熊石で海鮮丼を食べてきました

素晴らしい温泉に浸かった後はさて腹ごしらえだと思ったら、さすがに時間が早すぎて開店時間までまだ一時間ほど時間があります。

そこで、熊の湯から少し下ったところにある熊石歴史記念館に寄ってみました。

www.town.yakumo.lg.jp

HPには詳細が全然なくてなんだか漠然とした感じなのですが、入ってみるとなかなか興味深い展示がたくさんあって楽しめました。

瑪瑙を埋め込んだ土偶とか、日本中を見回しても結構貴重なシロモノなんじゃありませんかね。

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昭和42年 鮎川遺跡から発見されたメノウ入り土偶

この瑪瑙が球体関節だったら面白いのになあ……。土偶系は基本的に壊された状態で副葬されるものなので、全体像が把握できないところが憎い。

しかし縄文よりも何よりも、自分の興味を引いたのはやはり武田信広関連の展示です。

後継者争いに破れて若狭から青森にまで落ち延びてきた信広が、アイヌの大軍勢をわずかな手勢で打ち破ったのには何か人知を超えた力が働いているのではないか、それはきっと陰陽術であろうと自分は疑っているわけなんですが、今回新たにその奇論を裏付けする資料が見つかったのです!

それがこの展示。

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瀬田内館城主工藤祐兼はアイヌの首長タケナシの軍勢に攻められて討ち死にし、弟の工藤祐致は海岸の岩場に追い詰められていた。迫りくるタケナシ軍。絶体絶命かと思われたその時、工藤弟が身を潜めていた岩から突如黒煙が上がり、空が真っ暗になったかと思うと激しい雷光が鳴り響いた! タケナシ軍が慌てふためく間に工藤弟は包囲網を突破し、無事に上ノ国まで逃げ帰ったという逸話が伝わっています。

この伝説が「いやー、凄いこともあるもんだね」という文脈で単なる天変地異として語られているんですが、これって普通に考えたら陰陽術じゃない?

陰陽術だなんてどこが普通だよって言われそうだけど、何もなしに岩が爆発するはずはないんですよ。何かの術を使ったと考えたほうが自然なわけです。

陰陽術といっても式神を呼んだりするような非科学的でファンタジックなものではなく、自分が想像しているのは人を巧みにだまくらかす技。武田信広とその一族は、人心を惑わし意のままに操る権謀術策の使い手たちなんじゃないかと自分は考えています。

タケナシの乱は1527年ですから鉄砲伝来以前のことになりますが、武田のルーツが若狭にあったわけだし、そして主家である安東家が当代一の貿易港である十三湊を擁していたのであれば、明国から火薬を手に入れていてもおかしくない。工藤兄弟父親、工藤祐長もまた、武田信広とともに蝦夷に渡ってきた謎の人物です。貿易ルートや火薬の使用法が子々孫々に密かに受け継がれ、そして工藤弟が必殺のタイミングでそれを使ったのではないか、そんなことを想像しました。

ちなみに武田信広コシャマインの乱を打ち破った際は、城の城壁の隙間から藁人形を見せ、アイヌが毒矢を打ち込んでくるとそれを回収して打ち返して大打撃を与えたとも言われています。

このエピソードもどこか諸葛孔明っぽい? 武田信広が中国の故事に詳しかったのか、後世の人が混ぜて脚色したのかは分かりませんが、やはり並の武将なんかではないような気がします。これはさらに盛り下げてみたいなあ……。

熊石 あわび かきた寿し

はい、難しい話はここまで。お待ちかねの海鮮のコーナーです(パチパチパチ)

今回訪問したのはこちら、熊石の「寿し処かきた」さんです。

www.sushidokoro-kakita.com

いつもは日和って道の駅なんかでお茶を濁すところなんですが、今回は違います。なにせHPが完備! おしながきにはメニューも写真もお値段も明記されて隙がない!

これなら一見さんでも恐れずに入ることができます。最高ですね。

真の最高はここからだった

さて熊石はあわびで有名で、4年前にはその名も「あわび山荘」という旅館であわび食べ尽しの食事を堪能したところでございます。

pikaring.hatenablog.com

その時の教訓として「あわびは生より火を通したほうが美味い」というのがありまして、要は生のアワビはそのコリコリとした歯ごたえが命で逆に言うとそれだけが取り柄のもので、味やトータルの食感を考えたら酒で蒸したり焼いたりしたほうが美味しいんですよ。なのでこちらの「エゾアワビ豪華二色丼」はちょっと指し過ぎかな、と。

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なのでここはちょっと無難に、コストパフォーマンスを考えてランチメニューの、海鮮丼(上)1,500円也を注文しました。ちょっと高いけど、山岡家のラーメン二杯分だと考えれば大丈夫!

と思いながら待っていると、凄いやつが運ばれてきました。

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あれあれ、ガチ勢かな。本気の海鮮丼かな。盛りが凄まじくて、海鮮を崩さないとご飯にたどり着かない。さっき山岡家って言ったけど、これは海鮮丼界のラーメン二郎なんじゃないかな。

サーモン・イクラ・タラコに〆鯖・ブリ・カニ・イカ・タコ・ホタテとボタンエビ。そしてそして生のアワビも二切れ入っているのが嬉しい。このぐらいをゴリゴリっと噛むのがいいんですよね。これ以上だと飽きちゃうし、歯が立たないから。しかしヤバいな。海の生き物が全部入っているんじゃないだろうか。

そういえば「目玉焼きの黄身 いつ潰す」で、海鮮ちらしの食べ方の回がありました。

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この海鮮丼は当然ながら『もったいなくてワサビ醤油なんてかけられない!』タイプ。そんな慄きを感じ取ったのか店員さんからは「良かったらこちらをお使いください」と小皿が差し出されました。まずは酢飯が顔を覗かせるぐらいまで具を小皿へと移管し、準備ができたところでいただきます。

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これはもう、ちょいとしたお寿司ですよね。寿司たちが合体して生まれたキング寿司。それが美味しくない訳がない。刺し身の連続攻撃に一息つこうとアラ汁に手を伸ばすと、これがまた予想外に美味いので不意打ちを喰らいました。

これはヤバい……、出汁の洪水に溺れて脳汁が出ちゃう……。

かの北海道人、松浦武四郎安政3年に熊石を訪れた際に、

『余は(安政3年4月11日)陸行す。扨其熊石村たる哉、漁檐櫛比、帆竿排立、棹歌互答、漁業の壯なること眞に宇宙之壮観也』

と言ったそうですが、

これもまた、海鮮という星々を散りばめた宇宙ですよね。わかります。