奥尻島原付一周の旅その1 ~原付デビュー~
2018年のゴールデンウィーク後半は、奥尻島に行ってきました。
そろそろ北海道内には行くところがなくなってきて(道東や道北は遠すぎるし)、海を挟んで青森の弘前や大間にも行きなれてきたのでちょっと珍しいところはないかな、と思っていたところ、NHKのニュースで奥尻島の高校で島への留学生を受け入れているというのを見て「この手があったか!」と思いついたのでした。
しかし好事魔多し。マイナー観光地界のメジャーな存在である奥尻島は4月も半ばになるとフェリーの予約はいっぱいでした。人だけ乗るのだったら空いているんですが、車を持っていかないとどうしても不便。
調べてみるとレンタカーを借りるというのも手段の一つで、確かに自分の車を持っていこうとしたら全長4m未満で片道15,970円、往復で3万円以上かかるのですが、借りれば半額で済むことがわかりました。
で、レンタカー屋さんのホームページを見ていたらヤバイ奴を見てしまいました。
原付! その手があったか!
二輪に乗ってみたかった
普通自動車免許を取ってから幾星霜、ゆるキャン△を見て”おまけ”でついている原付免許のことを最近思い出しましていました。
いつか原付に乗ってみたいなあと思ったものの、わざわざバイクを買うつもりもないし、そもそもこれまで一度もバイクに乗ったことがない人間が乗れるものなのか、乗って危なくないのかが疑問で二の足を踏んでいました。
ところが奥尻島で乗るのなら話は別。人口はわずか2,700人程度。島には信号も2つしかなく、2018年5月5日現在で交通事故死ゼロの日が1854日も続いており、『クルマもそれほど走ってねえ』を地で行く田舎町です。
そして奥尻島は全周わずか70km弱の小さな島。
原付の制限速度30kmで走ったって、3時間もあれば一周できるほどの距離に過ぎません。
であれば話が早い。江差まで車で行ったらフェリーで人だけ乗って、現地で原付を借りて一泊二日で奥尻島を一周するプランに決めました。
暗雲立ち上る旅立ち(決して比喩ではなく)
函館から車を走らせること約2時間で江差町にたどり着きます。しかしこの旅が簡単にはいかないことを雲行きが物語っています。
これは今回乗り込むハートランドフェリーのカランセ奥尻。せっかくの連休だというのにどよんどした空模様。天気予報では一週間前には雨の予報だったのが曇のち雨になり、直前には曇り時々雨まで回復してはいたものの、予断を許さない状態です。
行きの便では(自動車を乗せない分)奮発して、一等のアイランドビューシートを予約しました。
シートはフカフカで足置きのオットマンもあり、飲物のサービスこそありませんが、船内で唯一船の前方が眺められるのはまさにファーストクラス。ただ一つの欠点を除けば最高でした。
それは揺れ。この日は3mの高波が次々に襲いかかる大荒れの海。ということは身長の倍の高さまで持ち上げられたり落下させられたりというのを永遠に繰り返されるわけで、快適さとは程遠い状態です。落ちる時は一瞬自由落下状態で胃が無重力になるし、トラベルミン必須。これはあれか、”叫ぶ40度”か!
「よりもい」の南緯40度に比べたら北緯42度はだいぶましな方ですが、また乗りたいかと言われたらビミョー。
フェリーが嫌なら函館奥尻間には飛行機でも行けるんですが、サーブ340という双発のプロペラ機なのでそれはそれで不安が。悪天候だと奥尻島上空まで来て引き返すこともあるというし、フェリーならかなりの大波でも頑張るとのことなのでどちらを選ぶかは悩ましいところです。
それでも島に着く頃には波も収まり、晴れ間が見えるようになりました。
レンタカー屋の奥さんは原付の予約をした翌日に「天気が悪いみたいだから普通車の方を用意しておいたけどどうします?」と、わざわざ電話をかけてきてくれたんですが、せっかくなので初志貫徹、原付で島を一周することに決めました。
原付デビュー
接岸するとレンタカー屋さんが看板を持って待っているので、送迎車に乗ってお店まで行き、そこでレクチャーを受けました。キーを差し込んでONにまわしてから、両手でブレーキをかけながらスタートボタンを押すとエンジン始動、あとは右手のスロットルをひねると前に進みます。
スロットルをひねってから前に進むまでのタイムラグがあるので最初はひねりすぎて急発進してしまったりしましたが、オートマだから軽くひねって回転数が上がれば自動的にクラッチがミートして進み始めるというのがわかってからはスムーズに発進できるようになりました。
原動機付自転車というだけあって操作感は自転車に近く、「漕がない」自転車という感じ。全身で風を受けて走るのは気持ちいいし、自動車と違って頭上がクリアだし周囲をガラスに囲まれたりもしていないので、周りの風景をダイレクトに感じられるのも楽しい。特に、山道を走るときなどコーナーで体を傾けて曲がるのは燃えます。ハングオン!
とはいえ楽しいことばかりではなく、バイクは大変だ! と思わされることも多かったです。
5月といえば東京では25度を超えていたりしてほぼ夏模様ですが、ここは北国でしかも離島ということもあって風が強く、最高気温がヒトケタというのはザラです。手袋・マフラー・ウィンドブレーカーは常識として、ホッカイロも大量に持ってきたほうが良さげ。いっそスキーウェアで来たほうが良かったかもしれない。
それと、前方は前述したとおりかなり自由に見えるんですが、後ろの方は意外と見えにくくて、意識してサイドミラーを覗き込んでようやく分かるレベルだったのにはまいりました。後ろから自動車が来ても、たまたま後ろに意識を向けているときじゃないと全然気が付かないので、スムーズに抜かせることが難しかったです。
ただ奥尻島は事前に予想した通り、道行く車の台数は本当に指折り数えるぐらいだったので安心でした。むしろクルマ2台がすれ違うのが厳しいような細い道でも、原付ならばスイスイと通ることができて楽だったり。原付デビューには奥尻島は良いスポットだったと思います。
というわけで今回は序章。次回から原付での奥尻島一周の旅が始まります。