熊の湯に行って熊に出会った

最近はずっと檜山地方の秘湯名湯を巡って歩いています。

函館と逆サイドの日本海側は比較的道が空いているというのもいいし、車がいいから初夏の北海道を駆け抜けるのも楽しいし、BGMは中国語講座なので復習にもなる、でもって今まで知らなかった良い温泉や名物料理にも巡り合うという一挙両得どころか三得も四得もしちゃうところがハマっている理由です。

でもって今回は、前回入れなかった江差町の繁次郎温泉にでも行こうと思っていたんですが、天気が良すぎるのでもうちょっと足を伸ばして、熊石まで行ってみることにしました。

旧熊石町は市町村合併によって八雲町に合併され、地名に名残を残すのみとなっていますが、今でもきっと地元の人は日本海側の方を「熊石」と呼んでいるんでないかな。

函館から熊石までの道のりは大きく2つあって、厚沢部町から江差町に抜ける国道227号ルートか、一旦八雲町まで北上してから国道277号(数字が似すぎていてわかりにくい……)を抜けるルートがあります。227号は先週通ったので、今回は277号、通称雲石国道を通ることにしました。八から熊に抜けるから雲石なのかな。なんで八熊じゃないんだろう。青函トンネルが森館トンネルになったらおかしいだろうに……。

北海道開発局 一般国道277号雲石道路

この道路は平成25年に開通したばかりなので舗装状態もよく道幅も広くRも柔らかくなっていて非常に走りやすく、眺めも良いのでオススメです。特に圧巻は、ロアリング工法によって作られたという高滝ノ沢橋からの眺め。

車を停めるところがないのでストリートビューを貼るだけでお茶を濁すとして、ギンギンに飛ばさなくても軽く流す感じで楽しめるコースでした。

生まれて初めて生熊を見た

そんな感じで快調に駆け抜けて、見市温泉を越えてだいぶ平坦な道になり、もうじき里に降りようかというところで、道の真中に立っている人が目に入りました。

「こんなところで何をしているんだ」

と思いながらスピードをゆるめてよく見ると、真っ黒な人? いや、人にしては全体的に一回り大きいし、手足のバランスがおかしい……? これはヒグマだ!

あわてて車を停めると、ヒグマは「見つかった!」みたいな顔をして素早く飛び上がり、颯爽と笹薮の中に潜り込んでしまいました。恐る恐るそこまで車を進めてヤブの中を見てみましたがすでに影も形もありません。基本的に熊は人を避けて生活しているとは聞いていますが、これが山道で徒歩だったらと思うとゾッとしますね。さすが熊石、普通にヒグマがウロウロしています。

ヒグマに出会った後で熊の湯に行きたいか

そして今回の目的地は、その名も『熊の湯』です。

www.town.yakumo.lg.jp

熊に出会った後にそんな、熊が入りそうな温泉(しかも野湯)に入る勇気が君にはあるか?! でもまあ、ここまで来たんだし勇気を振り絞って行ってきました。

温泉の手前にある駐車場に車を停めると、車がすでに一台停まっていました。先客がいるなら熊に出会う心配は薄そうだな、そう思って車を降りると、停まっていた車の中から声をかけられました。見るとおじいさんが車内でラーメンを食べており(携帯コンロまで完備)、

「入りに行くのかい? 今なら誰も居ないよ。ほら、桶貸してやるよ」

と桶を貸してもらいました。温泉の主なのかな。

お礼を言って駐車場を抜けると露天風呂まで100mとの看板があります。

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この間に熊が出たら嫌だなあと思っているうちに露天風呂までたどり着きました。

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ここから見下ろすと、脱衣所と湯船が丸見えです。実にワイルドw

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脱衣所があるにはあるんですが湯船までしばらく歩くのと、盗難に注意して貴重品は持っていけという張り紙がたくさんあるので、パンツ一枚だけになって坂を下り、荷物は全部湯船の脇のところまで持ってきました。岩がかなり滑りやすくなっているので注意が必要。ビーサンを履いてきている人もいたけど、素足か靴のほうが滑らなくて良いと思われます。

しかし眺めが凄い!!!

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湯船からダイレクトに滝が見える! こんな景色の温泉は初めてです。最高すぎる……。去年の山の日に森町の滝を観に行ったけど、あの滝の脇に露天風呂があるみたいな感覚。

pikaring.hatenablog.com

ちなみに手前が湯船で、青いホースからは水が出ています。もちろん100%源泉かけ流しなので、熱すぎる時は自分でホースを入れて調整し、ちょうどよくなったらホースを外に出すシステムです。

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しかし本当に、この雰囲気は控えめに言っても宇宙一かもしれない。自宅からわずか2時間のところにこんな至福の場所があったなんて。森と滝と温泉に包まれて、大自然と一体化したかのような気持ちになります。なにせ全裸ですからね。その一体感たるやそんじょそこらの登山とは訳が違う。それに、山に登って頂上で全裸になったら変態ですが、温泉なら堂々と脱いでもいいんですよ。最高じゃないですか。

好事魔多し

その後しばらくして独り占めタイムは終了して、他のお客さんも入ってくるようになりました。こうなれば秘湯仲間ですからね、いつまでも独り占めしようなんて気はさらさらありません。二人で分け合おうじゃありませんか(まだ上がる気はない)。

ところが好事魔多し。このぐらいメジャーな秘湯ともなると、物見遊山のお客さんもワラワラとやってくるんですね。家族連れが賑やかにやってきて騒ぎ始めました。別に見に来るなって言ってるんじゃないんですが、風呂場に服を着て見物に来るのってどうなのさ。羞恥プレイかよ。まあ、家族連れ側にとってみれば全裸の男が風呂にいるほうが迷惑なのかもしれないけれど、わざわざ気を使って上がる気にもなれず、っていうかその家族連れの横で体を拭いて服を着なきゃならないほうが羞恥プレイだし、こうなれば我慢比べだとばかりに居座ってやりました(^_^;)

次は平日に来よう

そんな感じで、温泉は素晴らしいのですが邪魔が入りがちなので、連休に来るのにはあまり向いていないかもしれません。それと、ふだんだと温泉の色は茶褐色らしいのですが、この日はわずかに白濁しているぐらいで、きっと前の日からの豪雨の影響なんだと思いますが、次はどこか平日に休みを取って、人が来なさそうなタイミングを見計らってリベンジしようと思います。