2017秘湯めぐりin後志 ~とまりん館~

泊村までやってきたならぜひ寄っておきたい観光スポットは、何と言っても「とまりん館」です。

www.hepco.co.jp

安直ににここを観光スポットと呼んでいいものかどうか迷ってしまうのですが、ここは北海道唯一の原子力発電所である泊原発のPRセンター! なんと入場料は無料! 太っ腹! お金がかかってるね!

朝9時オープンということで、旅館を出てから朝イチで寄ることができるのが嬉しいところ。さすがに開場してすぐは閑散としていましたが、すぐに続々と家族連れがやってきて賑やかになりました。場所柄もあるので大混雑という感じではありませんが、それぞれのアトラクションが埋まるぐらいには、ですね。

入場するとまず職員の方に声をかけられて、発電をモチーフにしたゲームを遊ばされます。コイルを上下させて発電させてみたり、手回し発電機でカメラのフラッシュに充電して写真を撮られたり、遊びながら電気の仕組みを理解できるという趣向。

すぐ隣の科学展示の部屋にも、足こぎペダルで発電してエネルギーの歴史を学ぶ遊具があったりして、無料にしてはなかなか楽しめます。というわけで基本的には大人も子どもも楽しみながら電気のことを学べるという知育施設なわけですが、次の部屋に進むとこの施設の根幹に触れることができます。

原子力発電を体験しよう!

もちろん原発のPR施設なので、楽しく分かりやすく「原子力発電」の仕組みが学べるところがウリでございます。

f:id:Red-Comet:20170514141427j:plain

でもなんというかこう、「安全だよ!」「クリーンだよ!」「未来のエネルギーだよ!」と言われても、

「お、おう」

としか返事できない気持ちになっちゃうんですよね。

頭ではよく分かるんです。最先端の超技術で厳重に運営されていることは。

だけどその、科学の檻の中に閉じ込められた怪物の、本当の恐ろしさのことを考えると複雑な気持ちになってしまう。

エヴァンゲリオン原発だった

展示を見ていてふと気がついたことは、新世紀エヴァンゲリオンのかなりの部分で原発がモチーフになっているんだということです。今更かもしれないけれど、思っちゃったんだからしょうがない。

そう思って見直してみると、エヴァが常にLCLに浸かっているのも核燃料の冷却プールに近いし、核燃料が五重の壁に守られているのもセントラルドグマに似ている。あのアニメが圧倒的なリアリティをもって描かれていたのは、同様の脅威が現にこの日本にあったからなんだなあ、と思わされました。いつ暴走するかもしれない、人の力を越えた存在を科学の力で押さえ込み、利用することの業。

常に人間は、人間の力を超えたものを手にしようとして文明を発展させてきたわけで、柔らかく軟弱な手で殴る代わりに鉄で作られた武器を持ち、か細い腕では歯が立たないものには火薬を使い、馬のように速く走ることができなければ車を作り、翼を持たない代わりに飛行機を作ってきたわけです。

だから原子力を使うこともヒトの本能であり、原罪なんですよね。

だからといって、それに恐れを抱いてはいけないということもないわけで。

とまりん館は清潔で明るく輝かしい未来を象徴する建物ですが、それでもなお、原子力発電という禁忌を覆い隠すには薄すぎる。想像力を働かせれば、この裏側に恐ろしい怪物が閉じ込められているんだということがひしひしと伝わってきます。普段は原発の脅威なんて露ほどにも感じていないけれど、この場所まで近寄って初めて、恐ろしい怪物のたてる唸り声が聞こえてくるような気がするのです。リアリティラインに近づいている、そんな気がしました。

原発は単純に「良い」とか「悪い」とか言えないものだけれど、それが単なる思考停止なんじゃなくて、重みを持って「一概にいいとか悪いとか言えないな」と確信できる実感のようなものを、とまりん館を訪ねることで手に入れることができたような気がします。

雷電国道を北上している間、ずっと目の前に見える泊発電所の姿に「ここの住民は時限爆弾を枕に寝ている気持ちにならないんだろうか」と思ってみたり。

岩内町からの眺め。白く見える建物が泊原発

岩内町泊原発から半径10km以内にあるので帰還困難区域になりそうですね。

f:id:Red-Comet:20170515221219p:plain
避難区域の変遷について-解説- - 福島県ホームページ

福島原発事故では東から西へ、南から北へ被害が激しくなっています。これは風向きのせいなのかな。

そうなると内陸のニセコ余市方面よりも、神恵内村に向かって被害が広がるんだろうか、などと考えてみたり。

こちらはちょっと遊んでみたかったけど、子どもたちが夢中で取り組んでいたので遠慮した中央司令室シミュレータ。

f:id:Red-Comet:20170515215931j:plain

「汚染水が海水に混ざることはないんだよ♪」と楽しげに子どもたちに語りかけているのを見ると、なんだか釈然としない気分になります。

pikaring.hatenablog.com

先日青森県大間町に渡って大間原発の姿を見たときも、やはり複雑な気持ちになりました。「良い」とか「悪い」とか結論をつけるんじゃなくて、「本当に良いのかな?」と思うこと。そういう気持ちが大事なのかもしれませんね。