濁川温泉 ふれあいの里に行ってきました

大沼牛に舌鼓を打った後は、さらに北上して茅部郡森町にある温泉街、濁川温泉に向かいました。

地図上の山の中にぽっかりと、見事に水田が広がっている場所が濁川温泉です。

なんでこんな地形かというと、実はこの濁川温泉はカルデラのど真ん中にあるのです。四方を山に囲まれているため、隠れ里的な雰囲気が強いところが気に入っています。地熱発電所もあってダムもあるし、もし核戦争やらワールド・イズ・マイン的な危機が起こって人類が滅亡しそうなときでも、ここだったら生き延びることができるんじゃないかな、と勝手に思っています。でもまあ、足元に火口が潜んでいるところで暮らすというのもゾッとしないですけどね(^_^;)

ふれあいの里

primenet2010.biz

濁川温泉には何軒か日帰り温泉があるのですが、その中でも一番奥にある「ふれあいの里」にいつも行っています。ここはメジャーな温泉地じゃないので全体的に寂れ感があるんですが、その中でも「ふれあいの里」は、わりと新しめで施設も充実しています。

入口の赤い太鼓橋がトレードマーク

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橋は冬期間は通行不可。入浴料500円を払って、風呂に入る前に謎の内装に目を奪われます。

闇の中で不気味に光る雛人形

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なぜかシロクマ

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脱衣所には貴重品入れがないので手前にあるコインロッカーを使います。

ここの浴室は露天風呂を挟んで2つあって、1つ目の浴室には大きな浴槽とジェットバスとジャグジー、それとサウナと水風呂が完備されています。泉質は鉄分を多く含んでいて濃厚で油臭く、ひろめ荘とはまた違った秘湯感があります。こういう湯の花がデロデロに浮く温泉が好きだなあ。

露天風呂はかなり広く、大きな岩がゴロゴロと配置されています。腰掛けるにちょうどいい深さのところに平らな岩があって、ちょっと窮屈ですがその上に寝ることも可能です。お湯に体を横たえて目を閉じると、聞こえてくるのは屋根から雪が落ちる音ぐらいで、あとはお湯が流れるせせらぎが静かに響くのみ。目を開ければちらつく雪が風に舞い、もう何時間でも過ごしてしまいたくなるような気持ちになります。

といってもあまり長いこと外にいると湯冷めしてしまうので適当なところで切り上げて奥の浴室へ進みます。ここには五角形をしたちょっと熱めの桐の浴室と、ゆったりと広い岩風呂、そして体温よりも2度3度高いぐらいの”ぬる燗”な寝湯が備えられています。江戸っ子だったら50度でも100度でも熱湯にざぶんと入ってハイ終わり!なんでしょうが、こちとら天保年間から続く道産子なので、生ぬるいお湯にダラダラと浸かっている方が好みです。

温泉の楽しみはサウナだよね~、と思ったら

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そんな感じで一通りお湯を楽しんだので、いよいよ待望のサウナに入ったわけなんですが、ここで大きな失望を味わうことになりました。

まずサウナの温度が低いんですよね。もともと浴室自体も隙間風が入ってきて寒いんですが、それを差し引いたってイマイチ。だったら長く入っていればいいようなものですが、それを阻止せんとするのが

大音量で響き渡る演歌

狭いサウナ室がカラオケボックスになったかと思うぐらいの騒音で、全然リラックスできません。環境音楽的なインストルメンタルならまだ我慢できたかもしれないけれど、無視しようとしても日本語の歌詞は強制的に脳内に入り込んできて、不快といったらありゃしない。ほうほうの体で退散しました。

南茅部のひろめ荘でもテレビには悩まされましたが、あっちはまだ画面がある分、文脈が理解できるわけです。まあそれだって褒められたものではありませんが。

だけど演歌の場合は、完全に鳴らす意味がわからない。好きでもない音楽を強引に押し付けられる人間の気持ちを考えていないんだろうなあ。これはもう、

演歌が嫌いな人間はサウナに入るな!

という温泉側からの強い主張に思えるんですよね。もうほんと、音の暴力ですよ。

やれやれ、と思ってもう一度お湯に浸かって気持ちを落ち着けてから服を着てロビーに戻ると、入ったときには気が付きませんでしたがここでもゆるいJ-POPが流れています。

そういえばここには何か既視感があります。

統一感のない謎のインテリア。

壁中にベタベタと貼られた旅情を損なう張り紙。

脱衣所の外に置かれたコインロッカー。

そして、館内の至る所で無意味に垂れ流される有線放送。

これはもしや、と思って検索すると、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

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なんと、あの「パシフィック温泉ホテル清龍園」の姉妹館だったとは! なるほど納得です。

pikaring.hatenablog.com

あそこも温泉はいいのに、音楽のせいで台無しもいいところだったことを思い出しました。あの日は天気の良い爽やかな初夏だったのに、鳥のさえずりも風のささやきも水のせせらぎも、自然のすべてを否定するかのように生ぬるいJ-POPが露天風呂中に響き渡っているという極悪っぷり。ここはまだ露天風呂だけは静かだったから良いけれど、それだってもしかしたら、スピーカーが壊れていたり本当は流す気満々だったとしたら、辛い。

旅先に旅情を求めるのは間違っているのだろうか

でもこうやって田舎に行ったからといって、田舎に住んでいない人間が「田舎っぽくない!」と文句をいうのはお門違いなのかもしれませんね。ここは森町の市街地からバスで送迎するぐらいに人気の温泉だし、演歌が嫌いで来ない人なんていないのかもしれません(苦情があるのに続けていたらパラノイアだ)。地元の人が楽しんでいるところに割って入るのだから、謙虚な姿勢で訪れるべきだというのは分かるし、だからフロントに「音楽がうるせーよ!」とは言わずにこうやってチラシの裏たるブログに書いているわけですけど、だけどそういう「地元の人で充足すれば十分」という考え方は、余計なお世話かもしれないけれど衰退への道を進んでいるようにしか思えないんです。

例えば七飯町の大沼は、オーべルージュも素晴らしかったし地元の食材をブランド化して売り込んでいるし、未来につながっていく感じがします。あるものをただそこで消費するんじゃなくて、新たな価値を生み出して新たな顧客を開拓している。それに比べると濁川温泉は、ポテンシャルはあるのにそれをただ食いつぶしているような感が否めないんですよね~。でも大沼も一旦全て滅んだ後に復活したようなところがあるから、ここはまだまだ生き残るのかな。

そういえば、濁川温泉で滅びの美学を堪能したいのなら、新栄館というところがオススメらしいです。

www.food-travel.jp

う~ん、ディープな世界。旅情なおもて快適さをや、という自分にはちょっと合わないかもしれない(^_^;)