少女終末旅行が面白かった

面白いという評判を聞いて見てみたところ、完全にハマりました。

最初はいわゆる「きらら系」の、ゆるふわアポカリプスものかと思ったんですが(そんなジャンルはない)、1話めから驚愕の展開。

チトーとユーリ、主人公の女の子二人は、戦争によって廃墟になった街の中を進んでいます。最後のスープを飲み終わり、食料を求めて打ち捨てられた廃墟を探索します。途中で運良くカロリーメイトっぽいレーションを見つけるのですが、一本ずつ食べていって残り一本となり、チトーが、

「奇数か。じゃあ半分こ……」

と言って割ろうとするのをユーリがさっと奪い取ります。

「おい、なにすんだ」

と切り立つチトーに、ユーリはライフル銃を突きつけます。

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「これが戦争だね」

ユーリはそううそぶいてポリポリと最後の一本を食べてしまいます。で、「このやろー」とチトーが飛びかかってポカポカ殴って仲直りをするんですが、見ているこちらとしてみると

「戦争だね」じゃねーよ! それが戦争だよ!!

と総ツッコミですわ。普通に考えてどっちかが死んでもおかしくない。笑って済ませられるシチュエーションでもない。

ただ、物語が進むうちにユーリは読み書きもろくにできず、その代わりライフルの整備は完璧で、人間としてではなく兵士として育てられたのだと分かっていきます。行く先々で人間味のない、だけど本質的なことを指摘して周囲をドキッとさせるのですが、転機になるのが第9話。

ふたりがたどり着いたところには大きな水槽があり、たった一匹生き残った魚を世話をするロボットと出会いました。ユーリはその魚が食べたいというのですが、世話ロボットとチトーからダメだと断られます。まあ当然ですよね。

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そこにもう一体の巨大ロボットが現れ、水槽のある区画を破壊しはじめます。巨大ロボは都市のメンテナンスをするものなのですが、崩壊が進みすぎてバグっているのだろう、と世話ロボットは二人に言います。それを聞いたユーリは、「あのロボットを壊そう」と言い出すのです。

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ここまで人間さのかけらもない、本能のままに生きるけだものフレンズのような存在だったユーリに、突如人間味がめざめる。その理由は、世話ロボットの能力である『共感』を受け継いだから。

この話がすごいところは、機械から人間が「人間らしさ」を教えられるところ。そして、2体生き残ったロボットのうち1体が、自分の同類であるロボットではなく魚の生存を選んだこと。つまりもしかしたら、ユーリがここで『共感』を得ずにいたならば、きっとこの先この2体のロボットのように、チトーがユーリを切り捨てるような事態になる日が来るかもしれなかったという示唆なんじゃないのかな、と感じました。

そういう観点からすると少女終末旅行は、崩壊後の地球という世界を通じて我々に、人間とは何か、死とは、生とは何かを考えさせるという意味で、きちんとSFしているなあと思いました。

曲もいい

ストーリーもいいけどOPとEDのどちらも良いのでオススメ。

まだあんまり売れていない頃のPerfumeみたいで好き。紅白でるようになった日本を代表するアーティストとしてのPerfumeよりも、テクノアイドルだった頃のほうがSFだったなあ。

ユーリとチトーとは誰か

っていうか主人公ふたりのネーミングはなんなんだ。女子の名前としてどうなのか。チトーと聞くとユーゴスラビアのチトーしか思いつかないのだが。

ヨシップ・ブロズ・チトー - Wikipedia


Wikipediaには、

「チトー(Tito)」という名前は、「お前(Ti)があれ(to)をしろ」という横柄な文章から取られたもの

とあるので、わりかしそのとおりかもしれない(作中ではしょっちゅうそんな言い方をしている)。坂口尚の「石の花」にユーリとか出てこないかな。

この頃からアフタヌーン読んでいたのだった。懐かしいなあ。子どもの頃は意味がわからなかったけど、そろそろ読み直してみたいところ。

となるとユーリはユーリ・アンドロポフ書記長か。違うか。普通にガガーリンか。

そんな感じでとにかく面白いのでオススメ。秋クールのアニメでは『ボールルームへようこそ』が最高かと思っていたけど、同率一位ぐらいはあるね。