作ろう。

9月6日 午後4時

現場に来たのはいいけれど本部との連絡手段がとにかく厳しく、メールやFAXはおろか固定電話もPHSも使えない状況では混乱は必至で、足りないものが届かなかったりいらないものが2倍届いたりして往生した。とにかくソフバンは糞。ドコモは方角によってはイケる。auは最強だった。自分はmineoのau回線だけど。

モバイルバッテリーがあったおかげでどうにか電池はもったけれど、基地局のバッテリーが弱ってきたのか、そのうちに頼みの綱のauの電波もどんどん弱くなり、ネットは瀕死、通話は辛うじて、ぐらいの状況になってしまった。ユニバーサル手数料を倍に上げてもいいから一週間ぐらい持つようにしてほしいと思った。つーか本当に停電が一週間続いたらどうなったんだろう。狼煙で連絡取る?

日が傾いて暗くなっていくと、市内でも復電しているところとそうでないところが別れていることが丸わかりになり、まさに明暗を分けていた。道路を挟んで隣町が点いているのに、という状況はわりと切ない。家を建てるなら病院などの緊急施設の周りにしよう。

9月7日 午前0時

ようやく交代要員がやってきたので勤務終了。途中応援が違う現場に行ったりメンバーが新人ばかりで指導しながら業務を進めなきゃならなかったり、たぶん6時間ぐらい立ちっぱなしで対応し続けて、水はかろうじて飲めたもののタバコはおろか一息つく暇さえなかった。疲れた……。

帰宅しても自宅は停電が続いており、妻が電池式の蛍光灯で出迎えてくれた。近くのホームセンターに並んで単三電池を山程買と、電池交換式の充電器を買っていてくれたおかげで携帯電話を充電させることができた。

食べ物は缶詰やインスタント食品のほかに、ウィダーinゼリー的なもの、それと大量のお菓子。水やご飯はすぐに無くなるものの、お菓子やジュースなどは結構在庫があったらしい。

だけど疲労困憊していて食べる余裕すらなく、水で体を拭いて頭を洗って寝るぐらいしかできなかった。僕はもう疲れたよパトラッシュ。

9月7日

次の日出勤するとすでに職場は復電しており、ほぼほぼ通常業務体制になっていた。といっても業務予定をキャンセルしたりリスケしたり、復旧状況を確認したりといった内容。給湯器も使えるようになっていたので、インスタントのリゾットを買って食べた。日本人はやっぱりご飯を食べないと力が出ない。

とにかく普通に電気が使えることが素晴らしくて、自宅が復電しないようだったらここに寝袋を持ってきて暮らしてやろうかと思ったほど。

とりあえず土日の対応を決めて、自分はこの日とりあえず定時で上がることになったので、帰りにすき家で牛丼を食べた。日本人はやっぱり(ry

自宅に着いた頃には建ての火力発電所が運転を再開しており、無事に電気が通っていた。丸一日ぶりに水槽を見たら、ベタはともかくレッドビーシュリンプもみんな生き残っていたので良かった。ちなみに猫たちは暗くても全く気にしていなかったとのこと。強い。

電気がないのは首がないのと同じ

こんな感じでほとんど仕事をしていたので「セコマが神」とか「冷凍食品をただで配っていた」とか面白いエピソードは特にないんだけど、まあ大変だった。

ガスは最悪なくてもいい(ガス漏れは怖いけど)。水は可搬性が高いから配給が受けやすいし、断水してもそれだけが原因で人死にはあまり出ないと思う。だけど電力だけは換えが聞かないというか、電気がなければ人間が人間として生きられないと思った。ただ食べて飲んで排出するだけの動物としての人間ではなく、それ以上の文明人として生きるためには電力は必要不可欠なんだよなあ。原始人に我々文明人が勝てるのは、インフラに裏打ちされているからだし。

電気がないときに一番最初に思いつく代替手段として自家発電機があるんだけど、これはかなり燃費が悪く、投光器を使っているとモリモリとガソリンを食って何十リットルあっても足りない有様だったし、家で使って一酸化炭素中毒で亡くなった人もいるし、結構危ない。ガソリンを保管しておくのは大変だし、GSの行列を見たら携行缶持って買いに行くのも大変そう。

ちょっと考えているのは、車のバッテリーを交換したら古いのをもらってきて、充電しておいてこういうのにつないでみること。

ただまあ基本的に電気が必要なのが携帯電話ぐらいだったら、そんなに頑張らなくても、単三電池がたくさんあればいいかもしれない。

それよりも、今回の地震はたまたま9月だったから良かったものの、真冬だったら寒くて凍えていただろうと思った。そういう意味ではバッテリーよりも、イワタニのカセットボンベストーブなんかがあると捗るかもしれない。

ボンベ1本で3時間程度持つとのことなので、2ケースぐらい在庫を抱えておけばしばらく耐えられそう。ボンベは普段も料理に使うし。

だったらカセットボンベで発電できる機械もあるんじゃないかと調べてみたら、あるにはあった。

ホンダ(Honda)発電機 エネポ EU9iGB 900VA

ホンダ(Honda)発電機 エネポ EU9iGB 900VA

が、高すぎる。だったら電池を買っておく程度でいいかな。いくら自宅に電気があって充電できても、通信局側が駄目になったら携帯電話は使えなくなるし。

とりあえず先に60cm水槽と30cm水槽にぴったりはまる蓋を買わなければ。