安い鰻には悲しみしか無い
いち鰻ファンとして毎年この時期になると「鰻を食べるなキャンペーン」が展開されているのを悲しみをもって見つめています。
そう言えばこの前、地元の回転寿司屋、北々亭に行ったんですが、寿司王国函館の中でも十分に満足できる水準で、しかもそんなに高くない(函太郎やまるかつ水産より安い)うえ、一貫ずつのセットメニューが豊富でとても良かったです。
高いメニューを一皿分の値段に収めるために一貫のみで提供というのはよくありますが、量が食べられなくなってきているので、2貫だと種類を多く食べられないんですよね。こうやって普通のものを盛り合わせてくれると捗ります。
こちらは期間限定の極味6貫盛り840円なり。
こいつとマグロセット(赤身・中トロ・大トロ一貫ずつ)420円を頼んだら優勝しました。大トロを食べた時の脳汁度が激しすぎる。
かといって大トロを何貫も食べたいかと言われるとちょっとキツいわけで。寿司は人生のようなもの、山あり谷あり、いろんなものを食べ歩いたほうが深い経験が得られるのです(哲学
いい感じに食べたところで最後の締めにはその名も「〆の三貫」というものがあり、内容はマグロの漬け炙り・鰻・かっぱ巻きの三種類ということでした。こってりとしたものを食べて最後にさっぱりさせようという趣向ですかね。でもまあ、かっぱ巻きは指しすぎな気がしたので、漬けマグロ炙りと鰻を頼んでシェアすることにしました。
しかしながらこの鰻が残念賞。冷凍ものの鰻は皮がブニョっとしてべニャっとして、如何ともしがたい。身の方はまあ腐っても鰻なのでどうにか戦えるレベルなんですが、鰻はなあ。
いや、別にこの寿司屋が不味いっていうことじゃないんです。序盤のスタートダッシュを見れば分かる通り廻る寿司にしては相当な実力者なわけですよ。にも関わらずウナギはやはり、鰻屋に限るんですよね。
いい鰻はいい
こちらは先月食べに行った「うなぎ処 高はし」の竹うなぎ定食(並)2,840円也。
これが本物の鰻。ザ・ウナギ。いや、ジ・ウナギかな。
山椒は鰻の皮側にかけるものであって、なぜなら皮の生臭さを消すためだからという論もあるようですが、真に最強の鰻に関して言われたものではないと思っています。紹興酒に干し梅を入れて飲むのとご同様に、そこそこのものをクオリティアップするための小技。トップクラスの鰻は山椒やタレがあってもいいし、無くてもいい。最強は何事にもとらわれないのです。
今度は秋ぐらいに食べに行こう……。
真の実力を発揮できない鰻の悲しみを思う
ちなみに、日本人が死ぬ前に食べたい食べ物ランキングナンバーワンが鰻らしいです。それはもう、食べ物として冥利に尽きるところですよね。あらゆる食品の頂点に立つといっていい。それなのに、それほど尊いはずの食べ物が、粗製乱造されて打ち捨てられているのを見るのはとても悲しい。
本来主役であるはずの鰻が、食品の王であるはずの鰻が、ファストフード店で牛丼やらカレーやらハンバーグの上に乗せられているのを見ると憤りさえ覚えます。そんな食べ方で鰻の味が分かるのか、と。鰻を食べたというアリバイだけが必要なんだったら、ウナギと書かれた御札でも乗せて食べればいいのに。
スーパーの鰻なんて本当に悲しい食べ物で、焼かれてから何日もたった焼き魚なんて美味しい訳がないじゃないですか。冷凍のものが流れ作業で焼かれてラップにくるまれて置いておかれて。鰻ならば当然払われるべきだった敬意が感じられないことを思うととても辛い。それでいてスーパーでは3,000円とか4,000円とか、値段だけはいっちょまえだから驚いてしまいます。
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さっきの鰻屋の鰻はたったの2,840円です。職人さんがつきっきりで蒸して、焼いて、代々受け継がれたタレを使って味付けされ、出来上がりたてを食べられるのに。さらには刺し身3点と茶碗蒸しまでついてこのお値段なんですから、そりゃスーパーは鰻を売るのを止めませんよね。雑に作って同じ値札をつけられるなら笑いが止まらない。いくら廃棄が出たって利益率が絶対的に高いんですから、鰻が絶滅するまで続けるでしょうよ。
和食の文化を守りたいというのなら、雑に大量消費させるんじゃなくて、規制をかけて食べられる人にしか食べられないようにしないとダメだよなあ、と思うものの、文化で食べていけるのかと漁民に逆ギレされるのがポピュリズムだからもうダメかな。鰻がとても好きなので、こうやって雑に食べられて失われていくのはとても悲しい。
いっそ、フグに準じて、ウナギ調理師免許なしには調理してはダメなことにしたらどうかな。ウナギも血には毒があるし。
腹いせにナスを蒲焼きにしてやった
いち鰻ファンとしては丑の日だからといって自堕落に鰻を消費するのは腹立たしいので、腹いせにナスに蒲焼のタレをかけて焼いてみました。
見た目だけならこれが優勝なんじゃないかな。