ロワゾー・パー・マツナガでディナーを食べてきました

半年に一度ほどはめちゃくちゃ美味しいものを食べるぞ!と心に決めているので、半ば無理をしてでも地元の有名店に足を運ぶことにしています。

今回訪れたのは杉並町にあるロワゾー・パー・マツナガ。約1年半ぶりの再訪となります。閑静な住宅街にある一軒家のような風情のこじんまりとしたレストランですが、自分が食べた中では最高級に美味しいものがでてきます。


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人気店の割に予約は意外と取りやすくて、前日でも大丈夫でした。ディナーだからかな。

コースメニューはこんな感じ。

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食前のお楽しみ、つまりアミューズは洋風茶碗蒸しと知床鶏と大きなオリーブの三種類でした。

茶碗蒸しは海鮮の出汁が濃厚で、卵とあいまってまるで魚卵を食べているかのよう。トッピングのふのりも、味噌汁に入っているときとは別人みたいです。

知床鶏は、ほんのひとくちサイズのもも肉を鶏皮でクルッと巻いてあるのですが、たぶん鶏皮を一旦剥がして食べやすいように調理してからまた貼り直しており、口の中でほろほろっとほぐれます。その旨み量たるや、スプーンに乗るほどの大きさにも関わらず鶏もも肉一枚を食べたのと同じぐらいで、脳裏に鶏もも肉まる一枚を使ったステーキが思い浮かんだほどでした。最高。

アミューズはどれも小粒なのに味がぎゅーっと凝縮されていて、食べてるうちに普段ジャンクなものを食べてなまっている味覚が目覚めてくるような気がしました。

この後にニンジンのポタージュ*1と焼き立てパンが出てくるのですが、もうこの段階で満足度がやばい。これでごちそうさまをしてしまいそうですが、これは『食前のお楽しみ』。勝負は食事はまだ始まってもいないのです。

このあたりで周りの席からiPhoneの「カシャーン」というシャッター音が聞こえてきたのでこちらも無遠慮に撮影することにしました(^_^;)

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前菜はホタテの燻製とズワイガニと蕪のムース。ホタテは燻製の香りが強い割にしっとりと半生で、これは燻製の香りつきの塩などを併用しているのではないかな、と予想。印象が強かったのは蕪のムースで、上になんと蕪の千枚漬けが乗っているんですが、これがまったく違和感がない。酢がビネガーなのかな。フランス料理に漬物があるって言われても全然信じられるぐらいマッチしていて驚きました。ヨーロッパの人が中途半端に和のテイストを取り入れるのとはわけが違うなあ、と感心。

続いてはフォワグラとリンゴ。フォワグラは薄く切ったリンゴのコンポートとパンケーキの上に載せてあって、さらにリンゴのソースをつけて甘くして食べるんですが、ひとくち食べて「これは超高級なマックグリドルだ!」と思ってしまいました(貧乏人感)。甘くて油たっぷりで麻薬のよう。これはどんなにフォワグラが動物虐待って言われようとも食べるのをやめられないなあ。退廃的に美味い。

妻曰く、

「レバーは苦手だけどフォアグラは食べられる」

とのことで、すごく富豪っぽいセリフなので各所で使ってほしいと思いました(^_^;)

お次は茅部産のタラと白子のソテー。

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タラと白子なんていったら地元では三平汁に使うものと相場が決まっているんですが、どうしたんだ君たち、まるで他人のようじゃないか。

タラの身はしっとりと柔らかく、ナイフを入れると下に敷かれていた大根ごとスッと切れます。

え、大根? いま大根って言った?! 隣のオレンジ色の野菜はもしかしたら、ニンジンですと?!

