カバンちゃんは永遠にけものたちの心のなかで生き続けるんだ
いまさらですが話題のアニメけものフレンズについて。
第1話から虜になって、毎週楽しみに見てきました。一番の魅力は何と言っても全体に漂う不穏な空気。フレンズたちの可愛らしい姿の裏側に、語られることがない悲劇が隠されていることがところどころで示されます。それはまるで糖衣に包まれた苦い薬のようで、ポストアポカリプス、世界が滅びた後というハードSFな世界観をそれとは匂わせずにジワジワと伝わってくるところが大好きです。
動物の人間化という点ではアフタヌーンで連載中のディザインズも同じようなテーマを扱っていますね。
- 作者: 五十嵐大介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/02/23
- メディア: コミック
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これはいま連載しているマンガの中では相当好きで毎巻欠かさず買っているのですが、やはり全面的にハードSFを打ち出しているのでゴリゴリとしています。
実際のゴリゴリ度的にはけものフレンズも似たようなレベルにあると思うのですが、それをそうとは感じさせないでうっかり見させてしまうテクニックが秀逸です。まさにフレンズの皮をかぶった獣。
11話が最高すぎた
Amazonプライムビデオで1話が無料なんですが、興味があったらぜひとも『2話まで(1話で切らないで)』見て欲しいところ。
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最終話まであと1話を残した11話は、これまでの甘くフワフワした空気を一掃するハードSFむき出しの展開になっていました。
フレンズたちを捕食するセルリアンと、
それを狩るハンターたちの存在。
しかしハンターたちでも歯が立たない強大なセルリアンに対して、登場人物の中でただ一人「人間」であるカバンちゃんが、人間の最大の武器である「知恵」でもって対抗しようとします。
これまでのストーリーはおおむね、動物たちが人間化した存在である「フレンズ」たちの問題をカバンちゃんが知恵で解決してきました。今回もセルリアンが太陽に向かって進む性質から走光性があると考えて、夜のうちにバスのヘッドライトや松明で照らして誘導しようと試みました。
ところがセルリアンの強大な力の前に策は破れ、旅の相棒であり無二の親友であるサーバルちゃんがセルリアンに取り込まれてしまいます。
カバンちゃんは命綱を付けてセルリアンの体内に飛び込んでサーバルちゃんを助けますが、再びセルリアンは彼女たちに向かってきます。
松明に火を灯し、自らが囮になるカバンちゃん。
他人を守るために自らの命を投げ出せる自己犠牲の精神もまた、人間のもった「武器」なのかもしれない、そう思わせる幕切れでした。
人は忘れられない限り生き続けられる
カバンちゃんはセルリアンに捕食されてしまったわけですが、それでもなお、勝算がないわけではないことに気がついてシビれました。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。カバンちゃんはにはまだ策があるのです。
これまでのストーリーは、カバンちゃんが知恵でフレンズたちの問題を解決してきたというのは最初に書きましたが、毎話の最後に、カバンちゃんの後を執拗に追いかけるアライグマのアライさんのエピソードが短く挿入されていました。そこではフレンズたちがアライさんにカバンちゃんの逸話を語ります。橋を作ったり家を建てたり戦争をやめさせてみたり。そうしてアライさんは、カバンちゃん本人に会うことがないままにカバンちゃんのことを知るようになりました。
すでにカバンちゃんのエピソードはフレンドたちの間で伝説になっている。
伝説。それは第9話のPPPでも語られていました。この回では例外的にカバンちゃんが活躍しないのですが(そのせいで評判は悪いのですが)、その代わり、はるか昔に”アイドル”という存在がいたこと、そしてペンギンのフレンズたちが今もその志を受け継いでいることを知るのです。
セルリアンに取り込まれたフレンズは死ぬわけではなく、サンドスターの力を奪われてそれまでのことを全て忘れてしまうと言われています。動物にサンドスターがぶつかるとフレンズ化されるというので、もしかしたら元の動物に戻ってしまうのかもしれません。
かつてサファリパークに人間がいた頃にガイドを勤めていた、ミライさんという人間がいます。
彼女はパークをセルリアンの手から守るために調査を行っており、その様子がビデオメッセージに残っています。そして、彼女の傍らにはサーバルちゃんの姿がありました。
だけどいまカバンちゃんと一緒にいるサーバルちゃんは、ミライさんのことなど記憶にありません。
ミライさんの調査がどのような結末を迎えたのかはまだ語られていませんが、人がいなくなって久しいパークと、セルリアンが跳梁跋扈する様子を見れば明らかです。ミライさんも(旧)サーバルちゃんもセルリアンに取り込まれてしまったのでしょう。
幾星霜を経てサーバルちゃんは再びサーバルちゃんとして生まれ変わり、そしてカバンちゃんは、ミライさんが記憶を失った姿なのかもしれません。だったら、そう考えたならカバンちゃんが自分の身を犠牲にしたことも理解できるんですよね。
もし自分が記憶を失ってもサーバルちゃんが自分のことを覚えていてくれたのなら、また友だちになれる。
そう考えて犠牲になったとしたら、いや、そう考えて行動したとしか思えないストーリー展開なんですよ。いままさに、すべての伏線がいま一点に集まろうとしている。まるでよくできたミステリー小説を読んだときのような衝撃を現在進行形で味わっています。
カバンちゃんの正体は?
自分はここまで「カバンちゃんはミライさんの生まれ変わりだ」と思いながら見ていたのですが、ここまで書いてきてひとつ、大事なことを見落としていることに気が付きました。
フレンズは動物にサンドスターが当たることで生み出されるんですが、その他にも、思いのこもった物もフレンズ化すると語られています。架空の動物であるツチノコのフレンズや、作中で言及だけされていたジャイアントペンギン(古代に絶滅)は、模型か何かに命を吹き込まれたのでしょう。
だとすると、カバンちゃんの正体はミライさんではないかもしれません。
ひょっとすると人間ですらなく、ミライさんか誰かが残していったリュックサックだったりする可能性があるということに……?
カバンちゃんのトレードマークはカバンなのに、なぜ道具の一つもそこから取り出さない……?
船を失う決断を選んだのも、自分がニンゲンではなく、フレンズの一種だということに気がついたから……?
一挙放送は見逃せない!
いよいよ来週は最終回。結末を見るのが楽しみです。
ニコ生では明日の3月25日に振り返り一挙放送を行うそうです。
まだ見ていない人はこの機会に全部見てしまって感動の最終回に備えよう(^^)b
ガイドブック付きのBDも買おうかな……。
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