フランス料理というよりも、やはり最初に思った通り三平汁に入っていそうな根菜たちは、白ワインのソースに染まっていまやすっかり洋風顔。こういう取り合わせの演出はにくいなあ。白い白子にあえて黒いバルサミコ酢のソースをからめるという小技もおしゃれ。

どちらも表面だけカリッと炙られていて、一口目だけ香ばしさが漂う演出もニクい。下手な寿司屋とかだと炙るのにバーナーを使ったりしてオイル臭くて味もへったくれもなくなるパターンによく遭遇するんですが、そういうところは全くなし。さすがに心意気が違いますね。

ここでキノコのコンソメが出て一休み。マッシュルームと七飯町の王様しいたけを使っていて、キノコ風味がとことん強い。これは前も飲んだ気がする。美味いので何度飲んでもいいね。

お肉料理はハーブ牛のサーロインと斜里町エゾシカ肉の二択ですが、今回も前回と同様2種類頼んでシェアする戦法に。

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シカはちょっとやばいですよ。しっとりと柔らかくて味は濃厚で、ハーブ牛に勝るとも劣らない肉質。狩猟免許取って斜里町に移住したくなるレベル。吹雪の日に鹿撃ちに出かけたNHK職員の気持ちも分かる。

一方のサーロインは刺しが入っているとはいえ油くどくはなく、油というよりも牛肉の旨味エキスみたいな塩梅なので、噛みしめるごとにジュワーッと口中にサーロイン味が広がって至福の心持ち。

ただ、正直なところを言うとここまでに食べる量が多すぎて、肉を楽しむ気持ちが半減してしまっていました。途中からは”皿をカラにするために詰め込んでる”感が出てくる始末。もうちょっと全体的に小さめにしてくれてもいいんじゃないかな。次に訪れる時は少なめでリクエストしよう。

まさかのデザート三連星

この時点で腹十二分目ぐらいだったにもかかわらず、敵は追撃の手を緩めません。まず食後の口直しとしてパンナコッタが現れ(洋梨のアイスが乗っていてこってりさっぱり美味い)、続いてデザート前のデザートとして『小さなジュレ』が登場。っていうかデザート前のデザートって何?

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全然小さくない! 手加減する気がない!

しかしこれが面白くて美味しくて、上に盛られたミントのスプモーニの下にはドンパッチ(炭酸ガスを封じ込めた飴)が隠れていて口の中でぱちぱちとはじけるし、ジュレの中に隠れたジュニパーベリーのアイスはさっぱりとした酸味が心地よく、多少(という段階をとおに超えているが)お腹がいっぱいでも食べ残すなんて不可能なぐらいに美味しいから困る。

そして満腹創痍となった我々の前に真打ちのデザートが登場するのでした。

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この期に及んでまるまるひと皿使ったフルスペックのデザートが待っていたとは。普通の料理に使うようなナイフ・フォーク・スプーンが並べられたときから覚悟はしていたけどね……。

金柑のコンポートが乗っているチョコレート製の筒をナイフでつつけばパリンと割れて中からラムたっぷりのトロトロのチョコレートが溢れ出し、それを金柑に絡めて食べるともうね、大人の男のためのスイーツ。柑橘×チョコレートの組み合わせは鉄板だけど、あえてそこに和風な金柑を持ってくるというの粋なはからい。満腹過ぎなければもうちょっと楽しむ余裕があったのになあ。常時ならこの一皿だけで一食分に相当するほどの満足度なので、完全にオーバーキルされました。チョコレートに溺れる夢を見そう。

19時に入店してから21時半まで、じっくり長い時間かけて一流のスタッフからお給仕を受けながら食べる最高の食事は、もう「ご飯を食べる」という行為を超えて「体験」の域に達しているといっても過言ではありません。市内で味わえる非日常。あとやっぱり、時々凄い美味しいものを食べて舌に覚えさせて、美味しさを感じる閾値の上限を上げておかないと、美味しいものを食べたときのありがたみがわからなくなる、という危機感もあります。普段はスーパーで半額になった食材を狙っていても、たまには贅沢をしないとね。!

*1:前回はゴボウのポタージュだったような気がする。ゴボウはゴボウ味が強烈過ぎたのでニンジンのほうが好き